テレビのバラエティー番組をきっかけに、若い人でも俳句や短歌に興味を持つ方が増えてきました。
しかし、「いざ短歌を作ろう!」と思い立っても、どうやって作ったらいいのか悩んでしまいますよね。
でもじつは短歌というのは、基本の形とルールさえしっかり押さえることで、とても簡単に作ることができるんです。
今回は、『春らしい短歌の作り方』をご紹介します。
目次
そもそも短歌って何?基本的なルールを知ろう!
まずは短歌の基本知識を知っておきましょう。
短歌は、「五・七・五・七・七」の31音の言葉から作られる詩です。
【例】わがいほは(5) みやこのたつみ(7) しかぞすむ(5) よをうぢやまと(7) ひとはいふなり(7)
昔詠まれた短歌のことを「和歌」といい、皆さんがよく知っている「百人一首」も短歌です。
「五・七・五」で作られる俳句とも似ていますが、短歌では必ずしも季節を現す言葉である「季語」を入れる必要はありません。
短歌は俳句に比べて、より簡単に作ることができるので、初心者でも作りやすいという特徴があります。
また、リズムを崩すことで流れを作ったり、わざと字余りにして表現するなど、表現技法を用いることで高度な短歌を作ることもできます。
【字余りの例】ふくからに(5) あきのくさきの(7) しをるれば(5) むべやまかぜを(7) あらしといふらむ(※8)
春の短歌の作り方を紹介!
春といえば、生き物が活動を活発化し、花が咲き誇る美しい風景がたくさん見られる季節です。また春は行事ごとも多いので、短歌を作るにはぴったりな季節になります。
(1)まずは春の季語を選ぼう!
季語というのは、季節を表現する言葉のことをいいます。
前提として、短歌は季語を必ずしもいれる必要はありません。ですが、春の短歌を作る場合は、季語を入れた方が読み手側には伝わりやすくなります。
春の季語の選び方なのですが、作りたい短歌のテーマによっても異なってきますので、まずはテーマを明確にしておきましょう。
例えば、入学式をテーマにする場合は、入学式から連想できる春の季語を使います。
【例】テーマ「入学式」→ 入学・桜・春・風光る
季語の選び方のコツとしては、初心者は難しい季語を避けましょう。一見難しい季語というのは、かっこよく見えますが、作り手が季語の意味を十分に理解していないと、読み手側に伝わらない短歌となってしまいます。
そのため、はじめて短歌を作るという方は、背伸びせず、わかりやすい意味の季語を選ぶようにしてみてください。
お春の季語【一覧】
「春」「春の~」「~の春」「二月」「如月」「三月」「弥生」「四月」「雨月」「暖か」「うららか」「春めく」「朧月夜」「蜃気楼」「木の芽時」「春暁」「春の宵」「春日和」「春北斗」「花冷え」「八十八夜」「淡雪」「朧月」「陽炎」「霞」「風光る」「東風」「春北風」(はるならい)「春雨」「啓蟄」「春一番」「彼岸」「山笑う」「野焼き」「朝寝」「風車」「シャボン玉」「ブランコ」「春眠」「摘草」「風船」「春セーター」「猫の恋」「蝶」「蜂」「蜂の巣」「つばめ」「うぐいす」「ひばり」「雀の子」「鳥の巣」「猫の子」「青海苔」「若芽」「白魚」「はまぐり」「しじみ」「あさり」「伊予柑」「ネーブル」「桜餅」「クレソン」「春大根」「木の芽和」(きのめあえ)「若芽和」(わかめあえ)「せり」「アスパラガス」「種まく」「雛菊」「椿」「すみれ」「木蓮」「アネモネ」「スイートピー」「桜」「梅」「チューリップ」「ミモザ」「ヒヤシンス」「猫柳」「蒲公英」「土筆」「かすみ草」「菜の花」「バレンタイン」「ひな祭り」「ゴールデンウィーク」「建国記念日」「みどりの日」「入学」「遠足」「卒業」「春分の日」「花見」「夜桜」
(2)季語をもとに春の情景を浮かべてみよう
情景とは、景色や光景などのことをいいます。
季語を決めたら、そこから自分が詠みたい短歌の情景を思い浮かべていきましょう。
しかし、なかなか想像で情景を思い浮かべるのは、難しいですよね。そこで、情景を思い浮かべるのは苦手だなっという方は、実際にその情景を見るようにしてください!
一番良いのは、実際に自分の目で風景などを見に外へ出ることです。
情景というのは目に映るものだけでなく、匂いや音などからも感じられます。実際に体験することで、より多くの情報が得られるのです。
しかし、実際に見に行くのは大変!っという方も多くいると思います。
そんな方は、動画を見たり、写真を見ましょう。現代はスマホやパソコン等から、簡単にいろんな情報に触れられます。情景を頭の中できっちり作ることで、より短歌に入れる言葉は探しやすくなります。
(3)五・七・五・七・七の形にあてはめて詠む
テーマ・季語・情景が決められたら、さっそく「五・七・五・七・七」に言葉を当てはめていきましょう。
ここで大事になってくるのは「上手く詠もうとしない」ということです。
…というのも、最初から上手い短歌を作ろうと考えこんでしまうと、煮詰まってしまい、結局納得がいかず、短歌自体が作れなくなってしまう恐れがあるからです。
まずは思い描いた情景から、言葉を抜き出していきましょう
例
- 季語:桜
- 情景:お花見の風景
- 連想されるもの:人・屋台に並ぶ・花びら・青空・にぎやか・花・子供・笑顔
言葉を抜き出したら、ここから言葉を選んでいきます。
【例】青空(と)桜(の下に)(集う)人 にぎやかな(声) 子供(の)笑顔
クオリティは別として、1首作れたという成功体験といのは、自信に繋がります。
(4)詠んでみて違和感があれば、言葉を変えてみる
短歌ができたら、まずは落ち着いて自分で詠んで流れを確認してみましょう。
できれば詠むとき、声にだして音読した方が、より流れが掴みやすいでしょう。
詠んでみて自然だと思えれば良いですが、場合によっては違和感を感じることもあります。
違和感を感じた場合は、その部分の言葉を別の言葉に変えてみましょう!
例えば、上記の例で詠んだ「青空(と)桜(の下に)(集う)人・にぎやかな(声)・子供(の)笑顔」という短歌ですが、「にぎやか・笑顔」というのが、言葉の意味が似ているので、少々違和感を感じる短歌になってしまっています。
にぎやかか笑顔どちらか1つあれば「楽しい」という雰囲気が伝わるので、筆者は「笑顔」という部分を変えます。
この短歌は、家族連れの花見の風景を詠んだものになるので、「家族」ということがわかるようにしてみます。
また家族というのがわかれば、集っているのも人だとわかりますよね。短歌は、決まった音の数で表現しなければいけないので、意味が重ならないような言葉に変えていくのが、コツになります。
青空(と)桜(の下に)(集う)人・にぎやかな(声)・子供(の)笑顔
↓(※修正後)
青空と 桜の下はにぎやかで 集うは家族 静かな公園
(5)表現技法(切れ字や比喩)を活用してみよう
短歌を作ることに慣れてきたら、表現技法を活用してみましょう!
表現技法というのは、言葉を強調させたり、リズムを作ったりすると特別な文章表現のことをいいます。
表現技法:切れ字
切れ字は、短歌等の文章で最後に終止する言葉のことをいいます。代表的なものでいえば「~かな・~や・~けり」等が有名ですよね。
元々は連歌という遊びが元になっています。連歌は「五・七・五」の句に、別の人が「七・七」を付け加え、それを百句になるまで繰り返す遊びです。なので、終止の音が流れを切れるような表現になっているんですね。
短歌の場合は、言葉を一旦置き、余韻を作る役割をしてくれます。
【例】いつしかに 春の名残と なりにけり 昆布干場の たんぽぽの花
表現技法:比喩
比喩というのは、イメージしたものを表現する技法です。比喩表現を使うことで、より詩的な短歌にすることができます!
【例】あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む
参考になる!!春の現代有名短歌を紹介!
実際短歌を作る上で、初心者にもわかりやすい有名な春の短歌をご紹介します。
【NO.1】上田三四二
『 花冷えの 夜に取りいだす ヒーターは 埃のにほひ たてて点りぬ 』
【NO.2】土田耕平
『 春の夜の 月はすがしく 照りにけり 木の芽ひらきて やや影に立つ 』
【NO.3】宮沢賢治
『 ひるもなほ 星みるひとの 眼にも似る さびしきつかれ 早春のたび 』
【NO.4】与謝野晶子
『 若き身の くたびれ心 それに似る うす紅いろの 桜草かな 』
【NO.5】樋口一葉
『 あるじなき 垣ねまもりて 故郷の 庭に咲きたる 花菫かな 』
さいごに
今回は、春の短歌の作り方&参考短歌をご紹介しました。
春といえば、心機一転、いろんなことにチャレンジする方も多いと思います。
短歌は日常を表現するのにも向いていますので、思いついた短歌を日々の日記帳に書き綴ってみるのも良いでしょう。