【冬の有名短歌30選】近代(現代)短歌から昔の歌人の句(和歌)まで!!徹底紹介!

 

みなさんは有名な冬の短歌といえば、どんな短歌を思い出しますか?

 

冬の風物詩や風景、寒さの伝わる歌、心の温まる歌など、長い年月の間にさまざまな歌が詠まれてきました。

 

歌人の個性や時代の違いで、同じ冬が舞台でも、いろいろ違った味わいがあります。

 

今回は冬をテーマにした有名和歌と近代・現代の有名短歌をご紹介します。

 

短歌職人
まだ短歌が和歌と呼ばれていた頃の作品から現代の有名な短歌まで、色々なものがありますので、ぜひお気に入りの一首を見つけてくださいね。

 

冬の有名短歌(和歌)集【昔の短歌(和歌) 15選】

 

まずは、有名な昔の冬の短歌をピックアップしてご紹介します。

 

【NO.1】山部赤人

『 田子の浦に うち出でて見れば 白妙に 富士の高嶺に 雪は降りつつ 』

意味:田子の浦の眺めの良いところに出て彼方を見つめると、真っ白な富士山の頂上には今も雪が降り続いていることだ

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この歌は、『小倉百人一首』の4首目に選出されている和歌(当時は短歌のことを和歌と言っていました)です。

田子の浦とは、現在の静岡県駿河湾に注ぐ富士川のことを言います。作者の山部赤人(やまべのあかひと)は奈良時代の宮廷歌人です。身分は低かったようですが、優れた歌を多く詠み、柿本人麻呂と並んで“歌聖”と呼ばれています。

 

【NO.2】藤原定家

『 駒とめて 袖うちはらふ かげもなし 佐野のわたりの 雪の夕暮れ 』

意味:乗っている馬を止めて、袖にふりかかった雪を払い落とそうとするが、物陰も見つからない。雪の降りしきる佐野の夕暮れよ

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藤原定家は『小倉百人一首』の選者であり、平安時代末期から鎌倉時代初期に活動した公家のひとりです。この歌は本歌取りと言う、有名な歌の一句または二句を自分の歌に取り入れて作歌を行う技法が用いられています。

 

【NO.3】中納言家持

『 かささぎの 渡せる橋の おく霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける 』

意味:天の川にちらばる霜のようにさえざえとした星の群れの白さを見ていると、夜もふけたのだなあと感じてしまうことだ

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『小倉百人一首』6首目に選出されている歌です。かささぎのわたせる橋、というのは、天の川にかかる橋のことで、七夕の日に織姫と彦星が出会うためにかけられるそうです。

作者の中納言家持(ちゅうなごんやかもち)は三十六歌仙のひとりにも選ばれている、奈良時代後期の歌人です。「万葉集」の中には大伴家持の作った和歌が473首も収録されています。

 

【NO.4】柿本人麻呂

『 東の 野にかぎろいの 立つ見えて かえり見すれば 月傾きぬ 』

意味:東の野に陽炎(かげろう)が立つのが見えて振り返ってみると、月は西に傾いてしまった

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柿本人麻呂は飛鳥時代の歌人で、歌聖と呼ばれるほどの高名な人物です。

和歌の名人を表す三十六歌仙のひとりにも選ばれており、和歌が上達するようにということから、人麻呂を神様として祀る神社も各地に建てられています。この歌は、天皇の即位を詠んだものであるとも言われており、立ち上る陽炎が新天皇を、傾く月が前天皇のことを表しています。

 

【NO.5】凡河内躬恒

『 心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどは せる白菊の花 』

意味:もし手折(たお)るならば、あてずっぽうに折ってみようか。真っ白な初霜が降りて見分けがつかなくなっているのだから、白菊の花と。

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『小倉百人一首』29首目に選出されている歌です。凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)は下級役人でしたが、三十六歌仙のひとりに選ばれており、紀貫之に並ぶ歌人として称されました。生没年は不明です。

“心あてに”とは、あてずっぽうに、という意味で、“置く”とはこの歌でいうと霜が降りる、という意味を指します。また、白菊の花という句と、折らばや折らぬという2つの句が倒置法になっています。

 

【NO.6】源宗于

『 山里は 冬ぞ寂しき まこりける 人目も草も かれぬと思えば 』

意味:山里は、ことさら冬に寂しさがつのるものだった。人の訪れもなくなり、草木も枯れてしまうと思うから。

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『小倉百人一首』28首目に選出されている歌で、この歌も本歌取りになっています。

冬の寂し気な様子がよく伝わってくる一首です。作者の源宗于は、天皇の孫でしたが、皇族という身分を与えられることはなく、臣下として朝廷に勤めていたそうです。そのため、自身の境遇を嘆く歌を多く詠んだと言われています。

 

【NO.7】清原深養父

『 冬ながら 空より花の 散りくるは 雲のあなたは 春にやあらむ 』

意味:冬なのに空から花が降ってくるのは、雲の向こう側は春なのだろうか

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この歌は古今和歌集に収録されています。空から花が降ってくる、というのは、雪のことを白い花に見立てているということです。寒い冬のさなかに、春の訪れを待ち遠しく感じている作者の気持ちを詠んだ一首です。

実は作者の清原深養父は、清少納言の曽祖父だと言われています。清少納言の家系は代々、優秀な歌人がいることで有名でした。

 

【NO.8】紀友則

『 雪ふれば 木ごとに花ぞ 咲きにける いづれを梅を わきて折らまし 』

意味:雪が降ると、どの木にも真っ白い花が咲いたように見える。これでは、どれを梅と区別して折ったらよいものか

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こちらも古今和歌集の中に入っている一首です。和歌や短歌の中では、雪を白い花に見立てる歌が多いように感じます。

作者の紀友則は、平安時代の歌人で、紀貫之のいとこです。三十六歌仙のひとりにも選ばれており、古今和歌集の選出にも携わりますが、完成前に亡くなってしまったようです。

 

【NO.9】西行法師

『 月を待つ 高嶺の雲は 晴れにけり 心あるべき 初時雨かな 』

意味:いつ月がのぼってくるだろうかと心待ちにしていたあの嶺を覆っていた雲も晴れた。この冬初めての時雨であるが、それは情緒を解する心があるからだろう

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西行法師は、平安時代末期から鎌倉時代に生きた歌人で、全国を旅しながら様々な歌を詠みました。花()と月をこよなく愛し、花と月を題材にした歌を多く詠んだと言われています。この句では、月や雲をまるで人間が行動しているかのように詠んでいる擬人法が使われています。

 

【NO.10】西行法師

『 さびしさに 堪へたる人の またもあれな 庵ならべむ 冬の山里 』

意味:私のように寂しさに堪えている人が他にもいればいいのだが。そうすればその人と家を並べてみたいものだ、この山里で

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こちらも西行法師の詠んだ一首です。山里、という名詞で結んだ体言止めという技法が使われています。ひっそりとした山里にある家の中で、ひとりきりで歌を詠む作者の姿が目に浮かんできます。

 

【NO.11】坂上是則

『 朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪 』

意味:夜が白み始めたころ、有明の月の光はこんなにも明るいのかと思ったが、それは吉野の里にふった白い雪の明るさだったことだ

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古今和歌集・百人一首第31番の歌です。夜明けに残っている月の光を、白い雪に例えている美しい一句です。

さえざえとした美しい景観が目に浮かぶようですね。月の光を白い雪に例えるというのは、中国の漢詩の中よく使われいた技法だったそうで、平安時代前期には、漢詩のモチーフを取り入れた歌がよく詠まれていたようです。

 

【NO.12】源兼昌

『 淡路島 かよう千鳥の 鳴く声に 幾夜目覚めぬ 須磨の関守 』

意味:冬の夜、淡路島から渡ってくる千鳥の鳴き声に、幾夜目を覚まさせられたことだろうか、須磨の関守は。

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百人一首第78番の歌です。淡路島とは兵庫県にある島のことで、日本最古の島だと言われています。須磨は同じく、兵庫県にある地名のことです。千鳥とは、冬の浜辺を象徴する鳥で、家族や友人を慕って鳴く鳥だと言われていました。

かつて須磨には関所があり、そこには関所の番人である関守たちがいました。作者の源兼昌は、かつては朝廷人でしたが出家し、歌を詠む際には兼昌入道と名乗っていたそうです。

 

【NO.13】齋藤茂吉

『 冬眠より さめし蛙が 残雪の うへにのぼりて 体を平ぶ 』

意味:冬眠から目覚めたばかりの蛙が、春になってもまだ残っている雪の上で、体を平たくし日向ぼっこをしている

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齋藤茂吉は、明治・大正時代の歌人で、「万葉集」を自由に駆使し、強い生命への欲求をうたった『赤光』という歌集が有名です。また、研究や評論の分野でも知られており、柿本人麻呂の研究では、学士院賞を受賞しました。

 

【NO.14】与謝野晶子

『 冬の夜も うすくれなゐの 紙のはし 散れる灯かげは 心ときめく 』

意味:冬の夜、ちらちらとゆれる灯影は、薄紅色の小さな紙切れが舞っているようで心がときめく

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与謝野晶子は大阪の和菓子屋の娘として生まれましたが、20歳の時から歌誌『明星』に短歌の投稿を始めました。やがて、明治を代表する歌人の1人として活躍していきます。彼女は、とても情熱的な恋の歌を詠むことで注目されていました。

 

【NO.15】若山牧水

『 こころよき 寝覚なるかも 冬の夜の あかつきの月 玻璃窓(はりまど)に見ゆ 』

意味:冬の寒さに心地よく目覚めれば、ガラス窓から夜明けの月が見えていた

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若山牧水は明治から昭和にかけて活躍した歌人で、生涯にわたって旅をしながら歌を詠んでいました。日本各地に、彼の歌碑が作られています。戦前の日本を代表する歌人のひとりです。

 

冬の有名短歌(和歌)集【現代短歌 15選】

 

ここからは、冬を題材にした現代の短歌についてご紹介していきます。

 

【NO.1】築地正子

『 背伸びして むらさき葡萄 採るやうに 冬の昴を 盗みたし今 』

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(すばる)とは星の名前で、6つの星が集まっているように見えるそうです。それを葡萄に見立てて、葡萄をもぎとるように星を盗んでしまいたい、と言っているロマンチックな一首です。

 

【NO.2】俵万智

『 「寒いね」と 話しかければ 「寒いね」と 答える人の いるあたたかさ 』

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短歌ブームを起こした歌集『サラダ記念日』の中の一首です。今やこの短歌は教科書にも載っていますね。冬の短歌の定番の一首と言えるのではないでしょうか。

 

【NO.3】俵万智

『 白菜が 赤帯しめて 店先に うっふんうっふん 肩を並べる 』

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白菜は冬を代表する野菜のひとつです。赤帯というのは、野菜にまかれたテープのことでしょう。おいしそうに収穫された野菜たちが、自信たっぷりに八百屋さんやスーパーに並んでいる風景が目に浮かびますね。

 

【NO.4】俵万智

『 母の住む 国から降って くる雪の ような淋しさ 東京にいる 』

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寒くなってくると、きっと誰もが人恋しさを覚えることでしょう。さみしさを“雪のような”と表現しているところが、冷えてしまった心を表しているようで、奥深さを感じます。

 

【NO.5】俵万智

『 たっぷりと 君に抱かれて いるような グリンのセーター 着て冬になる 』

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グリン(グリーン)のセーター、という言葉が、冬を表していてとても素敵な一首になっていますね。君に抱かれているような…というのは、本当に恋人のセーターを着ているのか、大きいサイズのセーターを着ているのか、どちらなのでしょう?一首の中にたくさんの想像が広がっておもしろいですね。

 

【NO.6】窪田空穂

『 東京へ 帰るとわれは 冬木原 つらぬく道の 深き霜ふむ 』

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戦争中に東京から地方へ疎開していた作者が、冬になって東京へ戻ろうとしたときに詠んだ一首です。第二次世界大戦が終戦したのは夏でした、そこからすぐに故郷へ帰れるわけではなく、気づけば冬を迎えていたのでしょう。まるで東京に帰ってからの厳しい生活を暗示しているかのように、冬の景色や寒さが描かれていますね。

 

【NO.7】飯田有子

『 雪まみれの 頭をふって きみはもう 絶対泣かない 機械となりぬ 』

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何があったのかはわかりませんが、理不尽な状況におかれていた“きみ”が、もう決して泣かないと決意した瞬間を切り取った一句です。“きみ”が強い意志を持って、まるで機械になったかのように決然をした表情をしているところが想像できる気がします。

 

【NO.8】寺山修司

『 売られたる 夜の冬田へ ひとり来て 埋め行く母の 真っ赤な櫛を 』

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作者の寺山修司は青森県の出身で、家族とは複雑な関係にあったようです。なにか事情があって田畑を手放すことになってしまったのでしょうか、もう自分たちのものではないその田んぼに、母の櫛を埋める、という行為が、家族や今までの自分との訣別のように感じられます。

 

【NO.9】佐々木幸綱

『 泣くお前 抱けば髪に 降る雪の こんこんとわが 腕に眠れ 』

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こんこん、という擬音が美しい一首です。泣いている恋人に寄り添っていると、雪がしずかに降ってきたのでしょう。恋人も雪も、みんなあわせて自分の腕の中で抱き留めてあげようとしている、作者の優しい気持ちが詠まれています。

 

【NO.10】穂村弘

『 ハロー夜。ハロー静かな霜柱。ハロー カップヌードルの海老。 』

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一瞬、「え?これって短歌なの?」と驚いてしまう方も多いかも知れません。短歌の中に句読点をふっているというのは斬新な技法ですよね。ですが、声に出して読んでみると、きちんと31音の短歌の形式で詠まれているのがわかります。とてもインパクトのある一首です。

 

【NO.11】穂村弘

『 目覚めたら、息真っ白で、これはもう、ほんかくてきよ、ほんかくてき 』

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続いて、こちらも穂村弘の詠んだ一首です。歌の中では一言も書かれていませんが、なにが“ほんかくてき”なのかは一目瞭然ですよね。

そう、冬の寒さが“ほんかくてき”ということなのです。作者は、“息真っ白”という言葉だけを使って、冬の寒さを表しています。

 

【NO.12】笹井宏之

『 雪である ことを忘れて いるような ゆきだるまから もらう手ぶくろ 』

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ゆきだるまが雪であることを忘れる、というのはどういうことなのでしょう。まるで人間のように豊かな表情をしているということなのでしょうか。想像が広がりますし、全体的にとても優しい雰囲気のある歌ですね。

 

【NO.13】笹井宏之

『 さよならが 機能をしなく なりました あなたが雪で あったばかりに 』

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こちらも笹井宏之の詠んだ歌です。笹井宏之は1982年生まれで、難病により寝たきりになってしまいます。

病床で短歌を詠み続け、その作品は高く評価されますが、26歳という若さで亡くなってしまいます。彼の作品は現在でも、多くの人の心を動かしています。

 

【NO.14】杉﨑恒夫

『 ああ雪が 降っていますね 来る明日は 品切れですと 神さまが言う 』

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杉﨑恒夫は86歳で亡くなった歌人ですが、この歌からは、静かに死を見つめている様子が伝わってきます。まるで、はかなく溶けてしまう雪と、自分の命とを重ね合わせているかのようにも思えます。

 

【NO.15】中畑智江

『 生と死を 量るふたつの 手のひらに 同じ白さで 雪は降りくる 』

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作者の中畑智江は、2012年に第5回中城ふみ子賞を受賞している新鋭歌人です。現代短歌というと、どうしてもくだけた口語文になってしまいがちなところを、中畑智子は文語体を徹底しているのだそうです。

作者はどんな想いで、生と死を量りにかけていたのでしょうか。思い悩む作者の手のひらに、雪が優しく落ちてくる様子が目に浮かびます。

 

以上、冬の有名短歌集でした!

 

短歌は遠い昔、飛鳥時代から詠み続けられてきました。

 

長い歴史の中で少しずつ形を変え、現在でも多くの方に親しまれています。

 

短歌職人
たくさんの短歌を詠んで、是非!あなただけのお気に入りの一首を見つけていただければ幸いです。
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