【ふるさとの短歌 20選】懐かしさや温もりを感じる!!歌人が詠んだ有名短歌&中学生向け一般短歌を紹介

 

「ふるさと」という言葉は、時として人に懐かしさや温もりを感じさせます。

 

短歌にもふるさとについて詠まれたものは多くあり、離れた故郷への恋しさや、生まれた土地を自慢に思う気持ちなどが歌われています。

 

 

今回は、「ふるさと」について詠んだ短歌をご紹介します。

 

短歌職人
有名なものから一般の方が作ったものまで幅広く紹介していきます。ぜひ最後まで読んでください!

 

故郷(ふるさと)について詠んだ有名短歌【10選】

 

【NO.1】大伴旅人

『 浅茅原 つばらつばらに 物思へば 古りにし里し 思ほゆるかも 』

意味:物思いにふけっていると、つくづく故郷の景色である浅茅(あさじ)の原が思い出されて懐かしいよ。

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「つばらつばら」は、つくづく、しみじみといった意味です。この歌を詠んだ頃、大伴旅人は故郷から遠く離れて暮らしていました。浅茅が一面に生える光景は旅人にとって故郷を象徴するものなのでしょう。故郷へ帰りたいという気持ちを込めた歌です。

 

【NO.2】能因法師

『 思ふ人 ありとなけれど 故郷は しかすがにこそ 恋しかりけれ 』

意味:想い人がいるというわけではないけれど、やはり故郷は恋しいものだよ。

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能因法師が故郷である都を離れようとしている際の歌と言われています。そこに特別な人がいるからというわけではない、故郷そのものに感じる恋しさや懐かしさが表現されていて、旅立ちへのためらいも感じさせます。

 

【NO.3】正岡子規

『 くれなゐの 梅ちるなべに 故郷に つくしつみにし 春し思ほゆ 』

意味:赤い梅の花が散ると、故郷でつくしを摘んで過ごした春を思い出すよ。

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正岡子規の故郷愛媛県では、つくしを佃煮やおひたしにしてよく食べます。子規もつくしを好み、つくしを摘むのも好きだったようです。梅の花が散る季節になると、子供の頃につくしを摘んだ楽しい思い出がよみがえってきていたのでしょう。

 

【NO.4】石川啄木

『 ふるさとの 山にむかいて 言うことなし ふるさとの山は ありがたきかな 』

意味:故郷の山に向かい合えば言葉は何もない。故郷の山はありがたいものだ。

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石川啄木が故郷の岩手にある岩手山を思って詠んだ歌です。啄木にとって故郷といえば何よりも岩手山が思い浮かぶのかもしれません。「ふるさとは良いものだ、ただそれに尽きる、言葉はいらない」というしみじみとした気持ちを詠んでいます。

 

【NO.5】寺山修司

『 ふるさとの 訛りなくせし 友といて モカ珈琲は かくまで苦し 』

意味:故郷の訛りがなくなった友と話している自分のモカ珈琲はこうまで苦い。

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友人は都会暮らしで訛りが抜けて、標準語を話すようになっていたのでしょう。そして自分は都会的な「モカ珈琲」を飲んでいます。しかしそのコーヒーは美味しくはなく苦いのです。田舎を出て都会に馴染もうとする気持ちと、一方で故郷に距離を置いている寂しさ、実は故郷が恋しいという気持ちを感じる歌です。

 

【NO.6】与謝野晶子

『 ふるさとの 潮の遠音の わが胸に ひびくをおぼゆ 初夏の雲 』

意味:故郷で聞いていた潮の遠鳴りが私の胸で響いているのだ、初夏の空に浮かぶ雲を見ていると。

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与謝野晶子は大阪湾に近い土地で生まれました。波の音を聞いて育ち、その音は故郷を離れても忘れられず、時折心の中に響いたのでしょう。「聞こえる」ではなく「ひびく」としたところに、潮の音がはっきりと聞こえることや、その音の存在の大きさが表れています。

 

【NO.7】斎藤茂吉

『 万国の 人来り見よ 雲はるる 蔵王の山の その全けきを 』

意味:世界の人よ山形に来て見ておくれ、雲が晴れた蔵王山のその全景を。

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斎藤茂吉が故郷の蔵王山を思って詠んだ歌です。蔵王山は雄大な自然風景が楽しめ、晴れた日には神秘的なエメラルド色の火口湖も見られます。茂吉の蔵王山を世界中に見せたい気持ちや、その素晴らしさには皆感動するぞ、というような誇らしさも感じます。

 

【NO.8】島木赤彦

『 信濃路に 帰り来たりて うれしけれ 黄に透りたる 漬菜の色は 』

意味:信州に帰って来て本当に嬉しい。黄色に澄んだ漬菜の色よ。

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上京していた島木赤彦が故郷の長野県に帰った際の歌です。長野県の家庭では野沢菜の漬物が一般的なので「漬菜」は野沢菜かもしれません。故郷の味である漬物が食卓にあるのを見て、赤彦は「これこれ!」と嬉しく思い、帰郷したのだとしみじみ感じたのでしょう。

 

【NO.9】伊藤左千夫

『 九十九里の 波の遠鳴り 日のひかり 青葉の村を 一人来にけり 』

意味:九十九里浜の波の遠鳴りを聞きながら、日に照らされて青葉が光る村に一人で帰ってきたのだ。

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故郷を離れていた伊藤佐千夫が晩年に帰郷した際の歌です。第四句までの帰路の様子の描写が鮮やかで、遠くから響いてくる波の音や、青々と茂る葉の輝きが読み手にも伝わってきます。失意の帰郷を詠んだもののため「一人来にけり」には寂しい余韻がありますが、懐かしい村に帰って来て左千夫はやはり嬉しかったのではないでしょうか。

 

【NO.10】俵万智

『 なんでもない会話なんでもない笑顔なんでもないからふるさとが好き 』

意味:何でもない会話、何でもない笑顔、何でもないからふるさとが好。

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見慣れた景色の中、自分の親しんだ話し方でいつもの会話をし、気心の知れた人と笑い合う。そこから出て行った時に、懐かしいと感じるのはそういうことではないでしょうか。ふるさとが好きだという気持ちをとても分かりやすくシンプルに詠んだものですが、結局これに尽きるのだと思わせる歌です。

 

故郷(ふるさと)について詠んだ一般短歌【10選】

 

【NO.1】『 たおやかに 流るる水面 矢部川よ あつき心の 父母なれば 』

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「矢部川」は作者の故郷の川なのでしょう。幼い頃から親しんだ川なのでしょうか。流れる川の流れに父母を重ねています。「あつき心」は「熱き心」とも「篤き心」とも読みとれます。

 

【NO.2】『 雨ばかり ざあざあと降る ふるさとで 生まれ育った わたしでいいの 』

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「ざあざあと」は大雨を思わせます。作者の「ふるさと」は、まとまった量の雨が多く降る所なのでしょう。そこで育った自分を肯定しているところに、そんなふるさとも悪くはないよ、好きだよという気持ちを感じさせます。

 

【NO.3】『 夏の夜 葉音に都会の 風を聴き 想うは川の木 観るは故郷 』

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静かな夏の夜に一人で故郷を思い出しているのでしょうか。夜風に揺れる葉の音に、故郷の川辺で聞いた葉の音を重ねているのでしょう。故郷が恋しいという気持ちを強く感じさせ、寂しさが伝わります。

 

【NO.4】『 何千と 通うたはずの 川沿いの 水の香りに ふるさとを知る 』

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小さな頃から「何千と」行き来した道に「ふるさとを知った」とは、それまで何とも思っていなかったのに、ここにふるさとがあると感じたということでしょう。帰郷した心境を詠んだものでしょうか。ふるさととは、そこを出て行ってまた帰ってきた時にこそ強く感じるものかもしれません。

 

【NO.5】『 故郷の 追憶の中 懐かしい あの人の影 恋しく巡る 』

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離れた故郷を思い出すと、同時に好きだった「あの人」のことも一緒に思い出されるのでしょう。「恋しく巡る」には懐かしい気持ちだけでなく、今もその人を想っている切なさも感じられます。「あの人」は初恋の相手だったのでしょうか。

 

 

【NO.6】『 風走る わがふるさとの 麦秋に 水のおもての ような漣 』

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「漣」は「さざなみ」と読みます。麦畑に風が吹いた光景を水面に立つさざ波に例えた歌で、美しい言葉で麦畑の素晴らしさを表現しています。作者は麦畑が広がる景色を見るのがとても好きなのでしょう。そんな景色のあるふるさとを誇りに思う気持ちも伝わってきます。

 

【NO.7】『 ベランダで ブチ野良猫が エサねだる 僕のいた街 君のいた街 』

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今は住んでいない街での、何でもない日常の出来事を思い出しているのでしょう。作者がは「君」と一緒に猫を可愛がっていたのかもしれません。第四句と第五句の反復が懐かしむ気持ちを強調し、同時に寂しい印象となっています。

 

【NO.8】『 嫌われる セイタカアワダチソウでさえ 私を癒す 田舎の景色 』

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セイタカアワダチソウは繁殖力が強く厄介な雑草として知られています。そんな雑草が生えた景色でも、故郷の風景として癒されているのでしょう。作者は普段は雑草もあまり見ない都会に住んでいるのかもしれません。第五句の体言止めに田舎は良いものだなあという感嘆と、作者の開放的な気分も感じられます。

 

【NO.9】『 旅に出て 恩義を受けた 場所全て かけがえのない 僕のふるさと… 』

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「心のふるさと」などと言うように、生まれた土地以外にもふるさとを感じることがあります。作者は旅先のさまざまな土地で優しい人々と出会い、その一つ一つの土地が愛おしく、大切なふるさとなのだと感じているのでしょう。そう思わせるような素晴らしい出会いをいくつも体験したのですね。

 

【NO.10】『 どこからも 空が大きい ふるさとで 胸の時計は ゆっくり進む 』

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とても開放感があって気持ちの良い歌です。大きく広がる青空を想像させて、読み手も時がゆっくりと過ぎていくようなのどかな気分に浸ることができます。作者がふるさとを愛している気持ちが伝わります。

 

以上、故郷(ふるさと)のおすすめ短歌でした!

 

 

短歌職人
今回はふるさとの短歌を紹介してきました。
皆さんにとって「ふるさと」とはどのようなものでしょうか。それを見て育った景色や、親しい人のことを思い浮かべる人もいるでしょう。
また、その土地ならではのお祭りや食べ物にふるさとを感じることもあるかもしれません。
皆さんもぜひ、自分にとってのふるさとを思い浮かべながら短歌を作ってみましょう。