みなさんは有名な恋の短歌をご存知ですか?
想いを5・7・5・7・7の31文字にこめてつづったものは美しいもの、切ないものまで色々有ります。
昔の和歌と現代短歌では表現の仕方は大きく変わってはいますが、相手への純粋な恋心は同じです。
今回は、恋をテーマにした昔の有名短歌(和歌)と現代有名短歌をご紹介いたします。
恋の有名短歌(和歌)集【現代短歌15選】
まずは語感的にみなさんの感覚に近い現代短歌からご紹介します。
明治の歌人、樋口一葉と与謝野晶子から、後半はガラッと変わって今どきらしい現代の口語体の短歌を楽しんでみてください。
【NO.1】樋口一葉
『 よそながら かげだに見んと 幾たびか 君が門をば 過ぎてけるかな 』
意味:それとなく、せめて影だけでも見たくて何度もあなたの家の門を行ったり来たりしています。
【NO.2】樋口一葉
『 わかれんと 思ふばかりも 恋しきを いかにかせまし 逢はぬ月日を 』
意味:いっそ別れようと思うばかりに恋しい思いをどうしたらいいのでしょう。逢わない月日をどう過ごしましょう。
【NO.3】樋口一葉
『 つくづくと 打まもりても あられねば さしむかふこそ くるしかりけれ 』
意味:しみじみと心を守りながらいなければならない恋こそが苦しいものです。
【NO.4】与謝野晶子
『 くろ髪の 千すじの髪の みだれ髪 かつおもひみだれ おもいみだるる 』
意味:私の黒髪の千すじもの豊かな髪が、思い乱れるたびごとにさらに乱れていきます。
【NO.5】与謝野晶子
『 わが恋は 虹にもまして 美しき いなづまとこそ 似むと願ひむ 』
意味:私のあなたへの恋は虹よりも美しく稲妻のように激しくあって欲しいと思っています。
【NO.6】与謝野晶子
『 その子二十 櫛にながるる 黒髪の おごりの春の うつくしきかな 』
意味:その人は20歳。櫛ですいた黒髪が誇りに満ちている青春のなんと美しいことよ。
【NO.7】山川登美子
『 それとなく 紅き花みな 友にゆづり そむきて泣きて 忘れ草つむ 』
意味:気づかれないように華やかな恋を友だちに譲って、私は背を向けて泣きながら忘れな草を摘んでいます。
【NO.8】北原白秋
『 ヒヤシンス 薄紫に 咲きにけり はじめて心 ふるいそめし日 』
意味:ヒヤシンスが薄紫色に咲いたよ。はじめてあなたに心を震わせた初恋の日に。
【NO.9】俵万智
『 この味が いいねと君が 言ったから 七月六日は サラダ記念日 』
意味:このサラダの味がいいねとあなたが言ったから、その七月六日はサラダ記念日にしよう。
【NO.10】俵万智
『 嫁さんに なれよだなんて 缶チューハイ 二本で言って しまっていいの 』
意味:オレの嫁さんになれよだなんて缶チューハイ2本飲んだところで言ってしまっていいの?
【NO.11】俵万智
『 気がつけば 君の好める 花模様ばかり手にしている試着室 』
意味:気がついたらあなたが好きな花模様の服ばかりを手にして試着室に入っていたよ。
【NO.12】俵万智
『 明日まで 一緒にいたい 心だけ ホームに置いて 乗る終電車 』
意味:明日まであなたと一緒にいたいという心だけをホームに残して終電車に乗ったよ。
【NO.13】田中雅子
『 人づての 便りを拾い 集めれば 嗚呼君が今 この世に生きている 』
意味:人づての便りを拾い集めてみると、ああ、しばらくあっていないあなたが今この世に生きていることがわかったよ。
【NO.14】木下龍也
『 君という 特殊部隊が突き破る 施錠してない 僕の扉を 』
意味:君という特殊部隊が突き破ってくるよ。施錠をしていない僕の心の扉を。
【NO.15】佐藤真由美
『 ありがとう いつも一緒に いてくれて たまに一緒に いないでくれて 』
意味:あなたありがとう。いつも一緒にいてくれて。そしてたまに一緒にいないでくれて。
恋の有名短歌(和歌)集【昔の短歌15選】
ここからは昔の短歌をご紹介していきます。
昔の短歌とは、いわゆる「和歌」と呼ばれている万葉集・古今和歌集・新古今和歌集の時代に作られた短歌のことです。
ここでは特に有名な恋の歌をピックアップしご紹介します。
【NO.1】和泉式部
『 あらざらむ この世のほか 思ひ出に いまひとたびの あふこともがな 』
意味:私はもうすぐ死んでしまうでしょう。この世の思い出に、もう一度だけあなたにお会いできたらいいのに。
【NO.2】藤原義孝
『 君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな 』
意味:あなたのために命も惜しくはないと思っていましたが、会ってしまうと少しでも長く生きたいと思ってしまうのです。
【NO.3】在原業平
『 きみにより 思ひならひぬ 世の中の 人はこれをや 恋といふらむ 』
意味:あなたによって人を想うことを学びました。世の中の人はこれを恋というのでしょう。
【NO.4】光明皇后
『 我が背子と 二人見ませば いくばくか この降る雪の 嬉しからまし 』
意味:あなたと一緒に見るならば、この美しい雪が降る景色も嬉しいでしょうに。
【NO.5】平兼盛
『 しのぶれど 色に出にけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで 』
意味:誰にも言っていない恋だったのに顔色に出てしまっていたようです。恋の悩みがあるのですかと聞かれるほどに。
【NO.6】小野小町
『 思いつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば さめざらましを 』
意味:恋しい人を思いながら寝たので夢に現れたのでしょう。夢だとわかっていたならば覚めなかったのに。
【NO.7】和泉式部
『 黒髪の みだれも知らず うちふせば まづかきやりし 人ぞ恋しき 』
意味:黒髪が乱れているのもかまわず横になると、その黒髪を手でかきあげてくれたあの人のことが恋しくなります。
【NO.8】河原左大臣
『 陸奥(みちのく)の しのぶもぢずり誰故に 乱れそめにし 我ならなくに 』
意味:しのぶもぢずりの乱れ模様のように僕の心が乱れ始めたのは誰のせいでしょう。私のせいではないのに(あなたのせいです)。
【NO.9】儀同三司母(ぎどうさんしのはは)
『 忘れじの 行く末までは 難ければ 今日を限りの 命ともがな 』
意味:いつまでも忘れないということが将来まで変わらないのは難しいでしょう。だからその言葉を聞いた幸せな今日、命が尽きてしまえばいいのに。
【NO.10】陽成院
『 筑波嶺の 峰より落つるみなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる 』
意味:筑波山の峰から流れ落ちてくる男女(みなの)川。私のあなたへの恋もその川のようにやがて淵になるように深くなっていくよ。
【NO.11】村上天皇
『 思へども なほぞあやしき 逢ふことの なかりし昔 いかでへつらむ 』
意味:あなたを恋しく思っていると、あなたに会う前はどんな気持ちで過ごしていたのか不思議に思われます。
【NO.12】崇徳院
『 瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ 』
意味:川の瀬の流れが早くて岩にせき止められた流れが分かれたのちにまた一緒になるように、今はあなたと別れても再び逢いましょう。
【NO.13】元吉親王
『 詫びぬれば 今はた同じ 難破なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ 』
意味:思い煩った今はもう何をしても同じ事だ。難破にある澪標(みおつくし)のように身を滅ぼしてでもあなたに会いたいと思っています。
【NO.14】藤原実方
『 かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな もゆる思ひを 』
意味:こんなにもあなたに恋をしているなんてとても言えません。伊吹山のさしも草ではないけれど、この燃える想いをご存知ないでしょう。
【NO.15】式子内親王
『 玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする 』
意味:命と体をつなぐ緒よ、絶えるなら生き絶えて欲しい。生きながらえると、この恋を忍んでいる気持ちが弱ってしまいそうになるから。
以上、恋に関する有名短歌集でした!
恋心を限られた語数にぎゅっと詰めて伝えられるとグッときますよね。
このように現代ではわかりやすく自由な内容で、語数に縛られない口語体のものもたくさん作られています。