【短歌の切れ字とは】や・かな・けり!効果や意味•使い方•有名短歌の例など徹底解説!

 

短歌に使われている「切れ字」。

 

中学や高校の国語の授業で習うものの、その使い方や意味は忘れてしまったという人が多いのではないでしょうか。

 

 

今回は、この短歌の「切れ字」について簡単にわかりやすく解説していきます。

 

短歌職人
「切れ字ってどれのこと?」「そもそも短歌の句切れって何だったっけ?」と思っている方は、ぜひ読んでみてください!

 

短歌の切れ字とは?簡単にわかりやすく解説!

切れ字の意味

「切れ字」とは、俳句や短歌で意味の切れるところ(句切れ)に置く語のことです。

 

後述しますが、現在は「や」「かな」「けり」の3つの語が使われています。

 

普通の文章では、文の終わりに句点「。」を置きますよね。俳句や短歌では基本的に「。」は用いないので、切れ字を置くことで意味上の句切れをつくります。

 

この「切れ字」は、詠み手が一番強調したいところの後に置くことが一般的です。

 

切れ字の効果

切れ字を置くことによる効果には以下の3つがあります。

 

  1. 強調する部分を引き立てる
  2. 読者の興味を引く
  3. 短歌全体のリズムを作る

 

例を見てみましょう。まずは、百人一首にも収録されている有名な一首をご紹介します。

 

【例】持統天皇

『 春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山 』

読み方:はるすぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかぐやま

 

上記で挙げた3つの切れ字の効果を短歌例とともに解説していきます。

 

【効果①】強調する部分を引き立てる

「夏来にけらし」の「らし」が切れ字です。「春が過ぎて夏が来るらしい。白い衣が干してあるから、天の香具山に」という内容ですが、作者が強調したいのは白い衣でも天の香具山でもなく「夏が来るらしい」というところなのですね。

このように、切れ字には「置くことで強調する部分を引き立てる効果」があるのです。

【効果②】読者の興味を引く

切れ字を置くことで意味の句切れができると、読み手の興味を引くことができます。

先ほどの一首では、「春が過ぎて夏が来るらしい。」というところで句切れができていました。すると、この部分で読み手は「どうしてそれが分かるの?」と思うわけです。その答えが下の句に書かれてあるので、最後まで読むと「そういうことか」と納得できるのですね。

このように、切れ字を置くことで「それで、どうなったの?」「どうしてそう思うの?」と読者の興味を引くことができるのです。

【効果③短歌全体のリズムを作る

切れ字があると短歌そのものにリズムが生まれます。

例えば句切れをなくし、「春が過ぎて夏が来るらしいねだって白い衣が干してあるからほら天の香具山に~」、とつらつらと書かれたとしましょう。読み手にとっては分かりづらく、印象には残りませんよね。日本語に「、」や「。」があるのは、ある程度の長さでまとまりをつくり、分かりやすく表すためです。短歌に限らず、文章を書く上で区切りは必要不可欠です。短歌ではその区切り(句切れ)を切れ字がつくっているのです。短歌全体を見たときに、心地よいリズムが生まれるのも句切れがあるからこそなのです。

 

切れ字の種類

かつて切れ字は22個あると言われていたり、かの有名な松尾芭蕉が「すべての字は切れ字にできる」と話していたりしたそうですが、現在では、鎌倉~室町時代に使われていた18個が切れ字として使われています。

 

具体的には、「かな・けり・もがな・らん・し・ぞ・か・よ・せ・や・つ・れ・ぬ・ず・に・へ・け・じ」があります。

 

しかし実際には、このうち助詞の「や」「かな」、助動詞の終止形「けり」3つが主に使われています。この3つについて解説します。

 

  • 助詞「や」・・・詠嘆・呼びかけを表す切れ字。どんな言葉の後にも入れることができるが、上の句に使われることが多い。俳句や短歌の切れ字としてとても使いやすく、リズムや余韻を生み出す効果がある。
  •  助詞「かな」・・・詠嘆・感動を表す切れ字。この「かな」によって大きな余韻が生まれるため、その後に言葉を続けても意味がつながらない。そのため、俳句や短歌の最後に置くことが多い。
  • 助動詞の終止形「けり」・・・詠嘆を表す切れ字。用言(動詞・形容詞・形容動詞)の後ろに置かれる。最後に置かれることが多いが、中ほどに置かれることもある。断言するような強い印象を与える。また過去を表す助動詞であるため、過去の事実を断定するような意味合いもある。

 

短歌の切れ字の見分け方/見つけ方

 

短歌では、切れ字が必ず使われているわけではありません。

 

古典の教科書に出てくるような短歌であれば切れ字が使われていることも多いですが、特に現代短歌においては切れ字がないことのほうが多いです。

 

そのため、短歌においては、切れ字を探すよりも「意味上の区切り」を探すほうが良いでしょう。

 

意味を考えたときに、句点(。)が入る場所を探します。

 

【例】西行法師

『 心なき身にもあはれは知られけり/しぎ立つ沢の秋のゆふぐれ 』

意味:趣を理解しない身であっても、しみじみとした趣は自然と感じられるものだなあ。/しぎが飛び立つ沢の夕暮れよ

※句切れの前の「けり」が切れ字

【例】島木赤彦

『 みづうみの氷は解けてなほ寒し/三日月の影波にうつろふ 』

意味:湖の氷は解けてしまったがまだ寒さは厳しい。/三日月の光が映って漂っている

※句切れの前の「し」が切れ字

 

切れ字を使った有名短歌【3選】

 

切れ字が用いられている短歌から、有名なものを3つご紹介します。

 

短歌職人

現代短歌にも切れ字が用いられることはありますが、切れ字の使用が明確な短歌は古典の時代のものが多いです。そこで今回は、百人一首から2作品、近代短歌から1作品を紹介します。

 

【NO.1】小野小町

『 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに 』

読み方:はなのいろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに

意味:桜の花の色は、むなしく衰え色あせてしまった。春の長雨が降っている間に。ちょうど私の美貌が衰えたように、恋や世間のもろもろのことに思い悩んでいるうちに。

短歌職人

切れ字は「うつりにけりな」の「けり」です。最後に置かれることが多い「けり」ですが、このように中ほどに置かれることもあります。

 

【NO.2】藤原敏行朝臣

『 住の江の岸に寄る波よるさへや 夢の通ひ路人目よくらむ 』

読み方:すみのえの きしによるな みよるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ

意味:住之江の岸に寄せる波の「寄る」という言葉ではないけれど、夜でさえ、夢の中で私のもとへ通う道でさえ、どうしてあなたはこんなに人目を避けて出てきてくれないのでしょうか。

短歌職人

切れ字は「夜さへや」の「や」で、具体的には疑問の意味を表す係助詞です。「夜でさえ…するのか」という疑問が呼びかけになっており、短歌にリズムが生まれています。

 

【NO.3】与謝野晶子

『 何となく君に待たるるここちして出でし花野に夕月夜かな 』

読み方:なにとなく きみにまたるる ここちして いでしはなのに ゆうづきよかな

意味:なんとなくあなたが待っているような気がして、秋の花が咲き乱れる花野に出てみたら、月が夜空に浮かんでいた。

短歌職人

短歌の途中ではなく最後に切れ字「かな」が用いられています。「かな」で終わることで、歌に余韻が残ります。

 

さいごに

 

この記事では、短歌の「切れ字」について解説しました。

 

「切れ字」は短歌において必須ではないものの、使うことによって様々な効果が得られることがお分かりいただけたでしょうか。

 

この記事で紹介した基本の「や」「かな」「けり」以外の切れ字にも、それぞれ意味や効果があります。1,2文字の違いで、読み手が受ける印象が変わるというのは面白いことです。

 

短歌職人
興味のある方は、ぜひ他の切れ字についても調べてみてください。きっと短歌の楽しみ方が広がることでしょう!