皆さんは、雨に関する短歌についてどのようなイメージを持っていますか。
雨は多くの歌謡曲や小説でも題材になるように雰囲気や人の感情を表現するのによく利用されます。
雨といえば悲しい表現が多く見受けられますが、短歌においてはどのような表現に使われるのでしょうか。雨は季節を象徴するものも多くあり、季節によっても印象が違いますよね。
今回は、「雨」に関する有名短歌と素人オリジナル短歌をご紹介します。
ひ短歌作りの参考にしてみてください!
雨に関する有名短歌【おすすめ10選】
【NO.1】川辺東人
『 春雨の しくしく降るに 高円(たかまと)の 山の桜は いかにかあらなむ 』
意味:春の雨がずっと降りつづいているが、高円の山の桜はどうなったのでしょう。
【NO.2】詠み人知らず
『 ひさかたの 雨も降らぬか 雨障(あまつつ)み 君にたぐひて この日暮らさむ 』
意味:雨でも降らないだろうか。そうしたら出かけずにあなたと寄り添って今日を過ごしたい。
【NO.3】赤染衛門
『 虎に乗り 古屋を越えて 青淵(あおふち)に 蛟竜(みずち)捕り来む 剣太刀(つるぎたち)もが 』
意味:五月雨のやんだ空に対して、私の涙は晴れることがない。
【NO.4】寂連法師
『 村雨(むらさめ)の 露(つゆ)もまだひぬ 槙(まき)の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ 』
意味:にわか雨が降った後、露がまだ乾いていないのに槙の葉に霧が立ちのぼっている秋の夕暮れだ。
【NO.5】詠み人知らず
『 十月(かんなづき) しぐれの雨に 濡れつつか 君が行くらむ 宿か借(か)るらむ 』
意味:十月の雨に降られているあなたは旅をしているのでしょうか。それとも、宿を借りているのでしょうか。
【NO.6】斎藤茂吉
『 よひ闇の はかなかりける 遠くより 雷とどろきて 海に降る雨 』
意味:宵闇の頃、心細い感じがするのに遠くから雷が轟いて海に降る雨が近づいてくる。
【NO.7】若山牧水
『 しみじみと けふ降る雨は きさらぎの 春のはじめの 雨にあらずや 』
意味:今日しみじみと降る雨は春のはじめの雨ではないか。
【NO.8】石川啄木
『 雨に濡れし 夜汽車(よぎしゃ)の窓に 映りたる 山間の町の ともしびの色 』
意味:夜、雨に濡れた汽車の窓に山間の町の灯が映っている。
【NO.9】伊藤左千夫
『 池水は 濁りににごり 藤浪(ふじなみ)の 影もうつらず 雨ふりしきる 』
意味:濁った池に雨が降りしきるので藤の花の影も映らない。
【NO.10】与謝野晶子
『 人の歌を くちずさみつつ 夕よる 柱つめたき 秋の雨かな 』
意味:歌をくちずさみつつ過ごす雨の降る秋の夜は柱も冷たくなるほど冷え込む。
雨に関する素人オリジナル短歌【おすすめ10選】
【NO.1】『 雨あがり 白さ冴えいる ジャスミンの 甘い吐息に 引き返す春 』
【NO.2】『 ひとしずく 雨に濡らされ 君の膝 借りて和菓子を 梔子(くちなし)で食(は)む 』
【NO.3】『 恋しくて 雨のソーダ水 飲み干した はじける泡よ 恋しくてまだ 』
【NO.4】『 そばにいて 孤独な夜が 明けるまで 冷たい雨が 雪になるまで 』
【NO.5】『 柔らかな 水無月の雨に 洗われて 輝けるかな 紫陽花(あじさい)の青 』
【NO.6】『 ばらばらと 世界の崩れる 音したり 六月二十日の 三時の雨は 』
【NO.7】『 晴れた日が いい一日と 思うのは 雨の降る日が あるからこそで 』
【NO.8】『 冬の雨 季節遮(さえぎ)る 危うさは 草木脅(おど)して 春を遠ざけ 』
【NO.9】『 ゲリラ雨 今日は花火の 夜なのに 逃げる浴衣の 裾(すそ)が滴(したた)る 』
【NO.10】『 あいにくの 雨でもハロウィン 関係ない 早起きメイクで 街へ繰り出す 』
以上、雨に関するおすすめ短歌でした!
雨を歌った短歌には心なしか悲しげな印象が付きまとう歌も多くありました。
しかし、そんな雨のなかに感じられる四季を歌ったものや寒いから一緒にいたいという感情を歌ったものも多く、雨という言葉ひとつで多彩な表現があることがわかったかと思います。
雨の降り方によっても印象は変わるのでしょう。