短歌といえば、日本最古の和歌集「万葉集」や百人一首などが有名です。
固い表現や難しい言葉を用いる歌が多いため、短歌を作るのは難しいと身構えてしまう方も多いと思います。
しかし、実はポイントを踏まえると、短歌は案外簡単に作ることができます。
今回は、冬らしい短歌の作り方についてご紹介していきます。
目次
そもそも短歌って何?基本的なルールを知ろう!
短歌とは和歌のひとつで、五・七・五・七・七の31文字で表現する詩になります。
【例】明けて(5) 気づく休みの(7) 短さを(5) 嘆く間に(7) 終わる休みぞ(7)
そんな短歌を詠むときのルールは、「文字数を守ること」だけです。
ただ、気を付けていただきたいのが、「拗音」の数え方です。
(※拗音・・・「きゃく(客)」や「きょう(今日)」などの『ゃ』『ゅ』『ょ』で表記される音のこと)
「拗音」の数え方のルール
- 小さい『つ』(拗音)や、伸ばす『-』は1文字として数える。例:キップ(3文字)、ノート(3文字)
- 小さい『や・ゆ・よ』は、前の言葉に付けて1文字とする。例:ジェット機(4文字)
また、どうしても31文字でおさまらないとき、五・七・五・七・七の最後が8文字になっても良いとされています。これを『字余り』と呼びます。
冬の短歌の作り方を紹介!
(1)まずは冬の季語を選ぼう
季語とは、文字通り「季節をあらわす言葉」のこと。短歌は俳句とは異となり、季語がなくても構いません。
しかし、季語を入れることで、季節感をより感じやすい短歌に仕上げることができます。
また、テーマが絞りやすいので、はじめのうちは季語を入れることをおすすめします。
今回は冬の短歌を作るので、冬の季語の一部を紹介します。
ちなみに、季語は旧暦で決められたものです。現代では、11月はじめころから1月半ばまでのことです。
冬の季語
- 【時候】冬の朝、短日、凍る、鐘凍る、冬、寒の内、春近し、寒波、師走、冬至、大晦日
- 【天文】霜、北風、冬の虹、冬の空、雪起こし、虎落笛、ダイヤモンドダスト、霧氷、初氷
- 【地理】山眠る、冬の山、狐火、冬景色、寒の水、波の花、初景色、氷柱
- 【生活】炬燵、セーター、襟巻、外套、ジャケット、息白し、重ね着、着ぶくれ、冬服、おでん、毛糸編む、生姜湯、手袋、毛布、スキー、スケート、雪上車、
- 【行事】七五三、酉の市、クリスマス、鎮魂祭、年賀、門松
- 【動物】牡蠣、金目鯛、甘鯛、金糸魚、冬の鳥、水鳥、鳶、狐、狼、兎、海豚、白鳥、伊勢海老、
- 【植物】枯れ木、人参、白菜、蜜柑、ブロッコリ、冬菫、冬椿、山茶花、シクラメン、ポインセチア
(2)季語をもとに冬の情景を浮かべてみよう
季語を決めたら、冬の情景を思い浮かべてみましょう。
冬の情景は記憶をたどってもいいですし、写真や動画を見るのもいいでしょう。
例
- 食べた料理がおいしかった
- 友だちといっしょで楽しかった
- すごく寒かった
- 天気が悪かった
(3)五・七・五・七・七の形にあてはめて読む
次は、情景を思い浮かべて書き出したメモの言葉を、五・七・五・七・七になるようにつなげていきましょう。
ポイントとして31文字で表現するために、思いついた言葉はすべて書き出してみましょう。
例
- 雪景色に感動。おいしそうな匂いがして、景色はそっちのけで食べ物に。
- 好きな人のことを考えていた。何もないところでつまずいた。
- 雪の日。飼っていた犬。元気に走る姿。
(4)読んでみて違和感があれば、言葉を変えてみる
五・七・五・七・七の形が整ったら、音読してみましょう。
声に出して読むと、選んだ言葉が合っているか分かります。違和感があるときは、言葉を変えてみましょう。
「言葉を変えたいけど思い浮かばない…」という場合は、辞書で言葉を探してみましょう。類語辞典で同じ意味を持つ言葉を探してみると、ピッタリの言葉が見つかる可能性があります。
例えば、雪という言葉は、白雪(しらゆき・はくせつ)や、積もった雪であれば深雪(みゆき・しんせつ)という表現もできます。
(5)表現技法(切れ字や比喩)を活用してみよう
言葉をあてはめることができるようになり、もっと高度な短歌を詠みたい場合は表現技法を使ってみましょう。
短歌の代表的な表現技法には、切れ字や比喩などがあります。
- 切れ字
強調したい言葉のあとにつける「や」「かな」「けり」などを切れ字といいます。切れ字とは、文の最後につける句点「。」と考えます。一度区切ることで、言葉を目立たせる方法です。
【例】のど赤き 玄鳥ふたつ屋梁にゐて 足乳根の母は 死にたまうなり
(訳:喉の赤い燕が梁に二羽とまっており、母は亡くなってしまった)
- 比喩
「~のように」と他のものに例えるのが比喩です。そのまま○○のようにと表現する直喩、○○のようにと言わずに例える暗喩、人ではないものを人に例える擬人法があります。
【例】列車にて 遠く見ている 向日葵は 少年のふる 帽子のごとし
(訳:列車の窓から遠くに見えている向日葵は、まるで少年がふる帽子のようだ)
参考になる!!冬の現代有名短歌を紹介!
俵万智さんの作品
白菜が 赤帯しめて 店先に うっふんうっふん 肩を並べる
1987年に刊行された「サラダ記念日」は、俵万智さんの日常の思いを自由に詠んだ短歌集。短歌を身近なものに感じました。
そんな俵万智さんの冬の短歌は、冬の店先に並んだ、白菜をテーマにしています。
俵万智さんの冬の短歌には他にも・・・
「寒いね」と 話しかければ 「寒いね」と 応える人の いるあたたかさ
穂村弘さんの作品
ハロー夜。 ハロー静かな 霜柱。 ハローカップヌードルの 海老たち
外には霜柱ができるくらい寒い夜に、食べるラーメンを詠んでいます。この短歌を読んで、どのように感じましたか。初めて読んだとき、衝撃を受けました。
他にも以下のような短歌もあります。
目覚めたら 息まっしろで、 これはもう、 ほんかくてきよ、 ほんかくてき
佐佐木幸綱さんの作品
はじめての 雪に高ぶる わが子犬 跳ねつつ白き 木霊を待つも
笹井宏之さんの作品
灰色の 手袋を買う この国の いたくぶあつき 降誕祭に
飯田有子さんの作品
雪まみれの 頭をふって きみはもう 絶対泣かない 機械となりぬ
さいごに
今回は、冬の短歌の作り方を短歌のルールと合わせてご紹介しました。
【短歌のルール】
- 文字数は五・七・五・七・七の31音
- 「拗音」の数え方には注意する
【短歌の作り方】
- 冬の季語を選ぶ
- 選んだ季語をもとに情景を思い浮かべる
- 五・七・五・七・七にあてはめる
- 音読して、違和感があれば他の言葉をあてはめる
- 切れ字や比喩も使ってみよう