皆さんはふとした時に「海が見たい」と思ったことはありませんか?
海にはずっと眺めていたくなるような不思議な魅力があります。四方を海に囲まれた島国に住む日本人にとって海は身近で、古来から多くの人が海を眺めて、広大さに感動したり迫力に圧倒されたりしてきました。
今回は、そんな「海」を題材にした短歌を20首紹介します。
捨てられたカモメと飛んだ文庫本 海とは本来そういうものさ#tanka pic.twitter.com/qHmRM5JSYg
— 中山俊一 (@poseidon_29) May 2, 2015
秋の海歩いてゆけば夏の日に
忘れたあなたに逢える気がして#短歌 #tanka pic.twitter.com/2Aun7cM4Uv— 桜望子🌸さくらもちこ (@Ma2raMen) September 19, 2016
海を題材にした有名短歌【おすすめ10選】
【NO.1】安貴王
『 伊勢の海の 沖つ白波 花にもが 包みて妹が 家づとにせむ 』
【意味】伊勢の海の白波が花ならいいのに。包んで妻へのおみやげにしたい。
【NO.2】柿本人麻呂
『 笥飯(けひ)の海の 庭よくあらし 刈薦(かりこも)の 乱れて出づ見ゆ 海人の釣舟 』
【意味】笥飯の海は穏やからしい。漁師の釣り舟が入り乱れているのが見える。
【NO.3】笠女郎
『 伊勢の海 磯もとどろに 寄する波 恐き(かしこき)人に 恋ひわたるかも 』
【意味】伊勢の海の磯にとどろき寄せる波のように恐れ多い人に恋してしまったようだ。
【NO.4】詠み人知らず
『 渡つ海の 浜のまさごを かぞへつつ 君がちとせの ありかずにせむ 』
【意味】大海の浜の砂の数を数えている、その数があなたの年となるように。
【NO.5】藤原実定
『 奈子の海の 霞の間より ながむれば 入日を洗ふ 沖つ白波 』
【意味】奈子の海にかかる霞のすきまから眺めると、夕日を波が洗っているようだ。
【NO.6】北原白秋
『 寂しさに 海を覗けば あはれあはれ 章魚(たこ)逃げてゆく 真昼の光 』
【意味】寂しさで海を覗きこむとあらあら、タコが逃げていく、真昼の光のなかで。
【NO.7】伊藤左千夫
『 春の海 西日にきらふ 遥かにし 虎見が崎は 雲となびけり 』
【意味】春の海は西日にきらめいて遥かにあり、虎見が崎には雲がたなびいている。
【NO.8】斎藤茂吉
『 おほほしき くもりにつづき 心こほし 相模の海の 遠なぎさ見ゆ 』
【意味】憂鬱な曇りが続いて、心恋しく相模の海の遠くの渚を見る。
【NO.9】石川啄木
『 東海の 小島の磯の 白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる 』
【意味】東海の小島の磯の白い砂浜で私は泣きぬれて蟹と戯れている。
【NO.10】寺山修司
『 海を知らぬ 少女の前に 麦藁帽の われは両手を 広げていたり 』
【意味】海を知らない少女の前で麦わら帽子の自分は両手を広げたのだ。
海を題材にした一般短歌【おすすめ10選】
【NO.1】
『 様々な 青は光の 風に揺れ 静かな岸辺 足を濡らした 』
【NO.2】
『 散る花は 雨に流され いつの日か 海まで辿り 着くのだろうか 』
【NO.3】
『 輝いて きらめく波の 夏の海 怖くて避ける 冬の夜の海 』
【NO.4】
『 さらわれる 波さらう波 眺めては 海の呼吸に 速度を合わす 』
【NO.5】
『 空っぽの 貝殻を手に 深海の 音色をきいて 私は眠る 』
【NO.6】
『 あの船は どこまで海を 辿るのか 寂しさ如何に 躱(かわ)すのだろう 』
【NO.7】
『 月光の 優しく照らす 波のうえ 浮かんでいたい 海月になって 』
【NO.8】
『 窮屈な ローファーなんて 脱ぎ捨てて 夏の渚を 裸足で駆けろ 』
【NO.9】
『 昼過ぎの 波おだやかな 港内に 漁船一隻 入りくる見ゆ 』
【NO.10】
『 救いとか なくてもいいよ 青空と 海の話を ずっとしてよう 』
以上、海を題材にした短歌集でした!
海は広く、大きく、時として怖く、美しいものです。
海は日本人にとって身近なものだからこそ、海にどんなイメージを持っているかは「人それぞれ」です。
また、海は天候や季節によって色を変え、「青い海」「エメラルドグリーンの海」「鉛色の海」など様々な表現がありますので、海の色を短歌に詠み込んで自分の心象風景を表現してみるのもおすすめです。