【海を題材にした短歌 20選】春夏秋冬!!有名歌人&学生向け一般短歌ネタ集を紹介!

 

皆さんはふとした時に「海が見たい」と思ったことはありませんか?

 

海にはずっと眺めていたくなるような不思議な魅力があります。四方を海に囲まれた島国に住む日本人にとって海は身近で、古来から多くの人が海を眺めて、広大さに感動したり迫力に圧倒されたりしてきました。

 

今回は、そんな「海」を題材にした短歌を20首紹介します。

 

 

短歌職人
有名なものから一般の方が作ったものまで幅広く紹介していきますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

 

海を題材にした有名短歌【おすすめ10選】

 

短歌職人
まずは古代から近代までの有名歌人が詠んだ海の和歌・短歌を10首ご紹介します。

 

【NO.1】安貴王

『 伊勢の海の 沖つ白波 花にもが 包みて妹が 家づとにせむ 』

【意味】伊勢の海の白波が花ならいいのに。包んで妻へのおみやげにしたい。

短歌職人
青い海に、しぶきを上げて立つ波の白さが映えて、その色の美しさに感動した作者は波を持ち帰って妻にも見せたいと思ったのでしょう。波の白さに感激したことと、妻への愛情が感じられます。

 

【NO.2】柿本人麻呂

『 笥飯(けひ)の海の 庭よくあらし 刈薦(かりこも)の 乱れて出づ見ゆ 海人の釣舟 』

【意味】笥飯の海は穏やからしい。漁師の釣り舟が入り乱れているのが見える。

短歌職人
「刈薦(かりこも)」は植物で編んだ敷物で「乱る」に掛かる枕詞です。穏やかな青い海に舟が何隻も出ていて、移動する舟のしぶきが白く線になり入り乱れる様子が想像され、活気のある海を思わせます。

 

【NO.3】笠女郎

『 伊勢の海 磯もとどろに 寄する波 恐き(かしこき)人に 恋ひわたるかも 』

【意味】伊勢の海の磯にとどろき寄せる波のように恐れ多い人に恋してしまったようだ。

短歌職人
恋の相手は大伴家持という、作者よりも大分身分の高い男性です。「とどろに寄する波」という力強い言葉には恐れ多い気持ちと、大伴家持を称える心、それに彼女自信の止められない恋心が表れているようにも感じます。

 

【NO.4】詠み人知らず

『 渡つ海の 浜のまさごを かぞへつつ 君がちとせの ありかずにせむ 』

【意味】大海の浜の砂の数を数えている、その数があなたの年となるように。

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「砂の数があなたの年齢となるように」という長寿の祈りが込められた歌です。作者は大切な人が危険な目に遭ったりせずに長生きできますようにと、無数の砂粒に託して海の神様に願っていたのかもしれません。

 

【NO.5】藤原実定

『 奈子の海の 霞の間より ながむれば 入日を洗ふ 沖つ白波 』

【意味】奈子の海にかかる霞のすきまから眺めると、夕日を波が洗っているようだ。

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夕日が海に沈んでいく様子が、波に洗われているように見えるというユニークな歌です。今日も一日お疲れさまと波に全身洗われるから、太陽はまた明日もぴかぴかに輝いて上るのかもしれませんね。

 

【NO.6】北原白秋

『 寂しさに 海を覗けば あはれあはれ 章魚(たこ)逃げてゆく 真昼の光 』

【意味】寂しさで海を覗きこむとあらあら、タコが逃げていく、真昼の光のなかで。

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作者が海を覗いたので、隠れていたタコが逃げていったのでしょう。「あはれあはれ」は「おやおや、あらあら」といった意味です。センチメンタルに海を眺めるつもりがタコの挙動に思わず笑ってしまったのかもしれません。結びの「真昼の光」が眩しい印象です。作者の心も晴れたのではないでしょうか。

 

【NO.7】伊藤左千夫

『 春の海 西日にきらふ 遥かにし 虎見が崎は 雲となびけり 』

【意味】春の海は西日にきらめいて遥かにあり、虎見が崎には雲がたなびいている。

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夕日に照らされて遥か遠くの水平線まできらめく春の海、そして雲がたなびく虎見が崎という自然の姿の美しさが率直に詠まれた歌です。「綺麗だ」などの感想をあえて入れないことで、風景を見る作者の感動の大きさが伝わります。

 

【NO.8】斎藤茂吉

『 おほほしき くもりにつづき 心こほし 相模の海の 遠なぎさ見ゆ 』

【意味】憂鬱な曇りが続いて、心恋しく相模の海の遠くの渚を見る。

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どんよりとした曇りが続いて恋しく思ったのは日の光でしょうか、それとも別な誰かでしょうか。憂鬱に見つめた渚は作者の心を表すように暗い色だったでしょうが、その向こうに恋しい対象がある、希望があるのだと思わせる歌です。

 

【NO.9】石川啄木

『 東海の 小島の磯の 白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる 』

【意味】東海の小島の磯の白い砂浜で私は泣きぬれて蟹と戯れている。

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この歌は、大志を抱きながら広い世界で活躍できない自分を嘆くものだと言われています。大きな海に浮かぶ小さな島にいて、そこから出られないことが悲しく涙が出るがカニと遊ぶことしかできないと言う作者の胸のうちや、海を見つめる目線を想像すると切ない気持ちになる一首です。

 

【NO.10】寺山修司

『 海を知らぬ 少女の前に 麦藁帽の われは両手を 広げていたり 』

【意味】海を知らない少女の前で麦わら帽子の自分は両手を広げたのだ。

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「麦わら帽子」が健康的な少年をイメージさせます。海を見たことがない少女に少年はどうにかその大きさを伝えようと両手をいっぱいに広げたのでしょう。幼いけれども純粋な心が伝わる歌です。

 

海を題材にした一般短歌【おすすめ10選】

 

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ここからは一般の方が詠んだ海の短歌を10首紹介していきます。

 

【NO.1】

『 様々な 青は光の 風に揺れ 静かな岸辺 足を濡らした 』

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ひとことで青い海と言っても、光の反射によってその青さは変わり、混じり合って海の色となっています。作者は足に水の冷たさを感じながら、光が当たって揺れる水面の複雑な青色を見つめていたのでしょうか。

 

【NO.2】

『 散る花は 雨に流され いつの日か 海まで辿り 着くのだろうか 』

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花びらの行方を想像している歌で、落ちて地面に貼り付いていた花びらが雨に流されて川の流れに乗って、やがて大海へたどり着くという遥かな旅の物語を夢想させます。

 

【NO.3】

『 輝いて きらめく波の 夏の海 怖くて避ける 冬の夜の海 』

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季節によって海は全く違う表情を見せます。夏の海はきらめいて活気にあふれていても、冬には暗い雰囲気となります。夜ともなれば尚更で、暗闇で波音を冷たく響かせる海は確かに恐ろしく感じられるかもしれません。

 

【NO.4】

『 さらわれる 波さらう波 眺めては 海の呼吸に 速度を合わす 』

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波がまた波をさらっていく、その無限の繰り返しを眺めるうちに、作者は自分もまた海の一部であるかのような感覚がして海と息を合わせたのではないでしょうか。

 

【NO.5】

『 空っぽの 貝殻を手に 深海の 音色をきいて 私は眠る 』

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眠るまでの間貝殻を手にして、海へと思いを馳せていたのでしょう。眠りに落ちる作者は夢の中で、貝殻に誘われて深海の世界を旅したのかもしれません。

 

【NO.6】

『 あの船は どこまで海を 辿るのか 寂しさ如何に 躱(かわ)すのだろう 』

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作者は海に一隻の船を見つけて、広い海原を行く船に孤独を感じたのでしょう。大波や岩礁はかわせても、寂しさをかわすことはできまいという歌で、作者自身も寂しさを感じていることがうかがえます。

 

【NO.7】

『 月光の 優しく照らす 波のうえ 浮かんでいたい 海月になって 』

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作者は月の光と海に優しさを感じ、その二つを名前にした海月となって優しさに包まれたいと思ったのではないでしょうか。現実に窮屈を感じていて、何からも縛られず海を漂う海月のような存在に憧れを抱いたのかもしれません。

 

【NO.8】

『 窮屈な ローファーなんて 脱ぎ捨てて 夏の渚を 裸足で駆けろ 』

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「ローファー」には現実世界の規律、ルールといった意味が込められているように思われます。命令形の「裸足で駆けろ」にはスピード感があり、ルールを捨てて自由に行け!という勢いと若さが感じられます。

 

【NO.9】

『 昼過ぎの 波おだやかな 港内に 漁船一隻 入りくる見ゆ 』

短歌職人
作者は港のそばに住んでいて「今日も漁船が帰ってきたな」と思い、その日常の風景を詠んだのでしょう。波が穏やかで船も無事に帰ってきたという、海のある暮らしを詠んだ歌です。

 

【NO.10】

『 救いとか なくてもいいよ 青空と 海の話を ずっとしてよう 』

短歌職人
救いがなくてもいいと、一見暗い内容に思えますが、静かな語りかけには穏やかさと優しさを感じます。この青い空と海があれば、それでいいじゃないかと言うような、どこか満ち足りた気持ちを感じさせる歌です。

 

以上、海を題材にした短歌集でした!

 

 

海は広く、大きく、時として怖く、美しいものです。

 

海は日本人にとって身近なものだからこそ、海にどんなイメージを持っているかは「人それぞれ」です。

 

また、海は天候や季節によって色を変え、「青い海」「エメラルドグリーンの海」「鉛色の海」など様々な表現がありますので、海の色を短歌に詠み込んで自分の心象風景を表現してみるのもおすすめです。

 

短歌職人
皆さんもぜひ海へのイメージや思いを短歌で表現してみてください。