【卒業をテーマにした有名短歌集 20選】知っておきたい!!おすすめ有名短歌作品を紹介!

 

卒業をテーマにした短歌をご存知でしょうか?

 

卒業式は学校生活や人生において別れと次への出発になる大事なイベントですね。

 

今回はそんな卒業をテーマにしたおすすめの有名短歌を20つご紹介いたします。

 

短歌職人
有名な短歌を参考にしながら、卒業短歌作りにチャレンジしてみてください!

 

卒業をテーマにした有名短歌集【生徒編10選】

 

自身の卒業・先輩後輩の卒業・子どもの卒業・教え子の卒業など視点は様々ですが、ここでは生徒目線の有名短歌をご紹介します。

 

【No.1】栗木京子

『 退屈を かくも素直に 愛しゐし 日々は還らず さよなら京都 』

意味:退屈な時間をこんなにも素直に愛しいと思いました。あの日々は戻ってこない。さよなら京都よ

短歌職人
作者が京都大学の卒業時に詠ったのですが、大学時代の退屈さを嘆くのではなく愛しいものと呼んでいるのが印象的です。返、帰、ではなく「還」という漢字も意味深く、「さよなら京都」という結句にも土地を去りゆく潔さを感じます。

 

【No.2】穂村弘

『 蛇っぽい 模様の筒に 入れられた 卒業証書は 桜の匂い 』

意味:蛇の模様のように見える筒に入れられた卒業証書を取り出すと桜の匂いがしたよ

短歌職人
あれはヘビではなくワニ皮なのですが、あえて「蛇っぽい模様」とぼやかして詠んでいるのところに親しみがわきます。一目で卒業証書入れだとわかる目印にもなる有名な柄と桜の組み合わせは卒業シーンの最強コンビですね。

 

【No.3】高野公彦

『 大学の 池に棲みふる 真鯉ひとつ しづけきを見て 我が卒業す 』

意味:大学の池にずっと棲んでいる真鯉の一匹が静かにそこにいるのをみながら私は卒業していく

短歌職人
卒業という感動や溢れる思いがこみ上げる場面で、あえていつも通りの池にずっと「棲みふ」ってきた真鯉が「しづけき」姿を詠むというところに作者の内面の落ち着きを感じます。

 

【No.4】小谷稔

『 卒業式 過ぎし暇の さびしきに 時計塔白く 塗りかへられぬ 』

意味:卒業式の後しばらく時間が経ってから母校へ行ってみると、時計塔が白く塗り替えらえていたのが寂しいよ

短歌職人
見慣れた古い時計塔が春休みの間に塗り替えられていたのでしょう。自分の記憶の中と違う色に変わってしまったことに「さびしき」思いを抱いたのですね。

 

【No.5】三ケ島葭子

『 いつまでも もの学びたきに 卒業の 日は近づきぬ 三月きたりて 』

意味:いつまでも学びたい思いなのに3月になって卒業の日が近づいています。

短歌職人
学ぶことが大好きだった作者は「学び」についての短歌がいくつもあります。卒業の日が来て欲しくないという理由が友人たちとの別れを惜しむものではなく、もっとここで学んでいたいから!という歌は珍しいかもしれません。

 

【No.6】伊舎堂仁

『 海だけの ページが卒業アルバムにあって それからとじていません 』

意味:海だけが写っているページが卒業アルバムに載っていたのを見つけてそのまま閉じていません

短歌職人
自由律で、アルバムを閉じていない理由がわかりやすく伝わってきます。その海に深い思い出があるのか、ページを開いてそのまま飾っているのでしょう。

 

【No.7】小池光

『 卒業式の 答辞にかならず 逢ふことば 「走馬灯のように」 定形ぞよき 』

意味:卒業式の答辞で必ず使われる「走馬灯のように」という言葉が定型にぴったりだ

短歌職人
これは卒業式そのものではなく、使われる言葉が「定型」になっていると歌詠みの方に思いを馳せているのが面白いですね。そんな言葉使っていたかな?と答辞のシーンを思い浮かべる効果も大きくなっています。

 

【No.8】永田紅

『 卒業を 見送り続け ついに我がこととなりゆく 陽は三月へ 』

意味:みんなの卒業を見送り続けたが、ついにその卒業が自分のこととなる三月の陽射しになったよ

短歌職人
長いこと大学の研究所におられた方で先輩や同級生、後輩たちの卒業を見送ってきたいろんな気持ちが「ついに我がこと」の卒業とともに噛み締めている様子が伺えます。

 

【No.9】永田紅

『 卒業は 遠ざかること プレパラートに 頭を寄せ合える この夜からも 』

意味:卒業をしたらプレパラートに頭を寄せ合って過ごしているこのような夜からも遠ざかることになるなあ

短歌職人
研究者らしい思いですね。夜通しプレパラートを真ん中に仲間と頭を寄せ合っている光景が目に浮かびます。その時間がどれほど貴重かを卒業前にしみじみ感じているのでしょう。

 

【No.10】米川千嘉子

『 卒業式 いたづらほどの  髭生やし それぞれの人生のまへに並ぶも 』

意味:卒業式でほんの少しの髭を生やしてそれぞれの人生の次の始まりに並んでいるようだ

短歌職人
親が子どもの卒業式での姿を見て詠んだものです。「いたづらほどの 」髭は大人としては初々しい姿ですが「それぞれの人生のまへに並ぶ」顔はきっと凛々しく希望に満ちているのでしょう。

 

卒業をテーマにした有名短歌集【教師編10選】

 

ここからは教師(先生)が詠んだ有名短歌をご紹介します。

 

【NO.1】小谷稔

『 父母の 離婚を告げて すがすがと 努めしかれも 今日卒業す 』

意味:自分の両親が離婚したことを告げてからもすがすがしく努めていた彼も今日卒業するのだなあ

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両親の離婚というのは子どもにも大きな影響があるはずなのに、周りに心配させないようにとすがすがしく過ごしてきた生徒も素晴らしいですが、そんな彼を優しく見守ってきたからこその暖かい短歌ですね。

 

【NO.2】米川千嘉子

『 被災の子の 卒業の誓ひ 聞くわれは 役に立たざる 涙流さず 』

意味:被災した子どもの卒業の誓いを聞いて、私は何の役に立たない涙は流さない

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東日本大地震後に行われた卒業を詠んだもの。被災状況が甚大すぎて、被災者ではない者が話を聞いただけで涙を流すのは役に立たないものでしかないという感覚かもしれません。しかし「涙」と書いている以上、心の涙は見えていますね。

 

【NO.3】千葉聡

『 さよならの練習 春になりかけの 空の白さに ただ手を伸ばす 』

意味:さよならをする練習で、春になろうとしている時期の白い空にただ手を伸ばしているよ

短歌職人
これは教師をしていた作者が生徒たちとの別れの時を練習する気持ちを歌ったものですが、「白さ」は生徒たちの真っ白な未来にも見えます。「ただ伸ばした手」が開いていたのか握っていたのかの違いでも異なるイメージになりますね。

 

【NO.4】千葉聡

『 高校に 受かり黙ったまま 俺に強い握手を してきたKは 』

意味:高校受験に受かったことを知って黙ったまま俺に強い握手をしてきたKだ

短歌職人
作者はこの「K」なる生徒について度々詠んでいて、かなりインパクトのある人物だったようです。その彼が卒業時に見せた態度をこのように表現しているところに二人の信頼関係が見えてきます。

 

【NO.5】千葉聡

『 三年間 みんな本当に()←空欄に好きな言葉を入れ卒業せよ 』

意味:三年間みんな本当に、の後に続く言葉を入れて卒業しなさい

短歌職人
これを短歌として読ませることができるのは、短歌の先生として活動してきた作者にしかできません。()や矢印は音としては読まない音数になっていますが、これを卒業の日に黒板に書かれていたら()に入れる言葉を詠みながら泣いてしまいそうです。

 

【NO.6】松田常憲

『 言ひつがむ 言葉もなくて 庭芝の 芽ぶくをみよと 生徒(こ)にいひにけり 』

意味:もう言うべき言葉も出てこず、庭の芝が芽吹いているのを見てみよと生徒に言ったんだよ

短歌職人
生徒を送る日に贈るべき言葉を伝えた後は虚しく同じ言葉を重ねるのではなく、庭を指して「芽ぶく」芝に目を向けてこれから伸びる生徒の未来を祈っている思いを表してもいるようです。

 

【NO.7】松田常憲

『 木槿(むくげ)の花 みよとしいへば 仰ぐ生徒(こ)の まみの潤(うるみ)を ひそかにはみつ 』

意味:木槿の花を見よと私が言ったので仰ぎ見た生徒の目が潤んでいるのが密かには見えたよ

短歌職人
別れの時を先生である作者も生徒も惜しんでいるのがよく伝わってきます。お互いに目が潤んでいて、号泣しないように木を仰ぎ見て涙を抑えているのかもしれません。

 

【NO.8】室野英子

『 卒業の 子等の飛びゆく 着地点 そこに花咲く たんぽぽであれ 』

意味:卒業していく子どもたちへ、飛んで着地した地面に咲いているたんぽぽの花のような人であってほしい

短歌職人
たんぽぽの白い綿毛が飛んでいく様に重ねて旅立つ子どもたちに伝えたくなる短歌ですね。「ぽぽ」という響きが可愛らしく春の明るさも感じます。

 

【NO.9】俵万智

『 さんがつの さんさんさびしき 陽をあつめ 卒業してゆく 生徒の背中 』

意味:三月の卒業で寂しい気持ちの中さんさんと太陽が卒業していく生徒の背中を照らしている

短歌職人
「さ」行をひらがなで繰り返しているのが面白いですね。卒業の寂しさの中に楽しさや陽の光で未来への希望も表現しています。先生が生徒を見送る両方の入り混じった気持ちがよく伝わってきます。

 

【NO.10】俵万智

『 出ていけと 思ったことも あったっけ 行ってしまった 欅のむこう 』

意味:そういえば教室から出ていけと思ったこともあったなあ。もう欅のむこうに行ってしまったけれど。

短歌職人
教職についていた方ならではの短歌ですね。手がかかった生徒ほど思い出は沢山あったでしょう。後ろ姿を見送りながらしみじみと思い出す時間は先生にとっての卒業タイムなのですね。

 

以上、卒業をテーマにした短歌集でした!

 

卒業の短歌といっても自分、親、教師など・・・その立ち位置によって感情も見え方も異なってきますね。

 

短歌職人
学生の皆さんはもちろん自分のことを詠む内容になりますので、学校を卒業する時のことを想像するとどういう気持ちになるかをまとめて卒業短歌を作ってみてくださいね!