【11月の短歌(和歌)集 20選】おすすめ!!知っておきたい11月らしい有名作品を紹介!

 

11月と言えば、秋も深まり、厳しい冬へと向かっていく季節ですね。

 

11月をテーマに詠まれた短歌は、秋の終わりを感じ、冬の訪れを想って少しもの悲しい、心にじんわりと染み入る歌が多いのが特徴です。

 

また、人恋しさもいっそう強くなる季節ですから、恋しい人を想って詠まれた歌も多くあります。

 

時代が変わっても、秋の終わりになんとなく寂しさを感じる私たちの心は、変わらないのかもしれませんね。

 

今回はそんな11月のおすすめ短歌(和歌)をご紹介します。

 

短歌職人
ぜひあなたのお気に入りの短歌の探してみてください!

 

11月の有名短歌(和歌)集【昔の短歌(和歌) 10選】

 

ここからは、短歌がおこった飛鳥時代から江戸時代まで有名短歌&和歌作品をご紹介していきます。

 

【NO.1】凡河内躬恒(百人一首)

『 心当てに 折らばな折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花 』

意味:無造作に折ろうとすれば、果たして折れるだろうか。初霜が一面に降り、咲いている白菊の花とは見分けもつかなくなっているというのに。

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寒い朝、地面の上に降りる真っ白な霜と、その霜と同じくらいに真っ白な白菊の花。一面の霜に覆われた白菊の花は、たいそう美しいかと思います。その風景を、少しユーモアを織り交ぜて詠んだ一首です。

 

【NO.2】後京極摂政前太政大臣(百人一首)

『 きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む 』

意味:こおろぎがしきりに鳴いている、霜の降るこの寒い夜に、むしろの上に衣の片袖をひいて、私はひとり寂しく眠るのだろうか。

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この長い名前は作者の肩書で、実際の名前は九条良経(くじょう・よしつね)と言います。当時、“きりぎりす”と言えば、こおろぎや松虫など、秋の虫全般を指していました。

 

【NO.3】貞信公(百人一首)

『 小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば いまひとたびの みゆきまたなむ 』

意味:小倉山の美しい紅葉たち、もしあなたたちに心があるならば、もう一度行われるであろう行幸を待っていてくれませんか。

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行幸とは、天皇が外出することを指した言葉です。この歌は、作者が、時の天皇陛下に、小倉山の紅葉がどれほど美しかったのかを説明した際に詠んだ歌である、と言われています。作者の貞信公は、非常に敏腕な政治家として知られていたそうです。

 

【NO.4】猿丸太夫(百人一首)

『 奥山に もみぢふみわけ なく鹿の 声聞くときぞ 秋はかなしき 』

意味:奥深い山の中で、紅葉の葉を踏み歩きながら、妻を呼んでいる鹿の声を聴くと、この秋の寂しさがいっそう強くなることだ。

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当時、鹿の鳴く声は“つまごい”と言って、オスが恋人であるメスを求めていると言われていました。作者は恋人を求めて鳴く鹿の声を聴き、いとおしい人に会えぬ寂しさを募らせたと言われています。

 

【NO.5】和泉式部(和泉式部続集)

『 竹の葉に あられ降るなり さらさらに 独りは寝ぬべき 心地こそせね 』

意味:竹の葉に雹(ひょう。ここではあられと書いています)が降っている、さらさらと。だから、決して一人では寝る気持ちになれないことだわ。

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作者の和泉式部は、女房三十六歌仙の中の1人です。有名な著書には『和泉式部日記』などがあります。彼女は恋多き女性として有名で、この歌も、好きな男性が自分の元へやってくるのを願って詠んだ歌でしょう。

 

【NO.6】紫式部(新古今和歌集)

『 ふればかく うさのみまさる 世を知らで 荒れたる庭に つもる初雪 』

意味:年月が経ち、このように辛さだけが多くなった世の中を知らずに、荒れてしまった庭に積もる初雪よ…。

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作者の紫式部は『源氏物語』の作者として有名ですね。『源氏物語』を書いたことで成功を掴んだかと思いますが、そんな彼女にも、人知れず辛い思いがあったのでしょう。世の中のはかなさ、辛さを詠んだ一首です。

 

【NO.7】藤原家経(後拾遣和歌集)

『 もみぢ散る 音は時雨の ここちして こずゑの空は くもらざりけり 』

意味:紅葉が散る音は、時雨のような心地がしても、梢の上の空は、曇らなかったことだ。

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紅葉が一斉に散っていく音を聞いたことがありますか?ばさばさと大きな音を立てるので、作者の言うように、強い雨が降ったような音がするかもしれません。“時雨”とは主に秋から冬にかけて降る、降ったりやんだりする雨のことです。

 

【NO.8】源俊頼(散木奇歌集)

『 しぐるれば 夕くれなゐの 花ころも 誰がそめかけし 遠のたかねぞ 』

意味:時雨が降ったので、夕方の空の虹色のように、誰が染め上げてやったのだろうと思う、あの山の高嶺を。

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こちらも、時雨を詠んだ一首ですが、詠まれているのは、雨上がりの風景です。雨上がり、山の高嶺に虹がかかっていて、とても神秘的な風景ですね。その美しい風景を作り出したのは、一体誰なのでしょうか?

 

【NO.9】藤原俊成(新古今和歌集)

『 おきあかす 秋のわかれの 袖の露 霜こそ結べ 冬や来ぬらむ 』

意味:眠りにつかないで夜を明かすと、昨日の秋との別れをしめす袖の露()が、朝になって霜を結んでいる。いよいよ冬がきたのだなあ。

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袖を濡らしていた涙が、朝になって霜になっていたところから、秋との別れを感じ、冬の訪れを思う、というとても風情のある一首ですね。果たして作者が別れたのは、“秋”だけなのでしょうか?眠りにつかずに朝を迎え、袖は涙で濡れている…もしかしたら、作者が別れを告げたのは、秋だけではないのかもしれませんね。

 

【NO.10】藤原定家(出典不明)

『 よしさらば 四方の木枯らし 吹きはらへ 一葉くもらぬ 月をだに見む 』

意味:よし、四方からの木枯らしよ、吹き払ってくれ。せめて、曇っていない月だけでも見ていたいから。

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みなさんは、木枯らしというとどんなイメージを持ちますか?寒くて強くて、険しい、なんだか恐ろしいもののように感じるかもしれません。ところが、作者は、そんな木枯らしに、何もかも吹き払ってくれと命令しています。勇ましく、勢いのある一首ですね。ちなみに、作者の藤原定家は、『小倉百人一首』の選定者です。

 

11月の有名短歌集【現代/近代短歌 10選】

 

続いては、明治時代から現代までに詠まれた11月の短歌をご紹介します。

 

【NO.1】正岡子規(正岡子規歌集)

『 君と我 二人かたらふ 窓の外の もみぢの梢 横日さす也 』

意味:君と私が2人で語り合っている、窓の外に立つ紅葉の梢から、横日が射していることだ。

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作者の正岡子規は、33歳という若さでこの世を去りました。もの悲しい歌を多く詠んでいる一方、この歌のようにあたたかさを感じる作品も多く残しています。楽しく、幸せそうに語らう2人の側に、もみじの梢から横日が射しているという、とても平和で暖かな風景ですね。作者は自分の感情を詠んでいませんが、とても幸せであるということが伝わってきます。

 

【NO.2】正岡子規(正岡子規歌集)

『 奥山に 淋しく立てる くれなゐの 木の子は人の 命とるとふ 』

意味:奥深い山に、ひとり淋しく立っている赤いキノコは(毒があり)、人の命を奪うという。

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“くれなゐの木の子”とは、いわゆる毒キノコのことですね。毒キノコは怖いですが、この毒キノコを題材にするというところが、ユーモアがあっておもしろいと思います。

 

【NO.3】齋藤茂吉(赤光)

『 鶏頭の 古りたる紅の 見ゆるまで わが庭のへに 月ぞ照りける 』

意味:色あせてしまった鶏頭の赤い花がよく見えるまで、私の庭のそばに月明かりが照ってきていることだ。

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鶏頭(けいとう)とは、赤い花をつける植物の一種で、その花がまるで鶏のとさかに見えることから、そう名付けられています。そんな鶏頭の花は、秋に咲くと言われています。

 

【NO.4】土田耕平(出典不明)

『 仰ぎ見る 空の色さへ 澄みはてて 木枯らしの風 吹きにけるかも 』

意味:見上げた空の色さえ、澄み切ってしまったように、木枯らしが(強く)吹いていることだ。

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とても寒い木枯らしですが、寒い日の良いところは、空気が深く澄み切っているように感じられるところですよね。ぴんと張りつめた、空気の冷たさが伝わってくるような一首です。

 

【NO.5】長塚節(出典不明)

『 小春日の 庭に竹ゆい 稻かけて 見えずなりたる 山茶花の花 』

意味:小春日に、庭に竹をゆい、稻をかけて縛ったことで、山茶花(さざんか)の花が咲いていたのが見えなくなったことだ。

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小春日とは、11月頃のあたたかくて穏やかな日のことを言い、“稻”とは“稲”の旧漢字のことです。また、山茶花(さざんか)は椿の仲間で、晩秋から冬にかけて美しい花を咲かせます。まさにこの歌は、11月という季節にぴったりの一首ですね。

 

【NO.6】伊藤左千夫(出典不明)

『 塵塚の 燃ゆる煙の 目に立ちて 寒しこの頃 朝々の霜 』

意味:塵塚の、ごみを燃やしている煙が目にしみて、すっかり寒くなったこの頃には、朝になると霜が張っている。

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塵塚とは、ゴミ捨て場のこと。作者は朝、すっかり冷え込んだ秋の空気を感じながら、ゴミ出しをしていたのかもしれません。朝日に光る霜柱は、とてもきれいですよね。この歌からはそういった、些細な季節の移ろいを感じ取ることができますね。

 

【NO.7】与謝野晶子(晶子詩篇全集)

『 冬の神 もとどりはなち かけたまふ あとにつづきぬ 木枯らしの風 』

意味:冬の神様が、私の髪を結っているところを放って、かけてゆくようだ。その後に続くのは、木枯らしの風たちよ。

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“もとどり”とは、髪を頭の上に束ねた箇所のこと。冬の神がどのような姿をしているのかわかりませんが、結っていた髪がはらりと落ちてしまうところから、非常にスピーディーでやんちゃな神さまなのかもしれません。その後に続いて、木枯らしの風が強く吹きすさんでゆく様子が目に見えるようです。少し空想的で、ロマンチックな一首です。

 

【NO.8】若山牧水(出典不明)

『 貧しさを 嘆くこころも 年年に 移ろうものか 枇杷咲きにけり 』

意味:貧しさを嘆くその心も、次第に年月が経つにつれ変わっていくものなのだろうか。枇杷(の花)が咲いていることだ。

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作者の若山牧水は、生涯をかけて様々な場所を旅しながら、多くの短歌や俳句を詠みました。様々な地域で、色々な人と触れ合うことで、人生について達観することもあったのかもしれません。そんな作者の気持ちに寄り添うように、枇杷の花がそっと咲いているのが目に浮かびます。枇杷の花は11月頃、白くて小さな花を咲かせます。

 

【NO.9】島木赤彦(氷魚)

『 窓の外に 白き八つ手の 花咲きて こころ寂しき 冬は来にけり 』

意味:窓の外に、白い八つ手の花が咲いているのを見つけて、心寂しくなった。冬がやってくるのだ。

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八つ手の花は晩秋に咲く花で、小さな白い花を咲かせます。葉は20cmくらいの大きさで、“天狗のうちわ”と呼ばれるような独特の形をしています。この八つ手の花は、冬の訪れを知らせる花であると言われており、作者はこの花を見て、秋の終わりを予感し、心寂しくなったのでしょう。

 

【NO.10】俵万智(かぜのてのひら)

『 やわらかな 秋の陽ざしに 奏でられ 川は流れてゆく オルゴール 』

意味:やわらかな秋の陽ざしは、まるで音楽を奏でているかのよう、川の流れは秋の陽ざしが奏でたオルゴールみたいだ。

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作者の俵万智は、現代における“短歌ブーム”を巻き起こした第一人者で、デビュー作『サラダ記念日』はミリオンセラーになりました。おだやかな川の流れが、秋の陽ざしに水面をきらきらと光らせて、まるで音楽を奏でているかのような美しさを醸し出している、そんな一首です。

 

さいごに

 

今回は、11月の短歌(和歌)についてご紹介してきました。

 

和歌と呼ばれていた昔の短歌と、近代・現代の短歌では、11月という季節に関しても少し感じ方が違っているかもしれません。

 

そんな中で、秋の終わりになんとなくもの悲しくなるような感覚や、冷たい木枯らしを身体に受けている時の感じなど、時代が変わっても変わらない心の動きがあるかと思います。

 

赤く染まった紅葉が落葉していくとき、朝起きてみると霜が降りていたとき、小春日のように暖かい日に巡り合った時…あなたが心震えるのはどんな時でしょうか?

 

短歌職人
ぜひ心震える瞬間を逃さず、短歌として詠んでみてくださいね。