【自然をテーマにした有名短歌 20選】名作はコレ!海•山•空•風•雨•雪…和歌/短歌集を紹介

 

日本は山が多く海に囲まれていて気候も良いため、さまざまな自然が楽しめます。

 

昔から多くの人が自然の姿に感動し、その気持ちを短歌に表現してきました。

 

今回は、自然をテーマにして詠まれた有名な短歌を20首紹介していきます。

 

 

短歌職人
前半10首は大昔に詠まれた和歌、後半は明治時代以降に読まれた短歌を紹介していきます。
意味や鑑賞文も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

 

自然をテーマにした有名短歌(和歌)集【前半10選】

 

【NO.1】山部赤人

『 若の浦に 潮満ち来れば 潟を無み 葦辺を指して 鶴鳴き渡る 』

【意味】若の浦に潮が満ちてくると干潟がなくなり、葦の原を目指して鶴が鳴き飛んでいくよ。

短歌職人
干潟に潮が満ち、そこで休んでいた鶴が飛び立っていく風景を詠んだ歌です。海の満ち引きの力強さと、鶴の群れが一斉に飛んでいく様子、鳴き声などに自然のあるがままの姿が感じられます。

 

【NO.2】大伴家持

『 夏山の 木末の茂に ほととぎす 鳴きとよむなる 声の遥けさ 』

【意味】夏の山の梢の茂みでホトトギスが鳴いている。鳴き声の響きは遥か遠くまで聴こえるようだよ。

短歌職人
茂みの中のホトトギスは姿は見えなくても、その声は山々に沁み通るようによく響いたのでしょう。青々とした木々が繁り、ホトトギスの声が快く響く夏の山を想像させてくれる爽やかな歌です。

 

【NO.3】柿本人麻呂

『 天の海に 雲の波立ち 月の船 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ 』

【意味】天の海に雲の波が立って、月の船が星の林へと漕いで隠れて行くのを見る。

短歌職人
夜空を海に、月を船に見立てています。夜空が美しくて作者は見飽きずにずっと眺めていたのでしょうか。綺麗な言葉で詠まれた、とてもロマンチックな歌です。

 

【NO.4】山部王

『 秋山に もみつ木の葉の うつりなば さらにや秋を 見まく欲りせむ 』

【意味】秋の山の紅葉した葉が散ってしまったら、更に秋を見たいと思うだろうか。

短歌職人
紅葉を眺めながら、ああ美しい、この葉が全部散ってしまったら更に秋の風景が恋しくなるだろうと秋を惜しんでいる歌です。これ程作者を感動させるとは、さぞ見事な紅葉だったのでしょう。

 

【NO.5】紀清人

『 天の下 すでに覆ひて ふる雪の 光を見れば 貴くもあるか 』

【意味】天の下をもうすっかり覆って降る雪の光を見ると尊さを感じる。

短歌職人
一面に降り積もる雪のまぶしさ、更に降る雪のきらきらした光を詠んだ歌です。作者は輝くような雪の白さに感動し、そこに気高さや神聖さを感じたのでしょう。

 

【NO.6】紀貫之

『 照る月の 流るる見れば 天の川 いづるみなとは 海にざりける 』

【意味】照る月が流れて海へ入るのを見ると、天の川が流れ出る河口は海だったのだと思うよ。

短歌職人

月さえ海に沈むのだから天の川も地上の川と同じように、やはり海に注いでいるのだろうという内容です。作者は広大な海を見ていて、全てを受け入れる海は全てが行きつく場所なのだと感じたのかもしれません。

 

【NO.7】紀貫之

『 川風の すずしくもあるか うちよする 浪とともにや 秋はたつらむ 』

【意味】川に吹く風の何と涼しいことだろう。打ち寄せる波とともに秋も立つのだろう。

短歌職人
作者が立秋に川遊びに参加して詠まれたもので、立つ波と立秋が掛詞として使われています。川に立つ波と、川辺に吹く風という描写が何とも涼しげな歌です。

 

【NO.8】藤原忠通

『 わたのはら 漕ぎ出でてみれば ひさかたの 雲居にまがふ 沖つ白波 』

【意味】大海原に漕ぎ出してみると、はるか向こうの沖に雲と見間違うような白波が立っている。

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作者は船の上から海原を眺めています。海と空がどこまでも広がり、かなたでは雲と、雲と一体となったような白い波が立っているという非常にスケールの大きな情景が表現された、青と白のコントラストが鮮やかな歌です。

 

【NO.9】建礼門院右京大夫

『 月をこそ ながめなれしか 星の夜の 深きあはれを 今宵知りぬる 』

【意味】月ばかり眺めてきていたけれど、星の夜にも深い趣があると今夜知った。

短歌職人
作者は夜空を見上げるときは、つい月に注目していたのでしょう。しかし星の輝き、またたきの美しさに気付き、星にもまた眺め飽きない魅力があると感じたのかもしれません。

 

【NO.10】源実朝

『 箱根路を わが越えくれば 伊豆の海や 沖の小島に 波の寄る見ゆ 』

【意味】箱根の道を越えて来ればそこは伊豆の海だ。沖の小島に波が寄せては返すのが見える。

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箱根の山を越えて来て、広がる海を目にした時の感動を詠んでいます。「海や」という感嘆が、山道を苦労して越えた先に海が見えた感動や嬉しさを感じさせ、同時に清々しい気分にさせてくれる歌です。

 

自然をテーマにした有名短歌(和歌)集【後半10選】

 

【NO.11】正岡子規

『 空はかる 台(うてな)の上に 上り立つ 我をめぐりて 星かがやけり 』

【意味】天文台に上って立つと私の周りで星が輝いているのだ。

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天文台に立つと星空をさえぎるものが無く、まるで星に囲まれているように感じたのでしょう。星空への感動が率直に詠まれています。作者は星空を独り占めできたかのように感じたのかもしれません。

 

【NO.12】石川啄木

『 しらしらと 氷かがやき 千鳥なく 釧路の海の 冬の月かな 』

【意味】白く氷が輝き千鳥が鳴いている釧路の海の、冬の月よ。

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寒々としながらも美しい冬の夜の風景を抒情的に詠んだ歌です。作者は冬の夜の浜辺を一人で歩いていたのでしょうか。見上げた夜空の月に心が動かされ、しばらく見つめていたのかもしれません。

 

【NO.13】会津八一

『 あかぎねの をちかたとほき やまなみに ふたらさやけく くものよるみゆ 』

【意味】赤城山の遠く遠くの山並みに二荒山が立ち、そこに雲が寄っていくのを見る。

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山の向こうには更に山並みがあり、そびえ立つ山には雲が寄りそうように掛かっています。雄大な風景は見たままに詠まれており、どこまでも続く山々に作者が感動したことを思わせます。

 

【NO.14】佐佐木信綱

『 山の上に たてりて久し 吾もまた 一本の木の 心地するかも 』

【意味】山の上に立ってじっとしていると私もまた一本の木になったような心地がするのだ。

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雄大な自然の中に立っていると自分も自然と一体となった気がするという歌です。「久し」とあるので作者は長い時間じっと立ち、木や土の匂い、風や葉の音を感じ、自分の感覚が山に溶け込んだように思ったのかもしれません。

 

【NO.15】斎藤茂吉

『 木立より 雪解のしずく 落つるおと 聞きつつわれは 歩みをとどむ 』

【意味】木立から雪どけのしずくが落ちる音を聞いて私は歩みを止めた。

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雪どけのしずくの音に気付いて足が止まり、耳をすませて、しばらくその音を聞いていた様子が想像されます。雪どけを知り、春の訪れを感じて作者は嬉しく思ったのでしょう。

 

【NO.16】土屋文明

『 夏の光 するどく空に うづまけり 崩れ著(いちぢる)き 十津川の山 』

【意味】夏の光は空に鋭く渦巻いている。十津川の渓谷は山を切り崩すように流れている。

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目がくらむような夏の光の眩しさを渦巻くと表現し、そこから視点が変わって十津川の渓谷の見事さを詠んだものです。自然の荒々しい姿を鋭いタッチで表現しています。

 

【NO.17】島木赤彦

『 夕焼け空 焦げきはまれる 下にして 氷らんとする 湖のしずけさ 』

【意味】夕焼けの空は焦げるように赤く、その下で凍ろうとする湖の何としずかなことよ。

短歌職人
燃える夕焼けの焦げるほどの赤さと、凍てつく湖の氷を対比させて、静けさを強調しています。熱と氷が共にある自然の姿には神秘的なものを感じます。

 

【NO.18】宮柊二

『 あたらしく 冬きたりけり 鞭のごと 幹ひびきあい 竹群はあり 』

【意味】新しい冬がやってきた。竹林では幹がしなって鞭のような音を立てている。

短歌職人
寒さで木がしなって立てる音を鞭の音にたとえています。厳しい冬の寒さを詠んでいますが寒さを嫌う歌ではなく、鞭で打たれるように身が引き締まるものだととらえています。

 

【NO.19】前田夕暮

『 自然がずんずん体のなかを通過する  山、山、山 』

【意味】自然がずんずんと体の中を通り過ぎていく  山、山、山。

短歌職人
定型にとらわれない自由な型の短歌です。作者が初めて飛行機に乗った時の感動を詠んだもので、山のインパクトが大きく、行っても行っても山が続いている自然の雄大さを感じさせます。

 

【NO.20】俵万智

『 四万十に 光の粒をまきながら 川面をなでる 風の手のひら 』

【意味】四万十川に光の粒をまきながら風の手のひらが川面をなでていく。

短歌職人
川面に風が吹く様子を擬人法を用いて表現しています。手のひらでなでるという表現が、風が優しく吹いていることを想像させます。四万十川の川面のきらめきや爽やかな風を感じられる歌です。

 

以上、自然をテーマにした有名短歌集でした!

 

 

自然には海や山、空、風、雨や雪など、色々なものがあります。

 

雄大な山々を目の当たりにして自然に感動することもあれば、身近な場所で咲く花の姿に自然を感じることもあるでしょう。

 

短歌職人
みなさんも自然を通じて心が動かされたら、ぜひその気持ちを短歌で表現してみましょう。