【現代短歌の作り方】簡単にわかりやすく解説!ルールや言葉選びのコツ上手い例を紹介

 

短歌は、物事を5・7・5・7・7の31音で表現する定型詩です。

 

学校の授業で習った短歌や百人一首などを想像すると、難しいもののように感じるかもしれませんが、そのようなことはありません。

 

自分が感じたことを自分がもっている言葉で表現する「短歌」は、誰でも気軽につくることができます!

 

 

 

この記事では、短歌の基本的なルールと詠み方についてわかりやすく解説します。

 

「短歌をつくってみたいけれど、よく分からないな・・・」「俳句のように、短歌にも決まりごとがあるの?」といった思いを持っている方は、ぜひ読んでみてください。

 

短歌職人
最後まで読むと、きっとすぐに短歌を作りたくなりますよ!

 

現代短歌の作り方!簡単にわかりやすく解説

(1) まずは基本的なルールを知ろう

短歌は、自分が感じたことや思ったことを5・7・5・7・7の31音で表現する定型詩です。

 

この31音は「みそひともじ」と呼ばれます。短歌のルールは、実はこれだけといっても過言ではありません。リズムさえ守れば、使う文字や表現は問われませんし、俳句のように季語を入れる必要もないのです。

 

5・7・5・7・7と聞いて、「31文字で作ればいいのか!」と思う方もいるかもしれませんが、「文字数」ではなく「音の数」で数えます。

 

「音数」とは、読み上げたときの音の長さのことです。

 

例えば、「歩いた」は、「あ/る/い/た」と1音ずつ数えるので4音の言葉となります。文字数と音数は必ずしも同じになるわけではないので、次のような音には注意しましょう。

 

【促音(はねる音「っ」)・長音(伸ばす音「―」)・撥音(「ん」)】

  • エレベーター →「え/れ/べ/え/た/あ」(6文字・6音)
  • スキップ →「す/き/っ/ぷ」(4文字・4音)
  • しんごう →「し/ん/ご/う」(4文字・4音)

【拗音(小文字「ゃ・ゅ・ょ」)】

  • あかちゃん →「あ/か/ちゃ/ん」(5文字・4音)
  • 中華料理 →「ちゅ/う/か/りょ/う/り」(8文字・6音)

【英単語や英文・アルファベット】

  • LOVE →「ら/ぶ」(4文字・2音)
  • ABC →「え/―/び/―/し/―」(3文字・6音)

【ローマ字・英文字の略語】

  • TAKARA →「た/か/ら」(6文字・3音)
  • SF →「え/す/え/ふ」(2文字・4音)

【記号(!・?・…・「」など)】

  • わあ! →「わ/あ」(3文字・2音)
  • 「おはよう」と →「お/は/よ/う/と」(7文字・5音)

※記号は基本的には音数に数えませんが、+・-・∞・♪などは、音数に数える場合と数えない場合があります

 

このように書くと、少し難しく感じるかもしれませんが、要するに「音読した時の音の数」を数えればいいのです。

 

短歌職人
音数を数えるときは、声に出して読んでみるのが確実です。それでも分かりづらいときは、声に出して読みながら一音ずつ手を叩くと分かりやすいです。

 

(2) 題材探しとことば集め

さあ短歌をつくるぞ!と思っても、「一体何について詠めばいいのやら…?」と考えてしまう人もいるでしょう。

 

そういう人は、まず自分の身の回りをゆっくり眺めてみましょう。また、心の中や頭の中をそっと覗いてみましょう。

 

例えば、次のようなものが題材として見つけられるので、参考にしてみてください。

 

【日常の光景から】

例えば今、机の上にグラスがあって、氷が浮かんでいるとします。その氷が窓から指す光に照らされてキラキラと光っている…また、そのグラスを家族の誰かが持ってぐびぐびと飲み物を飲む… こんな何気ない光景でも、短歌の立派な題材になりますね。

【人や何かを想う気持ちから】

今一緒に過ごしている人、遠くにいて会えない人など、誰かを想う気持ちも素敵な題材になります。古来から、恋の歌は短歌のメインテーマのひとつでもあります。恋愛に限らず、友達や家族への思いも題材になりますね。

【五感から】

目で見ていること以外にも、音や味など五感で感じたことに着目するのも面白いです。どこかの家の夕食のにおい、雪を触った冷たさ、聞こえてきた風の音…感じる心さえあれば、さまざまな切り口を見出すことができますよ!

 

とは言え、そもそも短歌は自分の思いや考えを表現するものですから、〈短歌を作るために題材を探す〉のではなく〈題材を見つけたから短歌を作る〉というほうが自然なのかもしれません。

 

まずはいつも通り生活する中で、「あ、これを短歌で表してみたいな」というものに出会いましょう。ポイントは、『普段よく目にしているけれど言葉にしていないこと』に気付くことです。

 

短歌職人
また、題材を探すのと同時に、日常の中で心に残った表現や思いついた言葉があればメモしておきましょう。
言葉や表現はいつのまにか消えてしまうもの。その時その時に書き留めておかないと、忘れてしまうことがほとんどです。

 

【例】

ラムネの瓶の中のビー玉を見て、取り出したいなと思って試行錯誤した幼少期を思い出した。見えているのに、取れそうで取れない。だからこそ余計に欲しくなる。そんな気持ちを詠んでみたいと思った。

【メモ】ラムネ・〇〇円(税込)・瓶・ビー玉・取りたい・見えているのに取れない・〇月×日・瓶を壊すか?・夏の日・太陽に照らされて光る・きらめき… など

 

(3) 歌の中心を決め、まずは詠んでみよう

いよいよ短歌にしていこうというとき、まずは歌の中心となる『気持ち・想い』を決めましょう。

 

これは歌の根っことなるものです。読者に伝わる短歌にするためにも、一つの歌の中に複数の話題が含まれないようにしましょう。自分が「このことが詠みたいんだ!」という『気持ち・想い』を一つ、格として定めます。

 

詠みたい想いが決まったら、集めた言葉をもとに5・7・5・7・7のリズムに入れてみます。

 

【例】

ビー玉を/取り出したくて/出せなくて/見えているから/より欲しくなる

(※『見えているから余計に欲しくなる』ということを中心にしたい)

 

短歌職人
思ったことをそのまま当てはめていった形なので、まだまだ散文的で独自性もありません。しかし、「とりあえず詠んでみる」ということが大切なので、まずは気にせず言葉にしてみましょう。

 

(4) 独自の視点を取り入れよう

歌の中心が決まったら、自分ならではの視点で見つめてみましょう。

 

どんな状況にあるのか、どんな意味を持つのか。場合によっては、ここでフィクションを取り入れて脚色するのも良いですね。

 

実体験しか詠んではならないなんてルールはありませんから、発想を広げて歌に「独自性」をもたせましょう。

 

【例】

見えているのに取り出せない、だから余計に欲しくなる…という思いが、片思いのときの恋心のようだと思った。また、届きそうで届かない目標(夢)に対する気持ちのようでもある。ラムネ瓶のビー玉をそんな気持ちの例えに使ってみてはどうか。

取り出せない/ビー玉のよう/見えていて/触れられないと/より欲しくなる

 

短歌職人
ビー玉のことから、恋心(あるいは目標へ向かう心)に歌の世界が広がってきました。
話題が変わったのでは?と思う人もいるかもしれませんが、『見えているから余計に欲しくなる』という中心の想いはそのままですよね。
中心となる想いさえぶれなければ、想像を広げるのは自由です。

 

(5) 推敲してより良いものに

短歌が一旦まとまるとそこで満足してしまいがちですが、より良くするためには「推敲(すいこう)」が欠かせません。

 

あと一歩の努力が素敵な作品の完成につながります。具体的には、次のような作業です。

 

  • 間違った文法があれば正す
  • 効果的な語順に変える
  • よりよい言葉はないか考える
  • 文脈を整理する

【例】

  • ビー玉だけだと何のことか伝わらない人もいるかも
  • 字余りが気になるから文語にしてリズムよくしようかな
  • 終わりに力強さが欲しいから言いきりの形にしよう

 

ラムネ瓶の/ビー玉のよう/見えていて/触れられぬから/欲しくなるのだ

 

最初に比べると、ずいぶん歌の雰囲気が変わってきました。ことばを整えるときには「象徴的な言葉を入れ」「削る箇所を見極める」ということを意識しましょう。

 

短歌職人
印象に残る言葉が入っていると、読者の心にも歌が残ってくれそうですね。また、思いついた言葉や表現はあれもこれも…と入れたくなりますが、すっきりと分かりやすい歌になるよう、思い切って削ることも大切です。

 

(6) もうワンランク高めるには

さらに推敲を極めていくならば、次の点に着目してみましょう。

 

【共感性と意外性】

短歌を詠むときに大切な感覚とされているのが、『共感性』と『意外性』です。

「その気持ち、わかるなぁ」という『共感性』と、「そんな視点で見たことはなかった!」という『意外性』がどちらも入っていると、読み手を感嘆させる短歌になります。

『共感性』だけが大きいとどこかで見たようなつまらない歌になってしまい、『意外性』だけを追求すると「意味が分からない」と言われてしまいます。

この両方をバランスよく含む短歌を目指しましょう。

【具体的な情景を入れる】

景をもたない短歌は読者がイメージしづらいため、すぐに忘れられてしまいます。具体的な情景を描き、読者が映像を思い浮かべられるようにしてみましょう。

【心情をにじませる】

嬉しい、悲しいなどの感情をそのまま言葉にするのではなく、風景や現象や物にその気持ちをにじませてみましょう。

心が空っぽになるような虚しさを「空き缶」に例えたり、飛び上がりたくなるような嬉しさを「ポップコーン」に例えたり…、ただ文字で心情を書くよりもより気持ちが伝わる歌になりますね。

【季語や表現技法を使う】

そもそも短歌に季語は必要ありませんが、使ってはいけないというわけではありません。

情景を思い浮かべやすくするために取り入れるのも一つの手です。

また、歌の句切れの部分に「切れ字」を置いたり、「体言止め」を用いてみたりと、表現技法を取り入れても良いでしょう。

31音で歌うという短歌のルールはシンプルですが、盛り込める表現技法はたくさんあります。興味のある方は調べてみてくださいね。

 

知っておきたい!おすすめ現代短歌【3選】

 

短歌職人

「君にサラダの味を褒められたのが嬉しくて、その日をサラダ記念日にしよう!と思った」という、なんとも可愛らしい歌です。「君」は恋人でしょうか。手作りの料理を褒められたことへの嬉しさが伝わってきます。この歌の「君」は家族や友人ととることもできます。

ちなみに作者の俵万智さんは、この歌ができたときのエピソードを「本当は唐揚げを褒められたのだけれど、サラダに変えて詠んだ」と話しています。出来事を事実のまま詠むのも良いですが、より気持ちが伝わりやすいように少し脚色するのも良いですね。

 

短歌職人

「冷蔵庫を開けて卵置き場に涙が落ちたのを見て、自分が泣いていることに気付き、本当に自分の涙なのかと思っている」という歌です。何か悲しい出来事があって、それでも強がって平気な顔をしていたのでしょうか。意識的に気付いていないふりをしていたのかもしれません。冷蔵庫を開け、落ちた涙を見て初めて自分が泣いていることに気付いたようです。涙が落ちたのが卵置き場というあたりも、情景がリアルに想像できて良いですね。卵の殻の上に落ちたのか、卵がないところに落ちたのか…そんな想像一つでも、捉え方が変わってきます。

 

【NO.3】木下龍也

『 つむじ風、ここにあります 菓子パンの袋がそっと教えてくれる 』

短歌職人

「つむじ風がここで吹いていますよ、と菓子パンの袋が(動いていて)そっと教えてくれる」という、日常の何気ない風景を詠んだ歌です。風は目に見えません。菓子パンの袋がないと、そこにつむじ風が吹いていることには気付かないのです。歌の中ではつむじ風と菓子パンの袋との関係性は描かれていませんが、「風に乗って袋がくるくる動いているのだな」ということが読み取れます。文字として表されていなくても、読み手の脳内で補完されて想像できてしまうというのは面白いですね。

 

さいごに

 

この記事では、短歌の基本的なルールと詠み方について解説しました。

 

日常のどんな風景でも、どんな気持ちでも歌にすることができます。出来上がった作品に正解・不正解はありません。

 

それが短歌の魅力です。素敵だと思える短歌を作れたとき、きっと「短歌って楽しい!」と思うことでしょう。

 

短歌職人
まずは気楽に、短歌づくりにチャレンジしてみてくださいね!