皆さんは現代の短歌についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。
現代短歌は、自由な文体が魅力の比較的親しみやすい短歌です。
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
明日まで一緒にいたい心だけホームに置いて乗る終電車
白菜が赤帯しめて店先にうっふんうっふん肩を並べる
『サラダ記念日』(俵万智)
(明治神宮・五穀豊穣) pic.twitter.com/gg3zKzdGAJ
— のぎざか (@nogizaka55) November 19, 2015
四季が題材になっているものはもちろん、そこにユーモアや自虐も交えて思わず笑ってしまうような作品も少なくありません。
ときにはこちらが今まで気づかなかったこと、意識していなかったことが歌われていてハッとすることもあります。
今回は、知っておきたい有名な現代短歌をご紹介します。
知っておきたい!現代有名短歌【前半10選】
【NO.1】鈴木晴香
『 自転車の 後ろに乗って この街の 右側だけを 知っていた夏 』
【意味】夏の間、街を走る自転車の後ろに横向きに座っていたから右側しか見えなかった。
【NO.2】工藤玲音
『 ガーベラも ダリアも花と 呼ぶきみが コスモスだけは コスモスと呼ぶ 』
【意味】ガーベラもダリアもひとくくりに「花」と呼ぶほど花に無頓着な君がコスモスだけはちゃんとコスモスと呼ぶ。
【NO.3】陣崎草子
『 未来とは レモン氷の 向こうなる おまえの八重歯に 映った花火 』
【意味】レモン氷を食べているおまえの八重歯に映った花火をみて未来を感じた。
【NO.4】俵万智
『 たっぷりと 君に抱かれているような グリンのセーター 着て冬になる 』
【意味】冬になって緑色のセーターを着るとたっぷりと君に抱かれているような心地がする。
【NO.5】俵万智
『 「この味がいいね」と君が言ったから 七月六日はサラダ記念日 』
【意味】「この味がいいね」君が言ったから、今日をサラダ記念日としよう。
【NO.6】俵万智
『 寄せ返す 波のしぐさの 優しさに いつ言われても いいさようなら 』
【意味】寄せて返す波に撫でられている思いがして、いつさようならと言われても受け入れられる気がする。
あたたかな波に慰められているような心地よさのある歌ですね。別れを告げられてもきっと優しい波が傷を撫でてくれるから大丈夫、と心の準備ができたのでしょうか。
【NO.7】木下龍也
『 鮭の死を 米で包んで またさらに 海苔で包んだ あれが食べたい 』
【意味】鮭の死んだものをお米で包んで、さらに海苔で包んだいわゆる「おにぎり」が食べたい。
【NO.8】小島なお
『 きみとの恋 終わりプールに泳ぎおり 十メートル地点で 悲しみがくる 』
【意味】君との恋が終わってプールで泳いでいるとき、十メートル地点に差し掛かった時に悲しみが胸に押し寄せてきた。
【NO.9】笹井宏之
『 「はなびら」と 点字をなぞる ああ、これは桜の可能性が大きい 』
【意味】点字で「はなびら」と読めたとき、真っ先に頭に浮かんだのは桜だった。
【NO.10】穂村弘
『 体温計 くわえて窓に額つけ 「ゆひら」とさわぐ 雪のことかよ 』
【意味】体温計を口にくわえたまま窓の外をみて「ゆひら」とさわぐ君。「雪だ」と言ったのか。
知っておきたい!現代有名短歌【後半10選】
【NO.11】穂村弘
『 ゼラチンの 菓子をすくえば 今満ちる 雨の匂いに 包まれてひとり 』
【意味】ひとりでいるときゼラチンのお菓子をスプーンですくった瞬間、あたりに満ちている雨の匂いに包まれた気がした。
【NO.12】穂村弘
『 終バスに ふたりは眠る 紫の <降りますランプ>に 取り囲まれて 』
【意味】最終のバスで眠っているふたりを紫色に光った<降りますランプ>が照らして包んでいる。
【NO.13】穂村弘
『 目覚めたら息まっしろで、これはもう、ほんかくてきよ、ほんかくてき 』
【意味】ある時、目覚めて息を吐いてみると息が真っ白だった。本格的に冬が来たのだなあと実感した。
【NO.14】伊南真人
『 夏の夜の すべての重力 受けとめて 金魚すくいの ポイが破れる 』
【意味】金魚すくいをするとき、夏の重力をすべて受け止めてポイが破れたように感じた。
【NO.15】東直子
『 しつけ糸 ほどけるように 向日葵が 遠いひかりに ひらかれてゆく 』
【意味】しつけ糸がほどけるように向日葵の花が光に向かって開いていく。
【NO.16】飯田有子
『 雪まみれの 頭をふって きみはもう 絶対泣かない 機械となりぬ 』
【意味】雪でまみれた頭を振って、きみはもう絶対泣かないと決意したからきみが機械のようになった気がした。
【NO.17】佐々木あらら
『 庭先で ゆっくり死んでゆくシロが ちょっと笑った夏休みです 』
【意味】夏休み、庭先でシロを看取るときゆっくりと息絶えていくシロが微笑んだように見えた。
【NO.18】佐佐木定綱
『 ぼくの持つ バケツに落ちた 月を食い めだかの腹は ふくらんでゆく 』
【意味】ぼくが持っているバケツに映った月をメダカが食べてお腹が満たしていくように感じた。
【NO.19】工藤吉夫
『 とぶために 四階に来て はつなつの 明るいベランダに 靴を脱ぐ 』
【意味】校舎の四階から飛び降りるために、初夏の陽にてらされた明るいベランダで靴を脱ぐ。
【NO.20】工藤吉夫
『 十七の 春に 自分の 一生に 嫌気がさして 二十年経つ 』
【意味】十七歳の春に自分の人生に光が見えず嫌気がさしたが、それから何もかわらないまま二十年が経ってしまっている。
以上、おすすめ現代短歌でした!
現代の短歌は現代の口調やくだけた話し言葉で歌われたものが多く、比較的内容も自由度が高いため、親しみやすい印象を受けます。
また、多くの人の納得や共感を誘うのも現代短歌ならではの特徴と言えそうです。
難しい言葉もあまり出てこずソフトな短歌が多いので、「短歌って難しそう…」「なんだか硬い印象がある…」という方は現代短歌から入ってみるのもいいかもしれませんね。