【雨を題材にした短歌 20選】知っておきたい!!季語を含む有名短歌&素人短歌を紹介

 

皆さんは、雨に関する短歌についてどのようなイメージを持っていますか。

 

雨は多くの歌謡曲や小説でも題材になるように雰囲気や人の感情を表現するのによく利用されます。

 

 

雨といえば悲しい表現が多く見受けられますが、短歌においてはどのような表現に使われるのでしょうか。雨は季節を象徴するものも多くあり、季節によっても印象が違いますよね。

 

今回は、「雨」に関する有名短歌と素人オリジナル短歌をご紹介します。

 

短歌職人
有名なものから素人の方が作ったものまで幅広く紹介していきます。ぜ
ひ短歌作りの参考にしてみてください!

 

雨に関する有名短歌【おすすめ10選】

 

【NO.1】川辺東人

『 春雨の しくしく降るに 高円(たかまと)の 山の桜は いかにかあらなむ 』

意味:春の雨がずっと降りつづいているが、高円の山の桜はどうなったのでしょう。

短歌職人
“しくしく”という独特な擬音が特徴的な歌です。弱い雨が長く続くさまを表現するのに最適なことばだと思います。桜の季節に雨が降ってしまうとつい桜の様子が気になって見に行きたくなってしまいます。

 

【NO.2】詠み人知らず

『 ひさかたの 雨も降らぬか 雨障(あまつつ)み 君にたぐひて この日暮らさむ 』

意味:雨でも降らないだろうか。そうしたら出かけずにあなたと寄り添って今日を過ごしたい。

短歌職人
雨が降ればいいのに、という切なる願いが心を震わせる歌です。雨の日はよく冷えますから人肌が心地よく感じられそうです。雨の日の素敵な過ごし方のひとつかもしれません。

 

【NO.3】赤染衛門

『 虎に乗り 古屋を越えて 青淵(あおふち)に 蛟竜(みずち)捕り来む 剣太刀(つるぎたち)もが 』

意味:五月雨のやんだ空に対して、私の涙は晴れることがない。

短歌職人
雨はやんだのに自分は悲しいまま、なんだかおいて行かれたような気がしてしまいます。悲しさ、寂しさが伝わってきて胸がギュッと切なくなります。

 

【NO.4】寂連法師

『 村雨(むらさめ)の 露(つゆ)もまだひぬ 槙(まき)の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ 』

意味:にわか雨が降った後、露がまだ乾いていないのに槙の葉に霧が立ちのぼっている秋の夕暮れだ。

短歌職人
にわか雨の後のしっとりとした感覚がよく伝わってきます。夕焼けが霧でふんわりと白む幻想的な情景が目に浮かびます。

 

【NO.5】詠み人知らず

『 十月(かんなづき) しぐれの雨に 濡れつつか 君が行くらむ 宿か借()るらむ 』

意味:十月の雨に降られているあなたは旅をしているのでしょうか。それとも、宿を借りているのでしょうか。

短歌職人
雨が降ってくると、出かけて行った人のことが気になります。風邪をひかないようにと願う気持ちが雨の冷たさに反してあたたかく、相手に対する愛を感じられる歌です。

 

【NO.6】斎藤茂吉

『 よひ闇の はかなかりける 遠くより 雷とどろきて 海に降る雨 』

意味:宵闇の頃、心細い感じがするのに遠くから雷が轟いて海に降る雨が近づいてくる。

短歌職人
なんだか不穏な雰囲気のある歌です。雷鳴が近づいてくると無条件に不安を覚えてしまうのは、きっと何歳になっても変わらないのでしょう。

 

【NO.7】若山牧水

『 しみじみと けふ降る雨は きさらぎの 春のはじめの 雨にあらずや 』

意味:今日しみじみと降る雨は春のはじめの雨ではないか。

短歌職人
寒く冷たい中にも春の気配を感じられる、小さな幸せが胸をあたたかくします。春はもうすぐそこまで来ているのだとワクワクしてしまいそうです。

 

【NO.8】石川啄木

『 雨に濡れし 夜汽車(よぎしゃ)の窓に 映りたる 山間の町の ともしびの色 』

意味:夜、雨に濡れた汽車の窓に山間の町の灯が映っている。

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作者が函館を去るときの歌です。黄色やオレンジ色の灯に見送られているように見えます。その灯のひとつひとつに生活があるのだと思うと、しんみりとした気分になります。

 

【NO.9】伊藤左千夫

『 池水は 濁りににごり 藤浪(ふじなみ)の 影もうつらず 雨ふりしきる 』

意味:濁った池に雨が降りしきるので藤の花の影も映らない。

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この歌は、太宰治が入水自殺をしたときに遺書とともに書き記してあった歌でもあるそうです。陰鬱とした雰囲気が漂う歌ですね。濁った水が疲れ切った心情を表しているかのようです。

 

【NO.10】与謝野晶子

『 人の歌を くちずさみつつ 夕よる 柱つめたき 秋の雨かな 』

意味:歌をくちずさみつつ過ごす雨の降る秋の夜は柱も冷たくなるほど冷え込む。

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冷たく冴えた秋の空気を感じられる、日常を切り取ったような歌です。寒くて暗い雨の夜にくちずさむ歌はどんな歌なのか気になります。

 

雨に関する素人オリジナル短歌【おすすめ10選】

 

【NO.1】『 雨あがり 白さ冴えいる ジャスミンの 甘い吐息に 引き返す春 』

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雨が上がると、草木やアスファルトなどの匂い・香りが増すように感じられます。そんな雨上がりの道を行くとき、通りすがりにいい香りがしたら思わず立ち止まってしまいそうです。

 

【NO.2】『 ひとしずく 雨に濡らされ 君の膝 借りて和菓子を 梔子(くちなし)で食(は)む 』

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甘い雰囲気が漂う歌です。雨が降って湿った空気がさらに二人の甘美な雰囲気を助長しているかのように感じられます。

 

【NO.3】『 恋しくて 雨のソーダ水 飲み干した はじける泡よ 恋しくてまだ 』

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弾けた泡沫が恋心のはかなさを表現しているかのように感じられ、ソーダ水というさわやかなモチーフが青春を彷彿とさせる歌です。まるでドラマか小説のワンシーンのようです。

 

【NO.4】『 そばにいて 孤独な夜が 明けるまで 冷たい雨が 雪になるまで 』

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雨の日は体調や気分によってなんとなく憂鬱になってしまうこともあります。そんなときに信頼できる人がそばにいてくれたら安心できそうですね。雨と雪は同じ水分なのに雪だとなぜか心が躍るのは不思議に思います。

 

【NO.5】『 柔らかな 水無月の雨に 洗われて 輝けるかな 紫陽花(あじさい)の青 』

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6月の長雨に降られた後にきらきらと雨粒で輝く紫陽花は美しいです。梅雨の時期はなんとなく気分が沈みがちですが、鮮やかな紫陽花がそんな心に彩りをを与えてくれるような気がします。

 

【NO.6】『 ばらばらと 世界の崩れる 音したり 六月二十日の 三時の雨は 』

短歌職人
“ばらばら”はこの時期の雨の擬音にふさわしいと感じます。それを世界の崩れる音と表現するのは面白いです。具体的な日時を歌うことによってリアリティが加わって歌に味が出ます。

 

【NO.7】『 晴れた日が いい一日と 思うのは 雨の降る日が あるからこそで 』

短歌職人
たしかにそうだな、と思わず納得してしまう歌です。考え方によって雨に対する印象は180度変わります。また逆も然りで、晴れがあるからこそ恵みの雨もありがたいのだと思います。

 

【NO.8】『 冬の雨 季節遮(さえぎ)る 危うさは 草木脅(おど)して 春を遠ざけ 』

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冬に降る雨は冷たく凍てついて、生命に対する脅威のように感じてしまいます。一雨ごとに春が遠くに行ってしまうような不安感が印象的な歌です。

 

【NO.9】『 ゲリラ雨 今日は花火の 夜なのに 逃げる浴衣の 裾(すそ)が滴(したた)る 』

短歌職人
エモーショナルな雰囲気が素敵です。花火は開催されてこそ意味があるけれど、こういったアクシデントもいい思い出になりそうです。将来もこのことを思い出しては懐かしい気持ちになるのでしょう。

 

【NO.10】『 あいにくの 雨でもハロウィン 関係ない 早起きメイクで 街へ繰り出す 』

短歌職人
どうしてもハロウィンを楽しむのだという強い意志が感じられます。1年に一回のこの行事のために衣装からメイクまでばっちり準備してきたからこそ雨が降ったとて後に引けない気持ちが良く伝わってきます。

 

以上、雨に関するおすすめ短歌でした!

 

 

雨を歌った短歌には心なしか悲しげな印象が付きまとう歌も多くありました。

 

しかし、そんな雨のなかに感じられる四季を歌ったものや寒いから一緒にいたいという感情を歌ったものも多く、雨という言葉ひとつで多彩な表現があることがわかったかと思います。

 

雨の降り方によっても印象は変わるのでしょう。

 

短歌職人
是非、あなたも短歌作りにチャレンジしてみてください!