【近代短歌 おすすめ20選】知っておきたい名作!!有名な短歌集を紹介

 

皆さんは近代短歌というとどの歌人を思い浮かべますか。

 

一般に近代と呼ばれる時代に作品を残した歌人たちの中には、与謝野晶子や正岡子規など有名な人も多くいます。それらの名前に国語の授業などで触れた方も多いかもしれませんね。

 

これらの歌人は激動の時代を生き抜く際にどのようなことを感じ、どんなことを歌ったのでしょうか。

 

今回は、近代短歌の中からメジャーな有名短歌を20首、ご紹介します。

 

短歌職人
ぜひ短歌作りの参考にしてみてください!

 

知っておきたい!近代有名短歌【前半10選】

 

【NO.1】正岡子規

『 いちはつの 花咲きいでて 我目(わがめ)には 今年ばかりの 春行かんとす 』

【現代語訳】いちはつの花が咲きだしたが、私の眼には今年限りの春が過ぎようとしている。

短歌職人
正岡子規のあまりにも有名な歌ですね。子規の歌には病人ならではの哀愁や儚さが感じられます。健康な人たちからすれば春が過ぎることなど普通のことですが、いつ命が尽きるかもわからない彼からすればこの春も特別なものなのでしょう。

 

【NO.2】斎藤茂吉

『 のど赤き 玄鳥(つばくらめ)ふたつ 屋梁(はり)にゐて 足乳(たらち)ねの母は 死にたまふなり 』

【現代語訳】のどが赤い燕が我が家の屋梁に2羽いて、その中でまさに今、母は死に向かっているのだ。

短歌職人
まさに今命を謳歌するものと尽きようとしている者が交差した歌ですね。つばめの喉の赤さが母の死という場面とは対照的に映え、作者の眼に焼き付いたのではないかと思います。

 

【NO.3】与謝野晶子

『 その子二十 櫛にながるる 黒髪の おごりの春の うつくしきかな 』

【現代語訳】その娘は二十歳で、櫛で梳くと滑らかに流れる黒髪を持っている。誇りに満ちた青春は美しい。

短歌職人
若々しさというその時限りの美しさが刹那的に映る歌です。人はいつか必ず老いますが、今老いている人がこの世に存在するからこそこの歌のような若さを美しく思えるのだなと思います。

 

【NO.4】北原白秋

『 病める児は ハモニカを吹き 夜に入りぬ もろこし畑(ばた)の 黄なる月の出 』

【現代語訳】病気の子供がハーモニカを吹いているうちに、夜になってしまった。もろこしの畑に黄色い月が照っている。

短歌職人
病的に美しいこの歌ですが、病気の子どもは行動が制限されてしまいますから彼にとってハーモニカを吹くことは唯一の娯楽だったのかもしれません。ちなみに、この歌に登場するもろこしとはトウモロコシではなくトウキビのことだそうです。

 

【NO.5】与謝野晶子

『 なにとなく 君に待たるる ここちして 出でし花野の 夕月夜かな 』

【現代語訳】なんとなくあなたが待っているように感じて花野に出たら、夜空に月が浮かんでいた。

短歌職人
恋をする女性の気持ちが歌われた幻想的な歌です。花野に浮かぶまだ明るい時間の淡い月とそこに佇む女性、美しい情景が目に浮かぶようです。

 

【NO.6】石川啄木

『 不来方(こずかた)の お城の草に 寝ころびて 空に吸はれし 十五の心 』

【現代語訳】不来方城の草に寝転んで空を眺めていると、空に吸いこまれそうになった十五歳の心よ。

短歌職人

生い茂った草の匂いまで感じられそうな少年のやるせなさが印象的な歌です。

15歳という多感な時代を象徴するようなさわやかな鬱屈が如実に感じられます。

 

【NO.7】斎藤茂吉

『 木立より 雪解のしづく 落つるおと 聞きつつわれは あゆみをとどむ 』

【現代語訳】木立から雪解けのしずくが落ちる音が聞こえたので、私は歩みを止めて耳を傾けた。

短歌職人
雪解けの水滴がたてる音に思わず立ち止まって聴きいるなんて皆が忙しい現代ではあまりない光景です。心の余裕と四季を慈しみ愛する心が美しい歌です。

 

【NO.8】伊藤左千夫

『 今朝のあさの 露(つゆ)ひやびやと 秋草や 総()べて幽(かそ)けき 寂滅(ほろび)の光 』

【現代語訳】今朝の朝露にひやびやと濡れた秋草よ、そのすべてがかすかに滅びの光を纏っている。

短歌職人
綺麗だ、美しいと感じたもの対して心の隅でなんとなく寂しかったり退廃の兆しを感じることってありますよね。朝の肌寒い空気の中で揺らめく秋草に裏寂しさを感じたのかもしれません。

 

【NO.9】岡本かの子

『 桜ばな いのち一ぱいに 咲くからに 生命(いのち)をかけて わが眺めたり 』

【現代語訳】桜の花が命の限りに咲いている。私もそれを心で感じて眺めよう。

短歌職人
咲いてもすぐに散ってしまう桜ですが、咲いている間は溌溂と生命あふれる姿を見せてくれます。そんな桜の約1週間限りの儚くもう力強い勇姿を心して目に焼き付けようという作者の気持ちが伝わってきます。

 

【NO.10】長塚節

『 白銀の 鍼打つごとき きりぎりす 幾夜はへなば 涼しかるらむ 』

【現代語訳】鍼医者が白銀の鍼を刺すように、きりぎりすが毎晩涼しげな声で鳴いている。

短歌職人
きりぎりすはかすかに鋭く心に染み入るような鳴き声をしています。作者はそんなきりぎりすの声を白銀の鍼を刺されたように感じたようです。

 

知っておきたい!近代有名短歌【後半10選】

 

【NO.11】北原白秋

『 深々と 人間笑ふ 声すなり 谷一面の 白百合の花 』

【現代語訳】谷一面に咲いている白百合の花たちから、深々と人間を笑う声がするようだ。

短歌職人
美しく無垢な百合の花たちに人間の愚かさや醜さを笑われているように感じるという歌です。白百合たちが風に揺れてさわさわと音を立てる様子ですら嘲笑されていると感じてしまうほどの作者の精神状態が伝わってきます。

 

【NO.12】正岡子規

『 佐保神の 別れ悲しも 来ん春に ふたたび会はん われならなくに 』

【現代語訳】今年の春と別れるのはつらいことだ。来年の春を迎えられるか分からない身だから。

短歌職人
佐保神とは、佐保姫とも呼ばれる春を司る女神です。病身の子規はもう今年の春を終えてしまえば二度と佐保神さまにお目にかかることはないかもしれないと感じ、春との別れを惜しんだのですね。

 

【NO.13】落合直文

『 霜やけの ちひさき手して 蜜柑(みかん)むく わが子しのばゆ 風のさむきに 』

【現代語訳】冬の木枯らしに吹かれながら霜やけのある小さな手で蜜柑をむく我が子の身を案じる。

短歌職人
作者が糖尿病の療養先から自分の子供を思った気持ちを歌ったものです。霜やけのある小さな手で蜜柑をむく様子は幼気に感じられて微笑ましいですね。

 

【NO.14】島木赤彦

『 みづうみの 氷は解けて なお寒し 三日月の影 波にうつろふ 』

【現代語訳】湖に張った氷が解けてもまだ寒い。三日月の影が波に揺れている。

短歌職人
湖に張っていた氷は綺麗になくなって水がぬるんでいるのにまだ寒い、視覚による春の訪れを感じられます。春はまだ先だと三日月が教えてくれているようです。

 

【NO.15】与謝野晶子

『 清水へ 祇園をよぎる 桜月夜 こよひ逢ふ人 みなうつくしき 』

【現代語訳】清水へ行こうとして祇園を通るとき、桜が月に照らされる今夜に見る人たちは皆美しい。

短歌職人
雑踏や群衆はその時の自分の精神状態によって見え方が変わりますよね。清水に行こうと歩いている作者の心境は清らかに澄んでいたのでしょう。

 

【NO.16】斎藤茂吉

『 草づたふ 朝の蛍よ みじかかる われのいのちを 死なしむなゆめ 』

【現代語訳】草の上を這う朝の蛍よ、短い己の命をけして死なせるな。

短歌職人
蛍は成虫になってから5~7日しか生きられないそうです。夜には活発に飛び回っていた蛍が朝になって見ると草の上を這っている、そんな様子に死んでくれるなという祈りがこもった歌です。

 

【NO.17】前田夕暮

『 向日葵(ひまわり)は 金の油を  身にあびて ゆらりと高し 日のちひささよ 』

【現代語訳】向日葵が金の油を身に浴びて背が高く輝いている。その先にあるお日様が小さく見えてしまうほどに。

短歌職人
夏に大輪の花を咲かせる向日葵にはそこはかとないパワーを感じます。金の油という表現が個性的で面白い歌です。そんな向日葵を見たら太陽がかすんでしまうのも良くわかります。

 

【NO.18】若山牧水

『 吾木香(われもこう) すすきかるかや 秋くさの さびしききはみ 君におくらむ 』

【現代語訳】吾木香、薄、刈萱など秋草の寂しさの極まったものを君に送りましょう。

短歌職人
牧水が恋人に贈ったとされる歌です。女性に贈るにしてはあまりにも地味な花のように思えますが、そこに牧水のセンスが光っているような気がします。「さびしき」とは「詫び寂び」のような意味合いもあるのかもしれませんね。

 

【NO.19】木下利玄

『 牡丹花は 咲き定まりて 静かなり 花の占めたる 位置のたしかさ 』

【現代語訳】牡丹の花は、静かに咲き定まっている。その花の占める位置の確かさよ。

短歌職人
牡丹は、一輪でも存在感のある花です。一輪の牡丹が静かにそこに鎮座していることに“私はここにいるのが正しい”とでも言っているかのような印象があります。

 

【NO.20】岡本かの子

『 鶏頭は あまりに赤しよ われ狂ふ きざしにもあるか あまりに赤しよ 』

【現代語訳】鶏頭の花はあまりにも赤く、見ていると私の心が狂いそうになる。

短歌職人
鶏頭の赤さを2度繰り返すことで、鶏頭の花が蠱惑的に感じる歌です。岡本かの子は夫の放蕩に苦しみ精神を病んだことで有名です。

 

以上、おすすめ近代短歌でした!

 

 

近代の短歌には、四季を歌ったものや命について歌ったものが多いと感じました。

 

命の尊さがテーマとなった歌が多いのは、明治時代から昭和時代にわたって起こった戦争が時代背景にあるからかもしれないですね。

 

また、昔の短歌と違うのは、短歌に社会的な側面が加わったことです。

 

時代の進歩を感じますね。近代に起きたことを知ると、短歌に対する理解も深まりそうです。

 

短歌職人
是非、あなたも短歌作りにチャレンジしてみてください!