8月は夏祭りや花火大会などの「夏ならではのイベント」が多くあります。
8月をテーマにした短歌にも夏の催しに出かけたことを詠んだものが多く見られ、また一ヶ月を通じて気温の高い日が続くため、暑さそのものを題材にした短歌も少なくありません。
今回は、そんな「8月」をテーマに一般の方が詠んだ短歌を20首ご紹介します。
【今日の一首】8月5日
夏の夜は 大樹育む 甘い蜜
朝の陽射しで 琥珀に変わる
《注釈》
夏の夜は→他の季節の夜と区別して、「短い夏の夜は」の意。#短歌 pic.twitter.com/O3PGdKYL36— まほら(真秀良)@相模原食器屋 (@setomononaonao) August 5, 2015
8月(八月)の一般おすすめ短歌集【前半10首】
【NO.1】
『 かき氷 専用の器 出したれば 夏がはじまる 八朔の午後 』
「八朔」とは8月1日のことです。家庭でかき氷用に使っている器があり、それを約1年ぶりに出したのでしょう。その行為で「夏がやって来た」と実感したことや、今日から8月だとの感慨を体現止めで表現しています。
【NO.2】
『 猛暑日の 合間を縫って 吹く涼風 あの人は今 何してるかな 』
汗ばむ猛暑の中で一瞬風が吹いて、作者はその涼しさにほっとしたのではないでしょうか。そして大切な「あの人」のことが心に浮かんだのでしょう。「あの人」も涼風のように優しく、ほっとさせてくれるような人なのかもしれません。
【NO.3】
『 蝉の声 一斉に鳴く その姿 時を知ってか 知らないのか 』
【NO.4】
『 8月も やはり恒例 この暑さ 散歩はお日様 お目覚めすぐに 』
【NO.5】
『 エアコンの 温度調整 難しく 風邪を引きそう 葉月のはじめ 』
【NO.6】
『 夏の空 グラスの中に 麦茶いれ 入道雲を 映し飲み干す 』
【NO.7】
『 来週の お盆に読みたい 本を買い 楽しみ溢れて パラパラとひらく 』
【NO.8】
『 夏の陽に 輝く墓石の 群れを縫い 先祖のもとへと たどり着く旅 』
【NO.9】
『 ひまわりの 浴衣に青い 帯締めて 高鳴り抑え さあ夏祭り 』
【NO.10】
『 夏の朝 爽やかな風 吹き抜けて 黒髪揺れる あの娘愛おし 』
8月(八月)の一般おすすめ短歌集【後半10首】
【NO.11】
『 公園で 耳をつんざく 熊蝉も 突如の雷雨に 姿くらまし 』
【NO.12】
『 鮮やかに 入道雲が 盛られゆく ソフトクリーム 巻く手を見つめる 』
ソフトクリームが盛られていく様子はつい見とれてしまいます。その手際が鮮やかならなおさらです。高く盛られていく白いソフトクリームを見て、作者は入道雲をイメージしたのでしょう。「入道雲」という一言が歌を一気に真夏らしい印象にしています。
【NO.13】
『 容赦なく 溶かせ葉月よ この身体 君に届かぬ 想いもろとも 』
【NO.14】
『 この揺れが 熱中症か 寝不足か 地震か何か わからねぇ夏 』
【NO.15】
『 ゲリラ雨 今日は花火の 夜なのに 逃げる浴衣の 裾が滴(したた)る 』
【NO.16】
『 濃緑の むせかえるような 夏草に 今日を限りと 鳴く蝉の声 』
草木が生い茂り、真夏の日差しに熱せられて草の匂いが辺りに充満している様子が想像できます。そこには命の限りに鳴くような蝉の声が響き渡っているのでしょう。真夏の熱気、匂い、音を体感させてくれるような歌です。
【NO.17】
『 西瓜玉 白皮含む ひとかけら 食べよと小突く 姉の片肘 』
「西瓜玉」とあるので、一玉を割って食べているのでしょう。食べ終わろうとしたスイカにまだ赤い部分が残っていて「食べなよ」とお姉さんに小突かれたのでしょうか。食べたスイカの皮をお互いに見比べているのかと思うと微笑ましくなります。
【NO.18】
『 夏祭り。花火を見上げ 笑む隣、こっそり撮った 君の横顔 』
花火を撮るふりをして、好きな人の笑顔をこっそり画像に収めたのでしょう。句読点を用いることで感動のポイントが分かりやすくなっています。「夏祭り。」という詠嘆には、「君」の笑顔を見られた、それを写真に撮ることができたことの嬉しさを感じます。
【NO.19】
『 汗・日焼け・痣(あざ)・肉刺(まめ)・突き指・仲間割れ 三年間を いまかっ飛ばせ 』
甲子園球児をテーマにした歌です。第三句までは練習の苦しさや厳しさが表現されて、中には痛々しいものもありますが、第五句でそれらを全て「かっ飛ばせ」と締めて快活で清々しい歌となっています。第三句までのリズムも小気味良いですね。
【NO.20】
『 燃え落ちる 線香花火が 暗闇に ひそやかに打つ 夏のピリオド 』
線香花火の火が最後にポトリと落ちる様子をピリオドの点にたとえて夏の終わりを表現した歌です。火花のように激しく熱かった夏がひっそりと終わっていくことへの寂しさが、読後に余韻となって残ります。
以上、8月をテーマに詠んだオススメ一般短歌集でした!
今回は「8月」をテーマに詠んだ一般短歌を20首紹介しました。
8月をテーマにして短歌を作る際は、夏の風物詩や夏を思わせる言葉を詠み込むと8月らしい印象となります。
「お盆、かき氷、セミ、ひまわり、浴衣、花火」など、夏をイメージする言葉は色々とあるので、言葉に迷っているという人は試してみてください。またシンプルに「夏、真夏」などの言葉を使うのも良いでしょう。