【朝を題材にした短歌 20選】いろんな朝の短歌ネタ!!おすすめ有名&一般短歌を紹介!

 

始まりの朝、旅立ちの朝、誰かと一緒に過ごす朝、一人でゆっくりと迎える朝、人によって朝は色々で、その時の心境によって様々な表情を見せてくれます。

 

今回は、そんな「朝」を題材にした短歌を20首紹介します。

 

 

短歌職人
有名なものから一般の方が作ったものまで幅広く紹介していきますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

 

朝を題材にした有名短歌【おすすめ10選】

 

短歌職人
まずは古代から現代までの有名歌人が詠んだ朝の和歌・短歌を10首ご紹介します。

 

【NO.1】磐之媛命

『 秋の田の 穂の上霧らふ 朝がすみ 何方の方に わが恋ひやまむ 』

【意味】秋の田に稔る稲穂の上に朝霞で霧がかかっている。霧はどこかへ消えてしまうのだろうが、私の恋心はどこにも消えていったりはしない。

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作者は早朝に立ちこめる霧をぼんやりと見つめながら、恋しい人のことを考えていたのでしょうか。朝の霧はいずれ薄くなって消えていきます。恋心も霧のように正体がつかめず自然と立ち上るものだけど、自分の恋心は消えず止まないのだという強い愛情を感じる歌です。

 

【NO.2】他田日奉直大理

『 暁(あかとき)の かはたれ時に 島陰を 漕ぎにし船の たづき知らずも 』

【意味】まだ薄暗い夜明けのうちに島の陰から漕ぎ出て行った船の行方は分からない。

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「かはたれ時(彼は誰時)」は人の顔が見分けにくいような夜明けの薄暗い時間を指します。夜も明けきっていない時間に海へと漕ぎ出した船があり、作者はそれを見ていたのでしょう。船の無事を案じながら、だんだん明るくなっていく空と海原をしばらく見つめていたのかもしれません。

 

【NO.3】壬生忠岑

『 有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし 』

【意味】有明の月のようにあなたが冷たく見えたあの別れから、暁ほど憂鬱なものはないのだ。

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「有明」は明け方まで出ている白い月のことで、月に恋しい相手の態度をたとえています。作者は別れ際の恋人の態度が冷たく感じられて、その時の悲しい気持ちが忘れられないのでしょう。それ以来夜明けになると悲しくなる、憂鬱になってしまうという切ない朝の歌です。

 

【NO.4】清原深養父

『 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ 』

【意味】夏の夜はまだ宵だと思っていたら明けていたが、月は雲のどこに宿をとっているのだろうか。

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夜が来たと思っていたらもう夜明けだった、と夏の夜明けの早さに少々驚きながら、こんなに夜明けが早くては月も隠れるひまがなかっただろうと思っている歌です。月が雲に宿をとるという擬人法を用いて、夜明けの月に思いを馳せています。

 

【NO.5】正岡子規

『 靄深く こめたる庭に下り立ちてて 朝のすさびに杜若剪る(かきつばたきる) 』

【意味】朝もやの深く立ち込める庭に下りて朝の手すさびにカキツバタを切る。

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「すさび」は「遊び」と書き、何気なく心のおもむくままにといった意味があります。作者は縁側などから朝もやの庭に下りて出て、しばらく朝の霧を肌に感じて立っていたのかもしれません。そこにカキツバタがあり何気なく切ってみたのだという内容で、朝露でしっとりとしたカキツバタの感触や、植物を切る青々とした香りが朝もやに混ざって鼻に届く感覚が伝わってくるような歌です。

 

【NO.6】北原白秋

『 君かへす 朝の舗石(しきいし) さくさくと 雪よ林檎の 香のごとくふれ 』

【意味】君を帰す朝の敷石が足音でさくさくと響いている。雪よ林檎の香りのように降れ。

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愛しい人が帰るのを見送る朝の歌です。雪の降る静かな早朝に「君」の踏む敷石だけがさくさくと響きます。「さくさく」は次の句の「林檎」と結びついて、無機質な雪に甘酸っぱいイメージを持たせ、雪と敷石というモノトーンの世界に淡い赤色をプラスしています。作者は自分たちの恋を、林檎のように甘く爽やかで純粋なものと表現したかったのかもしれません。

 

【NO.7】与謝野晶子

『 みだれ髪を 京の島田に かへし朝 ふしてゐませの 君ゆりおこす 』

【意味】乱れた髪を京の島田の髪型に結い直す朝。寝ていてくださいねと言った君を揺り起こす。

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髪をきちんと結ぶまで起きないでいてねと恋人に言っていたのでしょう。乱れた髪は見られたくないという女心とともに、第三句の「朝」という体言止めからは二人で朝を迎えた幸せも伝わります。「ふしてゐませ」という語りかけは女性的で柔らかく、相手への愛情が感じられます。

 

【NO.8】石川啄木

『 ある朝の かなしき夢の さめぎはに 鼻に入り来し 味噌を煮る香よ 』

【意味】ある朝に悲しい夢から目が覚めた時に鼻に感じた味噌を煮る香りよ。

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悲しい夢から覚めて、しかし起きたてでまだ夢か現か分からない時に味噌汁の匂いがしたという歌です。第五句の詠嘆からは、家の人が朝食用に味噌汁を煮ていると気付いた作者の、日常を感じた安心感が伝わってきます。

 

【NO.9】島木赤彦

『 山にして 遠裾原に 鳴く鳥の 声の聞こゆる この朝かも 』

【意味】山の中で、遠くの裾野で鳴く鳥の声が聞こえるこの朝だよ。

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「山にして」は山に居て、山の中にあってという意味です。作者は山の中で、遠くの野で鳴いている鳥の声を聞き、それが聞こえてくる朝の山の静けさにしみじみと感じ入ったのでしょう。

 

【NO.10】杉崎恒夫

『 美しい 紅茶には神さまが 住んでいる ある朝ふいに 信じたくなる 』

【意味】美しい紅茶には神さまが住んでいるとある朝ふいに信じたくなる。

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作者は朝食の紅茶を見て神さまがいると思ったのでしょうか。澄んだ紅茶に朝の光が当たって、神さまがいてもおかしくはないくらい美しく感じたのかもしれません。そんな気分にさせた朝はきっととても爽やかで眩しい朝だったのでしょう。

 

朝を題材にした一般短歌【おすすめ10選】

 

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ここからは一般の方が詠んだ朝の短歌を10首紹介していきます。

 

【NO.1】

『 カーテンの 先の春天 飛び越えて 二度寝の夢は 宇宙へと行く 』

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春の朝の歌です。「春眠暁を覚えず」と言うように春は何だか眠たいものです。カーテンの先には春の空が広がっているけれど、夢はそこを飛び越えて宇宙に行ったという、何ともスケールの大きな内容で、二度寝の気持ちよさと眠りの深さが想像できます。

 

【NO.2】

『 休日の 誰も知らない 早朝の 海まで歩き そよ風受けて 』

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「誰も知らない」は早朝で他に誰もいないことを表しているのでしょう。朝の海をひとりじめしたように感じたのではないでしょうか。朝日に輝く海の眩しさと気持ちの良いそよ風が感じられる、とても爽やかな朝の風景を詠んだ歌です。

 

【NO.3】

『 朝食の コーンスープを 大切に 飲み干す人の デカめの遅刻 』

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この人はコーンの一粒も残さずに大事に味わって飲んだのでしょう。その結果の遅刻は残念ですが、おおらかな人柄が想像されます。また「デカめの」が小さなコーンの粒と対比になっているように感じられ、小さなことを大切にする人に対する作者の温かな目線を思わせます。

 

【NO.4】

『 さわやかな 朝の日差しに 鳥の声 布団恋しく 幸せ気分 』

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目覚めると良い天気で鳥の声も聞こえてくる、そんな中布団にくるまって幸せを感じているのでしょう。目覚めたばかりでまだ眠たい時に「布団恋しく」なる気持ちはとても共感できます。

 

【NO.5】

『 雨戸開け 真正面には キラキラと 明けの明星 その命あり 』

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「雨戸開け」という動作に1日の始まりが表現されています。「明けの明星」は金星のことですが、雨戸を開けると空に金星があるのが目に入ったのでしょう。まだ薄暗い夜明けの空に一つきらめく星が美しく、作者はその輝きを命だと感じたのかもしれません。

 

【NO.6】

『 旅立ちの 挨拶をする その前に 君と見つめた 朝焼けの色 』

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「旅立ち」はどこか遠い所への出発を意味するのでしょう。「君」とはしばらく会えなくなるのかもしれません。そんな旅立ちに二人で見つめた朝焼けは、今後忘れられなくなるであろう特別な景色であるとともに、二人の未来も予感させます。朝焼けはバラ色に輝く美しいものだったのではないでしょうか。

 

【NO.7】

『 朝焼けに 雲が焔(ほむら)に 揺らめいて 冷えた夜空に 輝き戻す 』

短歌職人
燃えるような朝焼けを表現した歌です。「炎」ではなく「焔」という字を使ったところに、赤い火がゆらゆらと立ち上り雲を燃やしていくような印象を受けます。凍っていた空に命と体温を取り戻させたような強さを感じる一首です。

 

【NO.8】

『 早朝の 庭で蟋蟀(こおろぎ) 凝りもせず 鳴いて夜明けを 知らぬ振りする 』

短歌職人
秋の朝、夜が明けたにもかかわらずコオロギがまだ鳴いていたのでしょう。夜中鳴いていたのでしょうが、鳴き足りなかったのでしょうか。擬人法を用いてコオロギに注目し、朝を知らんぷりするコオロギというコミカルな歌となっています。

 

【NO.9】

『 起こされて 肌に刺さるは 冬の吐息 致し方無しと 二度寝する今日 』

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布団から出ようとしたけれどあまりの寒さで起きるのを諦めたのでしょう。「肌に刺さる」が、空気の冷たさにびっくりして布団に引っこんでしまった様子を想像させます。この寒さじゃ仕方ないよね、と二度寝したようですが、今日は朝寝坊して良い日だったのでしょうか。

 

【NO.10】

『 貼り替えた 障子の向こう 猫が行く 気配ありける 冬の朝かな 』

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真新しい障子の真っ白な色が冬の寒さを思わせます。作者はまだ寝床にいて、障子の向こうを猫が通っているなと思ったのでしょう。第五句の詠嘆から、猫が通る気配が分かるような冬の朝の静けさに感じ入ったことが伝わります。

 

以上、朝を題材にした短歌集でした!

 

 

朝焼けや朝もやなど、朝にしか見られない景色を短歌に詠み込むと趣のある歌となって情緒が感じられます。

 

また、うきうきするような楽しい一日の始まりや、ちょっと苦手なことが予定されている一日の始まりに感じたことなどを短歌にしてみるのも、自分らしい短歌ができるのでおすすめです。

 

短歌職人
皆さんもぜひ朝をテーマにして自分なりの短歌作りに挑戦してみてください。