【短歌のルール 8つ】簡単にわかりやすく解説!季語や文字数•伸ばし棒•小文字•字余りなど

 

短歌は、物事を5・7・5・7・7の31音で表現する定型詩です。

 

短い文字数の中で表現するこの「短い詩」は、古代から1300年を経た現代でも多くの人々に親しまれています。

 

学校の授業で習った短歌や百人一首などを想像すると、難しいもののように感じるかもしれませんが、そのようなことはありません。

 

自分が感じたことを自分がもっている言葉で表現する「短歌」は、誰でも気軽につくることができます。

 

 

この記事では、短歌の基本的なルールについて簡単にわかりやすく解説します。

 

短歌職人
「短歌をつくってみたいけれど、よく分からないな・・・」「俳句のように、短歌にも決まりごとがあるの?」といった思いを持っている方は、ぜひ読んでみてください。最後まで読むと、きっとすぐに短歌を作りたくなりますよ!

 

短歌のルール8つ!簡単にわかりやすく解説

(1)基本は「五・七・五・七・七」

冒頭でも書いたように、短歌は物事を5・7・5・7・7の31音で表現する定型詩です。

 

日本では、古くから5音と7音を使って表現する方法が定着しており、多くの人が「ゴロがいい」「耳なじみがいい」と感じます。七五調、五七調などと呼ばれるものです。短歌もそのひとつで、5音と7音の繰り返しによって構成されています。

 

この31音は「みそひともじ」と呼ばれます。なぜ「文字」ではなく「音」なのかは、次の項で詳しく説明します。

 

(2)カウントは字数ではなく音数

短歌は「文字数」ではなく「音数」でカウントします。

 

「音数」とは、読み上げたときの音の長さのことです。

 

例えば、「食べた」は、「た/べ/た」と1音ずつ数えるので3音の言葉となります。文字数と音数は必ずしも同じになるわけではありません。

 

<促音(はねる音「っ」)・長音(伸ばす音「―」)・撥音(「ん」)>

  • エレベーター →「え/れ/べ/え/た/あ」(6文字・6音)
  • スキップ →「す/き/っ/ぷ」(4文字・4音)
  • しんごう →「し/ん/ご/う」(4文字・4音)

<拗音(小文字「ゃ・ゅ・ょ」)>

  • あかちゃん →「あ/か/ちゃ/ん」(5文字・4音)
  • 中華料理 →「ちゅ/う/か/りょ/う/り」(8文字・6音)

<英単語や英文・アルファベット>

  • LOVE →「ら/ぶ」(4文字・2音)
  • ABC →「え/―/び/―/し/―」(3文字・6音)

<ローマ字・英文字の略語>

  • TAKARA →「た/か/ら」(6文字・3音)
  • SF →「え/す/え/ふ」(2文字・4音)

<記号(!・?・…・「」など)>

  • わあ! →「わ/あ」(3文字・2音)
  • 「おはよう」と →「お/は/よ/う/と」(7文字・5音)

※記号は基本的には音数に数えませんが、+・-・∞・♪などは、音数に数える場合と数えない場合があります

 

このように書くと、少し難しく感じるかもしれませんが、要するに「音読した時の音の数」を数えればよいのです。音数を数えるときは、声に出して読んでみるのが確実ですね。

 

(3)字余り・字足らずも表現のひとつ

5・7・5・7・7の定型で詠むのが基本ではありますが、必ずぴったりでなければいけないということではありません。

 

定型よりも音数が多いものを「字余り」、少ないものを「字足らず」と言います。

 

<字余りの例>

飛び散った/人工衛星の9音)/かけらさえ/宇宙人には/地球の飾り (作者:松木秀)

<字足らずの例>

群がれる/蝌蚪(くわと)の卵に/春日さす/生まれたければ/生まれてみよ6音)(宮 柊二)

 

定型はできるだけ守ったほうが良いですが、「この言葉を使いたい」というときや「この思いを表すには、このリズムがしっくりくる」というときもあるでしょう。

 

作者が定型を意図的に崩したものを「破調」といいます。字余りや字足らずを効果的に使うことで、短歌の魅力が増すこともあります。

 

字余り・字足らずが気になったときは、まず声に出して読んでみましょう。よほどの違和感がなければ、特に気にすることはありません。

 

(4)句切れを意識しよう

「句切れ」とは、意味や調子のうえで切れ目になるところのことです。

 

句切れがあることで、歌全体の印象を変えたり、詠んでいるイメージをよりわかりやすく伝えたりすることができます。

 

<例> 作者:俵万智

別れ話を 抱えて君に 会いにゆくこんな日も吾は 「晴れ女」なり

 

「別れ話をしに君に会いに行く」で意味の上での句切れが入っています。句切れが入ると視点や話題などが変わります。テレビドラマでカメラがパッと切り替わるようなイメージです。

 

短歌は5・7・5・7・7それぞれのまとまりを、初句(1句)・2句・3句・4句・結句(5句)と呼びます。最初の5音で句切れが入ると「初句切れ」、5・7で句切れが入ると「二句切れ」といったように、句切れが入る部分によって呼び方が変わります。例に挙げた歌は「三句切れ」となります。短歌によっては句切れのないものや、一つの歌の中に複数の句切れがあるものもあります。

 

「お父さんが冷蔵庫からビールを出した」ということを表すとき、「お父さんが冷蔵庫を閉めた。その手にはビール。」のように視点を切ると、お父さんの「手」と「ビール」に焦点が当たります。短歌の句切れにもこのような効果があるのです。

 

(5)句またがりの効果

「句またがり」とは、一つの句(5音・7音)の中に言葉がおさまらず、次の句へまたがって続くことを言います。

 

独特のリズムを生み出したり、言い回しが読み手の印象に残ったりする効果があります。

 

<例> 作者:俵万智

ハンバーガー/ショップの席を/立ち上がる/ように男を/捨ててしまおう

 

短歌に独特のリズムを生む技法として、特に現代短歌では句またがりのある歌が多く見られます。必ずしも言葉を5音や7音の中におさめる必要はないということですね。

 

(6)係り受け

係り受けとは、「その文節二つが意味の上で結びついているときの状態のこと」です。これは短歌だけではなく、国語文法の一つとして存在する「関係」です。

 

二つの文節が意味の上で結びついているとき、前の文節が後の文節に「係る」、あとの文節が前の文節を「受ける」といいます。

 

<係り受けの例>

私はお菓子を食べた・・・「私は」→「食べた」という意味上のつながりがあるので、「私は」は「食べた」に係っています。また、「お菓子を」と「食べた」の間にも同様の関係があります。

 

短歌においては、句と句の間に係り受けの関係があります。短歌の中で、5・7・5・7・7それぞれの句がどこを受け、どこに掛かるのかを意識すると、歌全体のバランスが整えやすくなります。

 

(7)季語は必要?

5・7・5で表現する「俳句」では季語が必須とされていますが、短歌においては必ずしも入れる必要はありません。

 

「季節」を中心に詠む俳句と違い、短歌は「自分の気持ちや感じ方」を中心に詠むものだからです。季語に関するルールはありません。ですが、季節に関係する言葉を使うことは自由です。

 

また、俳句を詠むときには、同じ句の中に複数の季語がある「季重なり」を避けるほうが良いとされています。短歌を詠むときにはあまり気にする必要はありませんが、「短歌でも季重なりは避けるべき」と考える人もいます。

 

  • 季語が2つあることで、焦点がぶれてしまう
  • 夏と冬など真逆の季語が入ると、詠み手に意味が伝わりづらくなってしまう

 

このような理由から、あえて避けているようです。

 

ですが、あくまでも「避ける人もいる」というだけで、決まりではありません。前述したとおり短歌においては季語のルールはありませんので、難しいことは気にせず好きな言葉を使って詠むことをおすすめします。

 

(8)口語や文語・仮名づかいは自由!

「短歌」「俳句」と聞くと、百人一首や万葉集などの古典的な言い回しを想像するかもしれません。

 

短歌は1300年もの歴史があるので、有名な歌には、古語や古典的な言い回しを含むものもたくさんあります。しかし、表現に何か決まりがあるわけではありません。

 

<口語(話し言葉)で詠む>

  • 文法に悩まず作ることができる
  • 意味が取りやすい
  • 生の感情を乗せやすい
  • 軽やかさや躍動感がでる

<文語(書き言葉)で詠む>

  • 情感豊かに詠むことができる
  • きめ細やかな感情の描写ができる
  • 語尾のパターンが多く、使い分けが楽しめる

<旧仮名づかい(歴史的仮名づかい)で詠む>

  • 優美で古典的な雰囲気になる
  • 意味を取るのに時間がかかるが、その分奥行きのある歌となる

<新仮名づかい(現代仮名づかい)で詠む>

  • シャープで軽やかな印象になる
  • 日常的に使う言葉なので、生活になじんだ歌ができる
  • 意味を取りやすく、共感や感動を生みやすい

 

それぞれにメリットがあるので、自分が表現したい思いに合った表し方を選びましょう。

 

とは言え、短歌は自分の思いや感情を表現するものですから、まずは、「自分が普段使っている言葉や言い回し」で詠んでみるのが一番です。その上で、必要があれば口語・文語・仮名づかいなどを変えてみる良いでしょう。

 

知っておきたい!おすすめ短歌【3選】

 

長い歴史の中に名作はたくさんありますが、今回は意味が分かりやすい「現代短歌」を3つご紹介します。

 

【NO.1】俵万智

『 「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 』

短歌職人

「君にサラダの味を褒められたのが嬉しくて、その日をサラダ記念日にしよう!と思った」という、なんとも微笑ましく可愛らしい歌です。「君」は恋人でしょうか。手作りの料理を褒められたことへの嬉しさが伝わってきます。この歌は、「君」を家族や友人ととることもできます。

ちなみに作者の俵万智さんは、この歌ができたときのエピソードを「本当は唐揚げを褒められたのだけれど、サラダに変えて詠んだ」と話しています。出来事を事実のまま詠むのも良いですが、より気持ちが伝わりやすいように少し脚色するのも良いですね。

 

【NO.2】穂村弘

『 ほんとうにおれのもんかよ 冷蔵庫の卵置き場に落ちる涙は 』

短歌職人
「冷蔵庫を開けて卵置き場に涙が落ちたのを見て、自分が泣いていることに気付き、本当に自分の涙なのかと思っている」という歌です。何か悲しい出来事があって、それでも強がって平気な顔をしていたのでしょうか。落ちた涙を見て初めて自分が泣いていることに気付いたようです。「ほんとうにおれのもんかよ」という上の句から、自分の意志とは裏腹に涙がこぼれ落ちたことが分かります。涙が落ちたのが卵置き場というあたりも、情景がリアルに想像できて良いですね。卵の殻の上に落ちたのか、卵がないところに落ちたのか…そんな想像一つでも、捉え方が変わってきます。

 

【NO.3】木下龍也

『 つむじ風、ここにあります 菓子パンの袋がそっと教えてくれる 』

短歌職人
「つむじ風がここで吹いていますよ、と菓子パンの袋が(動いていて)そっと教えてくれる」という、日常の何気ない風景を詠んだ歌です。風は目に見えません。菓子パンの袋がないと、そこにつむじ風が吹いていることには気付かないのです。歌の中ではつむじ風と菓子パンの袋との関係性は描かれていませんが、「風に乗って袋がくるくる動いているのだな」ということが読み取れます。文字として表されていなくても、読み手の脳内で補完されて想像できてしまうというのは面白いですね。

 

さいごに

 

この記事では、短歌の基本的なルールについて詳しく解説ました。

 

定型や、音数の数え方の決まりはありますが、短歌は「自由に表現して良いもの」です。

 

思ったこと、考えたこと、日常の中の一コマ…、短歌の題材は生活の中にたくさんあります。

 

短歌職人
「短歌にできそう!」という気持ちや出来事に出会ったら、自分らしい言葉で、自分らしい表現で気軽に詠んでみてください!