みなさんは、秋と言えばどんなことを思い浮かべますか?
秋は涼しくて過ごしやすい季節ですから、ハイキングなどの行楽シーズンだと言われています。
また、お月見や運動会など、さまざまイベントがあったり、食欲の秋、芸術の秋と言われるように、楽しいことが盛りだくさんの季節です。
そんな秋は、短歌を作るにはピッタリの季節かもしれませんね。
ですが、実際に短歌を作ろうと思っていても「どうやって作ればいいの?」と困ってしまう方も多くいらっしゃるかと思います。
そこで今回は、秋らしい短歌の作り方についてご紹介していきます。
目次
そもそも短歌って何?基本的なルールを知ろう!
短歌とは、和歌の形式のひとつで5・7・5・7・7の31音からなる短い詩のことを言います。
第1句から第3句(5・7・5)までを上(かみ)の句、第4句から第5句を下(しも)の句と言います。
【例】夜明けて(5) 気づく休みの(7) 短さを(5) 嘆く間に(7) 終わる休みぞ(7)
(※ちなみに、言葉の数え方ですが、「ちゃ」や「って」などに使われている小さい文字「ゃ」「っ」などは、それだけでは1音に換算しません。この場合、「ちゃ」で1音、「って」で1音と数えていきます)
短歌には、恋心や、亡き人を想う心など、作者の心情を表現したものや、抒情的な作品が多いことが特徴です。
また、短歌は「一首、二首、三首…」と数えていきます。俳句のように、一句、二句…と数えませんので、間違えないように注意しましょう。
秋の短歌の作り方を紹介!
(1)まずは秋の季語を選ぼう!
短歌を作るにあたって、まずは秋の【季語】を選びましょう。
【季語】とは、俳句や短歌などで、その季節を示す言葉として定められた言葉のことです。季節の感じを出すために、とても重要な言葉です。
俳句には必ず季語を入れなければならないというルールがありますが、短歌には必ずしも季語を入れる必要はありません。
ですが、季節の短歌を作る上では、その季節を表現する【季語】は欠かせません。
ここでは、秋の季語についてご紹介します。
【時候やお天気を表す夏の季語】立秋・秋澄む・秋の宵・さわやか・秋気・夜長・律の調べ・秋風・秋高し・秋の空・秋晴れ・稲妻・鰯雲・月・星月夜・秋日和・流れ星・冬近し など
秋の季語
- 【地理を表す秋の季語】秋の池・秋の海・秋の田・秋の土・秋の野・秋の山・花野・花畑・水澄む・山粧(よそお)う など
- 【生活を表す秋の季語】秋場所・凶作・松茸飯・豊年・稲刈り・新米・新酒・紅葉狩り・体育の日・敬老の日・葡萄酒・送り火・十五夜 など
- 【動物や植物を表す夏の季語】萩・オバナ(ススキ)・葛・撫子・女郎花(おみなえし)・藤袴(ふじばかま)・赤とんぼ・雁・彼岸花・とうもろこし・柿・いちじく・落花生・萱(かや)・柚子・鹿・猪・かけす・めじろ など
(2)「場面」や「気持ち」を切り取り、伝えたいものを決めよう
次は、短歌に詠んでみたい「場面」や「気持ち」を想像してみましょう。
短歌を作るとき、いきなり「場面」や「気持ち」を想像することは、最初のうちは難しいかもしれません。
そのため、先ほど選んだ「季語」をもとに「場面」や「気持ち」を想像してみましょう。
【例】季語「お月見」の場合
お月見と言う言葉から、どんな場面を想像しますか?あなたが思い浮かべた景色にあるものを、書き出してみましょう。
例えば、「月見だんごがある」「夜空に満月がある」「鈴虫の声が聞こえてくる」など。
書いてみたい「場面」が決まったら、次はその時に感じた「気持ち」を書きだしてみましょう。
例えば、【夜空に月がある】という場面では、「月が大きくてきれいだった」「月の表面にウサギのような影が見えて、おもしろかった」など、出来るだけ具体的に書きだせるとよいでしょう。
(3)五・七・五・七・七の形にあてはめて読もう
短歌のルールとして、31音で構成しなければならないという決まりがありますので、先ほど書き出した「場面」や「気持ち」を、すべて短歌として詠むことはできません。
5・7・5・7・7の字数に入るように、言葉を選んで表現してみましょう。
この時に注意したいポイントが、「自分の感情を直接的な言葉で表現しない」ということです。
例えば、「楽しい」「悲しい」という感情をそのまま短歌に詠んでしまうと、読んだ人の想像が膨らまず、心に残らない作品となってしまいます。
どのように表現すれば、「楽しい」という言葉を直接使わないで、自分の気持ちを読む人に伝えられるか考えてみるとよいでしょう。
例
- きれい・・・うるわしい、愛らしい、見事 など
- 楽しい・・・愉快、にぎやか、心地よい など
- 悲しい・・・悲壮、心痛む、心苦しい など
(4)読んでみて違和感があれば、言葉を変えてみよう
短歌と言うと、「即興で作るものなのかな?」とイメージされがちですが、本来は何度も書き直し、推鼓しながら完成を目指すものです。
作りっぱなしにするのではなく、後から見直したり、何日か経ってから言葉を変えてみることも大切です。
例えば、「お月見」という言葉でも、「お月見を」という表現と、「お月見の」という表現では、言葉の意味や伝えたい言葉も変わってきますよね。
また、伝えたい言葉は決まったけど、「5文字や7文字にぴったり収まらない…」「何となく違和感がある…」という時もあります。そういう時は、言葉を変えてみましょう。
多少言い回しを変えるだけでしっくりくることもあります。似たような言葉を思い浮かべ、伝えたい言葉と言い換えられるかどうか試してみましょう。
例
- 座る ⇔ 腰かける
- それでも ⇔ とはいえ
- 走る ⇔ 駆ける
- とても ⇔ 心から
- すごい ⇔ 素晴らしい
- 怖い ⇔ 恐ろしい
(5)表現技法を活用してみよう
短歌には、さまざまな表現技法があり、短歌を作る際に手助けをしてくれます。
一般的な表現技法をいくつかご紹介しますので、ぜひ活用してください。
表現技法の例
- 掛詞(かけことば)…古文において、1つの言葉に2つの意味を持たせるものです。
例:【立ち別れ いなばの山の 峰におつる】まつとし聞かば 今かへりこむ(中納言行平)
【まつ】は、「松」と「待つ」の2つの意味を持っています。
- 破格(はかく)…31音を破り、印象を強める表現技法のことです。
音が多いものを「字余り」、少ないものを「字足らず」と言います。
- 倒置法(とうちほう)…語順を逆にして、意味を強める表現技法のことです。
例:「風よ吹け」→「吹け、風よ」
本来の語順を入れ替えることで、風が吹いてほしいという感情を強調することができます。
- 比喩法(ひゆほう)…ある言葉を、他のものに例える表現技法のことです。
【直喩法】…「~のように」など直接的に例える方法です。
【隠喩法】…直接的な比喩を使わない方法です。
【擬人法】…人間ではないものを人間のように例える方法です。
- 反復法(はんぷくほう)…同じ語句を繰り返して、感動を強める表現技法のことです。
- 体言止め(たいげんどめ)…最後の句(絶句)を名詞・代名詞で止め、短歌が終わったあとに余韻を残します。
- 切れ字(きれじ)…短歌や俳句などで、意味の切れるところに置く言葉のことです。
句点「。」を置く位置に入れる言葉、と思うとわかりやすいでしょう。また、切れ字を用いる時には、「かな」「や」「けり」という3つの言葉が使われています。
【かな】…感動や詠嘆を表し、末尾に使われることが多いです。
【や】…詠嘆や呼びかけを表し、上の句に使われることが多いです。
【けり】…は断言するような強い調子を表し、末尾に使われることが多いです。
例:白鳥は かなしからずや/空の青 海のあをにも 染まずただよふ(若山牧水)
参考になる!!おすすめ素人短歌を紹介!
ここからは、一般の素人の方々が作った秋の短歌を6つご紹介したいと思います。
【NO.1】
『 秋の陽に 窓辺の母は 一本の 糸に形を 授けておられ 』
季語:秋の陽
短糸に形を授けておられ”とは、おそらく母が“編み物をしている”ということでしょう。ただ編み物をしている、というのではなく、言葉の置き換えをしたところが素敵ですね。秋の陽は、暑くもなく寒くもなく、過ごしやすい気候です。その気候の中、母が編み物に熱中している光景が目に浮かんできます。
【NO.2】
『 見上げれば 空いっぱいの 鰯雲(いわしぐも) 東京にいても 見えるのですね 』
季語:鰯雲
鰯雲とは、秋の空に現れる雲の形のことで、まるで魚の鱗のように見えることから、うろこ雲とも呼ばれています。作者は遠い故郷から、東京に移り住んできたのでしょうか。故郷の空との思いがけない共通点を見つけたようで、作者の喜びが伝わってくる一首です。
【NO.3】
『 信号機 無視して渡る 赤とんぼ わたし追い越し どこへ飛びゆく 』
季語:赤とんぼ
この歌には、赤とんぼの行動を人間のように見立てている、擬人法が使われていますね。自然に生きる赤とんぼにとっては、人間界のルールは関係のないことです。そんな赤とんぼの姿に、作者は自由と未知の世界を感じたのかもしれませんね。
【NO.4】
『 秋風を 胸いっぱいに 吸ったので コスモス色に 染まる指先 』
季語:秋風、コスモス
この歌には暗喩法が使われています。秋の風を胸いっぱいに吸ったことで、実際には指先がコスモス色に染まるわけではありませんが、まるで自分の身体が秋そのものになったような気がする、と歌われているのです。コスモスは、薄いピンク色をした花を咲かせますね。その花の色のイメージから連想できるように、秋風は作者にとってとても心地の良いものだったのでしょう。
【NO.5】
『 稲刈りを 終えた田んぼの 土色を 色濃く染める 秋の長雨 』
季語:稲刈り、秋の長雨
雨が降ることで、土は濡れて、いつもより濃い色になりますね。そんな季節の変わり目の風景を、見事に切り取った一首です。
【NO.6】
『 ススキより 月見バーガーで 秋を知る もうすぐ中間テストの季節 』
季語:ススキ、月見バーガー
この歌は現代ならではの様子を、うまく表現した一首と言えるでしょう。現代は、自然の移り変わりから季節を感じるということが、昔に比べて少なくなってきたように思えます。作者にとっては、“月見バーガー”や“中間テスト”が、秋の訪れを感じさせるものなのですね。
さいごに
さいごに、短歌を作る上でのポイントをまとめてみましたので、再度ご確認下さい。
- 短歌は、5・7・5・7・7の31音で作られている
- 季節に合った季語を選ぶことで、夏らしさを表現することができる
- 場面や気持ちを切り取り、伝えたいものを決める
- 必ず、後から推鼓する
- 切れ字や比喩法などの表現技法を活用する
いかがでしたでしょうか?この記事では、季語を活用した秋の短歌の作り方についてご紹介しました。たくさんの季語はもちろん、短歌ならではの表現技法やルールをうまく利用して、面白い一句や心に残る一句を作っていただければ幸いです。