【西行の有名和歌 20選】知っておきたい!!和歌の特徴や人物像•代表作など徹底解説!

 

西行は生涯に約2300首の和歌を残し、百人一首にも選ばれている平安時代の歌人です。

 

その歌や生き方は松尾芭蕉をはじめとする多くの文化人に影響を与え、現代でも数多のファンに愛されています。

 

 

今回は、そんな「西行(さいぎょう)」の和歌20首ご紹介します。

 

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人物像なども詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。

 

西行の人物像や作風

(西行象 出典:Wikipedia

 

西行(さいぎょう)は、平安時代末期から鎌倉時代の初めを生きた僧侶で歌人です。

 

もとは武士で、天皇の警護という高い役職に就いていました。裕福で何不自由ない生活を送る西行でしたが、23歳の時に突然一切を捨てて出家をします。

 

出家の理由ははっきりとは分かっていませんが、出家した西行は日本各地を旅して回ります。73歳で亡くなるまで何度も旅に出て、多くの和歌を残しました。

 

 

西行の歌はあまり技巧を凝らさずに、感情や情景を素直に表現していて読み手が共感しやすい点が特徴です。

 

また、西行といえば桜と言われる程に桜をテーマにした歌が多く、桜を愛した歌人としても知られています。

 

 

西行は僧という身分から、仏道を極めようとするなら執着心や迷う心を捨てなければいけません。しかし西行は桜が好き過ぎて、春には桜のことを考えてソワソワ。更に花鳥風月に感じ入り、時に涙を流してしまうようなセンチメンタルな性格だったと言われています。

 

そんな僧としては未熟とも言える嬉しさや悲しさ、喜びや悩みを西行は隠さずに歌で表現しました。

 

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その率直さが、多くの人を惹きつける西行の魅力かもしれません。

 

西行の有名和歌・代表作【20選】

 

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ここからは、西行のおすすめ和歌を20首紹介していきます!

 

西行の有名和歌【1〜10首

 

【NO.1】

『 いとほしや さらに心の をさなびて 魂ぎれらるる 恋もするかな 』

【意味】何て愛おしいんだろう。私の心はますます大人げなく、魂が引きちぎれるような恋をしている。

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初句で「好きなんだ!」と思いをストレートに表した歌で、20代前半の西行の一途な恋心を感じます。この頃西行は宮中の高貴な女性に恋をしていたと言われています。

【NO.2】

『 身を捨つる 人はまことに 捨つるかは 捨てぬ人こそ 捨つるなりけれ 』

【意味】出家する人は本当に身を捨てているのだろうか。俗世の人こそ身を捨てているのではないだろうか。

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仏道の修行を表す言葉に「捨身」があります。僧は身を捨てて仏道を極めようとするのです。しかし西行は、俗世の人は自分を大事にしていない、俗世の人こそ身を捨てているのではと感じていたようです。

【NO.3】

『 吉野山 梢の花を 見し日より 心は身にも 添わずなりにき 』

【意味】吉野山の梢の桜を見た日から、心は桜に奪われて体を離れていってしまった。

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平安時代後期以降「花」は桜を指す言葉として使われています。「心は身にも添わず」とは、体から魂が抜けて出て行ったというようなニュアンスの言葉です。吉野山は古くから桜の名所として知られ、西行は桜の季節のたびに吉野山を訪れたと言われています。

【NO.4】

『 なげけとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな 』

【意味】嘆けと言って月が物思いにふけらせるのだろうか、いや月にかこつけて流れる私の涙だよ。

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第二句の「やは」は反語で「いや、そうではない」という意味を持ちます。月を見ていると自然と涙があふれてくる、そんな恋の辛さを詠んだ歌です。

【NO.5】

『 たづぬとも 風のつてにも 聞かじかし 花と散りにし 君が行方を 』

【意味】たずねてももう、風の便りにも聞くことはないでしょう。花のように散っていった君の行方は。

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恋をしていた女性が亡くなって詠まれた歌です。桜が散るように儚く消えた憧れの女性を思い、自分の恋心もまた散ったのだという悲しみが表れています。

【NO.6】

『 もろともに われをも具して 散りね花 うき世をいとふ 心ある身ぞ 』

【意味】私もろとも散ってはくれないか桜よ、私もこの世を辛いと思う身なのだよ。

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愛する桜が散っていく様子を見て春が終わる寂しさを感じ、感傷的な気分になったのでしょう。つい自分も、桜と一緒に散りたい、消えたいと願ったのかもしれません。

 

【NO.7】

『 花散らで 月は曇らぬ よなりせば ものを思はぬ わが身ならまし 』

【意味】桜が散らず、月が曇ることもない世の中だったなら、私は何も思うこともなかっただろうに。

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実際には桜は散り、月には雲がかかります。だから悩んだり、辛かったりする気持ちはなくならない。でも、そうでなかったら良かったのになと思う、心の呟きを歌にしたものです。

【NO.8】

『 ともすれば 月すむ空に あくがるる 心の果てを 知るよしもがな 』

【意味】ともすれば月が住む澄んだ空に憧れてしまう。心の行きつく先が分かったならな。

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澄んだ月が美しくて、夜空に心が吸い込まれてしまいそうだ。月に奪われた私の心はどこへ行きつくのだろう、という歌です。第五句の「もがな」は願望を表し、「行き先が分かったなら良いのにな…」という意味になります。

【NO.9】

『 よもすがら 月を見顔に もてなして 心の闇に まよふ頃かな 』

【意味】夜の間ずっと、月を見るような顔をしているけれど、心は闇に迷っているのだ。

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月を見ながらも自分の心の中に月は無く、心の闇を照らしてくれるものはありません。この歌は恋心を詠んだもので、恋に悩んで夜を明かす様子が表現されています。

【NO.10】

『 風になびく 富士の煙の 空に消えて 行方も知らぬ わが思ひかな 』

【意味】風になびいて富士山の煙が、行方も分からずに空に消えていく。私の思いも同じように漂うのだ。

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行くあてもない心、どこへ向かうのかも分からない自分を、空にたなびく煙にたとえています。心細い気持ちや孤独な心が垣間見えます。

西行の有名和歌【11〜20首

【NO.11】

『 花見にと 群れつつ人の 来るのみぞ あたら桜の とがにはありける 』

【意味】お花見に沢山の人が集まって来るところだけは、惜しくも桜の罪だなあ。

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今も昔も人々はお花見に集まりますが、西行は一人で静かに桜を見つめていたかったのでしょう。桜はそこだけが難点なんだよな、という歌です。

【NO.12】

『 うちつけに また来む秋の 今宵まで 月ゆゑ惜しく なる命かな 』

【意味】すぐにまた次の秋が来るだろう、その名月が見たくて命が惜しくなるよ。

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中秋の名月を見て、また来年もその月を見たいから生きたくなるという歌です。そう思わせる程に「今宵」の月は美しいのだという感動を表しています。

【NO.13】

『 すぎてゆく 羽風なつかし 鶯よ なづさひけりな 梅の立枝に 』

【意味】鶯(うぐいす)が飛び立っていき、梅の香りに心が動くよ。鶯よ、梅の枝に親しんでいたのだね。

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「羽風」は鳥の羽ばたきが起こす風のことで、わずかな空気の動きです。しかし西行は、梅の枝にじゃれるようにして止まっていた鶯が、羽ばたきで梅の香りを送ってくれたように感じたのかもしれません。

【NO.14】

『 道の辺に 清水流るる 柳陰 しばしとてこそ 立ちどまりつれ 』

【意味】道の途中で清水が流れている柳の木陰があった。少しだけ休もうと思って立ち止まってしまった。

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暑い夏の道で、きれいな水の流れる柳の木陰を見つけたのでしょう。涼しげな様子に足を止めたという歌です。第四句の「こそ」は逆説の意味を持ちます。木陰にはついつい長居をしてしまったのでしょう。

【NO.15】

『 何となく 春になりぬと 聞く日より 心にかかる み吉野の山 』

【意味】何ということもないが、春めいてきたと耳にしてから吉野の山が気にかかるのだ。

短歌職人
春になってきた、そろそろ桜が咲き始めるのでは?とそわそわした気分を詠んでいます。西行は春になるたび吉野山へ出かけていたので、今年も準備をしなくてはと思っていたかもしれません。

【NO.16】

『 心なき 身にもあはれは 知られけり しぎ立つ沢の 秋の夕暮れ 』

【意味】風流を捨てた身であっても心が動かされるよ。鴫(しぎ)の飛び立つ沢の秋の夕暮れには。

短歌職人
「心なき」は俗世から離れて、感情を捨てていることを表します。そんな自分でも夕暮れの空を背景に鴫が飛び立つ様子を目にして秋を感じ、しみじみと感動したという歌です。

【NO.17】

『 つねよりも 心ぼそくぞ 思ほゆる 旅の空にて 年の暮れぬる 』

【意味】いつもよりも心細く感じるのだ。旅の途中で年が暮れるのは。

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いくら旅慣れていても、心細い思いをすることもあります。旅の途中で年を越すことを思えばなおさらでしょう。冬は日の落ちるのも早く、寂しさや心細さもひとしおだったでしょう。

【NO.18】

『 恋しきを たはぶれられし そのかみの いはけなかりし 折の心は 』

【意味】恋心を戯(たわむ)れとされたその昔の、幼かった心がなつかしい。

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「いはけなかりし」とは幼かった、未熟だったという意味です。恋心を戯れだと人にからかわれた昔の、一途だった自分の恋を懐かしく思う晩年の歌です。

【NO.19】

『 仏には 桜の花を たてまつれ わが後の世を 人とぶらはば 』

【意味】私が死んだら桜の花を供えてほしい。私を弔ってくれる人がいるのならば。

短歌職人
桜を愛した西行らしい歌です。私を弔う時、思う時には、私が桜を愛していたことと共に思い出して欲しい。皆の記憶の中で私は桜と共にありたいのだと言っているように感じられます。

【NO.20】

『 願はくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月のころ 』

【意味】願わくは春の桜の下で死にたい。如月の満月の頃に。

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満月の夜に愛する桜の花の下で。美しい構図です。如月は2月の旧名で、旧暦の2月にお釈迦様が入滅したと言われています。西行は僧ですから、お釈迦様と同じように春にこの世を去りたいと思ったのでしょう。そして実際西行は旧暦2月に亡くなっています。

 

以上、西行が詠んだ有名和歌20選でした!

 

 

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今回は、西行が詠んだ和歌を20首ご紹介しました。
西行の歌は古典の和歌の中でも読みやすく、内容が分かりやすいものが多いので和歌の入門にもおすすめです。
西行の和歌をもっと読んでみたいという人は、西行の和歌集である「山家集」を鑑賞してみるのも良いでしょう。
また、鎌倉時代に書かれた「西行物語」には西行の生涯が和歌を交えて語られています。