満開の桜や眩しい水平線、真っ赤な紅葉やきらめく雪景色など、日本には四季折々の自然風景があり、地域によってもさまざまな自然の姿を楽しむことができます。
古来から短歌にも、雄大で美しい自然への感動は多く詠み込まれてきました。
今回は、そんな「自然」をテーマに一般の方が作った短歌を20首ご紹介します。
自然の声
都会では聞く事の出来ない『自然』が作る声を詠みました。 #川柳 #senryu #haiku #tanka http://t.co/Olq6KbSWc9 pic.twitter.com/AKS1fLK5Y5— 画像で575 (@575fun_bot) October 24, 2014
自然を題材にした一般短歌ネタ【前半10首】
【NO.1】
『 春立つと 知らぬ深山は なほ冴えて 花にゆづらぬ 木々の白雪 』
【NO.2】
『 桜咲き 満開の山 空薄く 地には鮮やか 芝桜紅 』
満開の桜でピンク色に染まった山と水色の空という淡い色合いと、後半の鮮やかな紅色の芝桜という濃い色彩が美しいコントラストとなる歌で、春をイメージさせる色で描かれた色鮮やかな一首です。
【NO.3】
『 憎らしい ほどに綺麗な 花吹雪 「春泥棒」と 風に呟く 』
【NO.4】
『 初夏の森 美味しい空気 いただくよ 肺で行う 酸素交換 』
【NO.5】
『 笠雲を 被り座するは 富士の山 凌がず招く 雨風の傘 』
【NO.6】
『 青白く 魅せられて宙(そら) 月明かり 聴いてみたくて おとぎ話を 』
【NO.7】
『 清流の 岩かと惑ふ 山椒魚 しばし息飲む 太古の姿 』
【NO.8】
『 眼を見張る 大海原に 乗り出して さあ始めよう 風と綱引き 』
【NO.9】
『 山間を 拓きて成りし わが町の 向かひの森は 蛍棲む里 』
【NO.10】
『 ひとつずつ ちいさなビーズ ちりばめて よぞらにうかぶ ほしのまたたき 』
自然を題材にした一般短歌ネタ【後半10首】
【NO.11】
『 樹神(こだま)らの 千年永らふ 魂と見ゆ 疾風(はやち)と雨の 後の山霧 』
【NO.12】
『 この世界 人々が波を 起こそうとも 青い大海 びくともしない 』
人間がいくら大騒ぎしても海には関係がない、青い海はただそこにあるのだという歌です。人類の誕生以前から在る海の大きさや普遍性を感じます。
【NO.13】
『 思い出や 日々の暮らしを 流しゆく 豪雨の前に なす術もなし 』
【NO.14】
『 夜の海に 光を放つ 灯台の たもとに在りて 海鳴りを聴く 』
【NO.15】
『 空に雲 山に秋桜 彼岸花 田には稲穂の 実る秋かな 』
【NO.16】
『 秋の山 豊水梨の 芳しき 浮かぶ面影 懐かしの人 』
「豊水」は梨の品種名ですが「秋の山」の後に続けることで、梨のみずみずしい様子とともに秋の山の実りが豊かな様子も想像させます。梨のかぐわしさで懐かしい人を思い出すという歌ですが、きっと秋に二人で梨を食べた思い出のある相手なのでしょう。
【NO.17】
『 里山に 秋空広く 広がりて 小川に響く 翡翠(かわせみ)の声 』
「広く広がりて」と反復することで秋の澄んだ青空が高く広く感じられることを強調しています。「里山」という言葉ものどかな印象があり、身近で穏やかな自然の姿が表現されています。
【NO.18】
『 年の瀬に 寒気山より 走り駆け 残り紅葉を 紅染めあげる 』
「走り駆け」が、山の頂上から一気に寒気が下りて冷え込んだことを思わせます。それまでが暖かかったのか色が変わらずにいた紅葉も、たまらずに一日で真っ赤に染まってしまったのでしょう。
【NO.19】
『 薄氷を 朝日が溶かす 音をたて 川面に響き 静寂やぶる 』
早朝の静けさの中で朝日が氷を溶かす音が響きます。作者は川辺でその音を聴いているのでしょうか。身が引き締まるように凍てつく冬の風景がありのままに描かれた歌です。
【NO.20】
『 道の先 表れ迫る 氷瀑に 人知れずただ 涙を流す 』
「氷瀑」は滝が凍ったものです。冬の山道を歩いていて突然目の前に氷の滝が現れた、その迫力に圧倒されて作者は涙が出るほどの感動を覚えたのでしょう。
以上、自然をテーマにした一般短歌集でした。
日本は弓なりに長い形の列島で地域によって寒暖の差があり、同じ時期でも地方によって全く違う自然の姿が見られます。
皆さんもぜひ、自分の住んでいる地方ならではの自然に感じたことを短歌で表現してみてください。
また、旅行先で思いがけない自然の姿に出会い感動した体験などから短歌を作るのもおすすめです。