高校生のみなさん、冬の短歌を作るときに、冬らしさを表現するのがむずかしく感じることはありませんか?
短歌と同じ定型詩の俳句には「季語」を使うルールがありますが、短歌にはそのルールがありません。
そのため逆に季節の表現がむずかしいことがあるのです。
今回は、冬らしさを出す季語とそれを使った短歌作品20選ご紹介いたします。
短歌に冬らしさを出す!冬の季語を知ろう
そもそも季語とは「日本の四季である春:夏:秋:冬のうち特定の季節を表すために定められた言葉」のことです。
繰り返しになりますが、短歌には「季語」は必ずしも必要ではありません。
しかし、冬らしさを出すためにはこの「季語」を使うのが最も効果的とも言えます。
冬らしさを出すためにはこの「季語」から好きなものを選び出して使うのが最も効果的です。
みなさんが使いやすいと思われる冬の季語を以下にご紹介します。
代表的な冬の季語【一覧】
【時候:天候】
冬 冬の~(冬の星など)雪 小雪 大雪 霜 霰(あられ)霙(みぞれ)初雪 吹雪 雪晴 雪女 風花 時雨 ダイヤモンドダスト 樹氷 凍る 寒し 冷たし 冴ゆる 凍る 厳寒 霜月 十二月 一月 師走 行く年 大晦日 冬深し 春を待つ 短日 オリオン 空風 北風 隙間風 冬銀河 冬日 冬北斗 立冬 冬至 冬日和 晩冬
【地理】
冬の~(冬の山など)枯園 枯野 寒潮 冬景色 冬野 山眠る 初氷 凍滝 波の花 氷海 雪山 雪野 凍土 霜柱 冬山河 冬野 氷柱 氷海
【生活】
アイスホッケー スケート スキー ラグビー ストーブ 焚火 炭火 炬燵 暖房 火事 消防車 風邪 咳 マスク 湯ざめ 息白し 毛糸編む 毛皮 コート 冬服 ブーツ 冬帽子 セーター マフラー 手袋 膝掛 毛布 蒲団 ホットドリンク 釜揚うどん 鍋焼き 寄せ鍋 雑炊 湯豆腐 柚子湯 納豆 今川焼 焼き芋 餅 おでん 勤労感謝の日 七五三 クリスマス 冬休み 年越し 雪祭 除夜の鐘
【動物や植物】
冬眠 兎 雪兎 狼 狐 鷹 狸 千鳥 鶴 鴨 梟 鷹 水鳥 白鳥 落葉 枯木 枯草 枯葉 木の葉 冬枯 冬木 冬木立 冬芽 冬草 カトレア 山茶花 寒椿 クリスマスローズ 枇杷の花 シクラメン ポインセチア 冬すみれ 水仙 葉牡丹 冬薔薇 侘助 寒梅 蕪 大根 人参 葱 生姜 冬林檎 蜜柑 冬苺 ブロッコリー 白菜 河豚 甘鯛 鱈 牡蠣 蟹
【新年】
新年 新玉 初春 正月 元旦 初空 初茜 門松 若水 雑煮 数の子 黒豆 年賀 年賀状 初夢 新年会 初売り 福袋 獅子舞 かるた 初詣 七草粥
高校生向け!!冬らしい有名俳句集【10選】
それでは季語が使われている冬らしい有名な短歌を10選ご紹介します。
【NO.1】山部赤人(百人一首)
『 田子の浦に うちいでてみれば白妙の 富士の高嶺に雪は降りつつ 』
季語:雪
意味:田子の浦の海岸に出てみると、真っ白な布をかぶったように雪を頂いた見事な富士山がに見える。そしてそこには今も雪が降り続いている。なんと美しい景色だろう。
※「白妙」(しろたえ)とはコウゾ類の木の皮の繊維で織った純白の布のこと。「月」「雲」「雪」「波」など白いものにかかる枕詞で、ここでは富士に掛かっています。
【NO.2】清原深養父(古今和歌集)
『 冬ながら 空より花のちりくるは 雲のあなたは春にやあるらむ 』
季語:冬
意味:冬なのに空から花が降っている。雲の向こう側は春なのでしょうか。
【NO.3】大伴家持(新古今和歌集:百人一首)
『 かささぎの 渡せる橋に置く霜の 白きを見れば夜ぞふけにける 』
季語:霜
意味:かささぎが渡した天の川のような宮中の階段に真っ白い霜がおりている。夜もずいぶんと更けたのだなあ。
【NO.4】清原元輔(拾遺和歌集)
『 冬の夜の 池の氷のさやけきは 月の光の磨くなりけり 』
季語:冬
意味:冬の夜の池の氷が清らかにも冴えているのは、月の光がきらきらと美しく照らすからなのですね。
【NO.5】藤原定家(新古今和歌集)
『 駒とめて 袖打ち払ふ陰もなし 佐野のわたりの雪の夕暮れ 』
季語:冬
意味:馬をとめて、袖に積もった雪を払い落とすような物影すらない。佐野の渡し場の雪の夕暮れどきよ。
※「駒」は馬。「佐野のわたり」は(おそらく当時の奈良県)の船の渡し場のこと。
ここからは、明治以降の歌人や作家の短歌をご紹介していきます!
【NO.6】若山牧水
『 こころよき 寝覚なるかも冬の夜の あかつきの月玻璃窓(はりまど)に見ゆ 』
季語:冬
意味:冬の夜にここちよく目が覚めたら、ガラス窓から夜明け前の月が見えています。
【NO.7】樋口一葉
『 あらたまの 年の若水くむ今朝は そぞろにものの嬉しかりけり 』
季語:若水
意味:今朝は元日、若水を汲んでいます。なんとなくですが、こころ嬉しいものです。
【NO.8】伊藤佐千夫
『 朝清め 今せし庭に山茶花の いささか散れる人の心や 』
季語:山茶花
意味:朝の庭掃除を今やり終えたばかりですが、山茶花の花びらがほんの少し、人の気持ちが動くかのごとく散っていました。
※「朝清め」とは朝の掃除のことです。
【NO.9】土田耕平
『 草まくら 時雨ぞ寒きわが友の なさけの羽織いただきて着む 』
季語:時雨
意味:旅先で冬の雨にうたれて寒い思いをしたが、旅の宿で仲良くなった人が気の毒がって羽織をくれた。ありがたいことです。
※「草まくら」は旅にかかる枕詞。
【NO.10】斉藤茂吉
『 枇杷の花 冬木のなかににほへるを この世のものと今こそは見め 』
季語:枇杷の花
意味:枇杷の花が冬枯れしている木立のなかで香っている。この世ではもう見納めになるかもしれない、よく見ておこう。
こんな俳句もある!冬の素人俳句集【10選】
次はみなさんと同じ高校生の方のオリジナル短歌をご紹介します。
【No.1】白猫に 雪と名付けてそれからは 毎日あたたかい冬である
季語:雪
意味:白い猫が家にきた。雪と名付けたけれど、毎日一緒にあたたかく過ごす冬です。
【No.2】マフラーが 落ちないように巻きつける 母の手を今思い出している
季語:マフラー
意味:マフラーを落ちないように巻きながら、母の手の温かみを思い出しています。
【No.3】オリオンの 光届かぬ街路樹に 背を持たせつつ待つも遅けり
季語:オリオン
意味:冬の星座オリオンもよく見えない街中で、街路樹にもたれて待ち合せをしているけれど、待ち人はまだやってきません。
【No.4】ふと開く LINEの空に雪が降る あ!そうだ 今日はクリスマスイブ
季語:雪、クリスマス
意味:いつものようにふとLINEを開いたら、画面に雪のアニメショーン。今日はクリスマスイブだと気がついた。
【No.5】寒い朝 寒い日中寒い夜 こたつに集まる我らは家族
季語:寒い、こたつ
意味:寒い朝も、お昼も、夜も、気がついたらこたつに集まっているのが、我らが家族なのです。
【No.6】初もうで 柏手二回鈴鳴らし 平和を祈念こうべを垂れて
季語:初もうで
意味:初詣にいった。柏手を二回打って鈴を鳴らし、頭を下げつつ平和を祈りました。
【No.7】凍えたる 朝の気配は透明に すべての時を止めると見えて
季語:凍えたる
意味:凍えるような朝がきて、その空気は透明です。そしてすべての時を止めてしまいそうです。
【No.8】しろたへの 雪の野原を蹴り上げて 跳ねる兎の夢など思ふ
季語:雪、兎
意味:真っ白い雪の野原に積もった雪を蹴りながら、跳ねるうさぎの夢をみたなあと思っていました。
【No.9】手袋の 片方のみが杭の上 相方探し寂しさうなり
季語:手袋
意味:手袋の片方だけが、杭の上にひっかけられている。もう片方を探しているようで、淋しそうです。
【No.10】藍空に 冴え三日月の傾きて 街を行く人みな息白し
季語:冴え、息白し
意味:藍色のようにうす暗い空に傾いた三日月が冴えていて、街を行く人たちはみな白い息です。
以上、高校生向け冬のおすすめ短歌集でした!
百人一首や古今和歌集に載っているような古典はむずかしく感じますが、現代語であれば試しにいくつか作るうち、かならずコツがつかめてくるものです。