11月は初旬に立冬があり、地方によっては初雪が観測される月です。
昼間の気温も一気に下がるため秋の終わりと冬の訪れを意識して、冬支度にとりかかるという家庭も多くあるでしょう。そのため、11月をテーマにした短歌にも、晩秋と初冬の情緒を詠み込んだものが多く見られます。
どんぐりの青きひとつが落ちてゐる写メール届きたれば秋なり/冨樫由美子(11月10日よみうり文芸秋田版、松平盟子選・入選) #tanka pic.twitter.com/bAIlipcwys
— とがし ゆみこ (@yumicomachi) November 9, 2015
こおってる
道ペンギンで歩くのね
11月とか少し笑える#短歌 #snow #tanka pic.twitter.com/mMCsIhq7u6
— rina (@rina_tea_time) November 25, 2016
今回は、そんな「11月」をテーマに一般の方が詠んだ短歌を20首紹介していきます。
11月に詠んだ一般おすすめ短歌ネタ集【前半10首】
【NO.1】
『 秋深し ドレスアップの こどもたち 飴を手に手に 笑顔でパチリ 』
「飴を手に手に」から七五三の歌だと分かります。着物の子供たちが神社で記念撮影するところを見かけて作者は11月だなと思い、晩秋を感じたのでしょう。親子で混みあう神社のにぎやかさが想像される微笑ましい歌です。
【NO.2】
『 消防の 注意が告げる 乾燥と 寒気とストーブ いざ冬支度 』
冬になると火災予防を呼びかける消防車を多く見かけます。消防車の鳴らす警鐘が聞こえてきて作者は「冬だな」と実感し、冬支度をしようと思ったのでしょうか。「いざ冬支度」という体言止めに「よし、やるぞ!」という冬支度への前向きさが表れています。
【NO.3】
『 立冬の オレンジの朝 冷えた風 薄い上着を 通り抜けゆく 』
【NO.4】
『 枯草に 光差し込み 緩やかに 心和まん 晩秋の夕 』
【NO.5】
『 よく晴れた 朝の空気は 冷たくて ふと思い立つ 今日は立冬 』
【NO.6】
『 忙しい 慌ててするは 冬支度 野山の色も 急に変わる 』
【NO.7】
『 風強く そば屋の門(かど)を くるくると 落葉転がる 今日は立冬 』
【NO.8】
『 手をつなぎ イチョウ並木を 散歩する 澄んだ青空 黄金色映ゆ 』
【NO.9】
『 空が澄み 雲は流れし 天高く 霜月凍え 来る冬音 』
【NO.10】
『 誰そ彼と 問う間もなくて 霜月の 夜の入り口 月はのぼりぬ 』
11月に詠んだ一般おすすめ短歌ネタ集【後半10首】
【NO.11】
『 晩秋は 無人の駅に すでに降(ふ)り ベンチの枯葉は 低き陽のなか 』
【NO.12】
『 初雪は 体温にとけ 儚くて 淡い冷たさ 冬の入り口 』
作者は初雪が降るのを見上げ、手や顔に落ちた雪が溶けて消えていくのを感じていたのでしょう。まだ積もる力のない初雪の儚さと、間もなくやって来る本格的な冬への予感が幻想的に描かれています。
【NO.13】
『 夕焼けに 初雪サイン 探す我 なにを語るか この雲行きは 』
【NO.14】
『 霜月の 月を数えて 紅葉狩り 凍てつく風に もみじ赫(あか)らむ 』
【NO.15】
『 夜を籠めて 星ふる美空 ふり仰ぐ 愛しき人は 何をか祈らむ 』
【NO.16】
『 木枯らしが 淋しく叫ぶ 並木道 繋ぐ手の熱、心を癒す 』
「淋しく叫ぶ」に木枯らしの鋭い音が物悲しく響く様子が想像されます。その音に作者は寒々しく淋しい気持ちになったのでしょうが、つないだ手の温かさにほっとして、心が救われたように思ったのではないでしょうか。
【NO.17】
『 野の花は 季節先取り 冬支度 綿毛をまとい 秋晴れ楽し 』
「季節先取り」から、花が冬のオシャレを楽しんで秋晴れの中で得意気にしている姿が想像されます。何だかうらやましくなって、自分も冬のコートを用意しなければと思ってしまうような歌です。
【NO.18】
『 ひらひらと 舞踊り落つ 黄金の葉 過ぎゆく秋を 惜しむかのよう 』
「黄金の葉」はイチョウを表現しているのでしょう。イチョウの葉が落ちる様子を擬人法を使って軽やかなダンスのように見せています。行く秋を惜しむ気持ちをイチョウに投影した綺麗な歌です。
【NO.19】
『 はんぶんこ キミはアタマで 僕しっぽ 木枯らしすらも ぬるく思へし 』
たい焼きを半分こにしたのでしょう。「僕しっぽ」に「キミ」への優しさが表れています。二人でいれば木枯らしも寒くないという仲の良さが感じられる、読み手まで温かな気持ちのする一首です。
【NO.20】
『 真っ白な サザンカそっと 唇に 添えてあなたを 思い出す冬 』
サザンカは11月を代表する花の一つです。「真っ白な」が雪景色を思わせ、サザンカとともに冬をイメージさせますが、「唇に」には熱を感じます。冬の冷たさと熱い愛情が対比となっていて「あなた」への想いの強さをを思わせる歌です。
以上、11月について詠んだオススメ一般短歌集でした!
今回は「11月」をテーマに詠んだ一般短歌を20首紹介しました。
11月は急に寒くなったり日が短くなったりと、季節の移り変わりに気が付くことが多くあります。皆さんもぜひ、季節の変わり目に感じたことを短歌で表現してみましょう。
また、木枯らし、イチョウ、立冬、初雪など、11月からイメージされる言葉を短歌に詠み込むのもおすすめです。