
短歌を学習するうえで、分かりにくいという声の多いものが「句切れ」です。
んー短歌の句切れわからん
— まゆりーぬ (@abc_sid_love) July 24, 2013
うあ~、短歌とか、句切れとかわかんな~い。
— 大西 光代 (Mitsuyo Onishi)@『科学法則大全』 (@hatter121) November 19, 2011
そこで今回は、「短歌における句切れ」について、意味や種類を一つ一つ解説していきます。
目次
短歌の句切れとは?意味や効果
短歌の句切れとは、歌の内容の切れ目のことです。
短歌は「5・7・5・7・7」音の5パートで構成されますが、このパート一つ一つを「句」と言います。
句切れとは句の切れている部分を言い、一つの短歌の中に複数の内容が詠み込まれている場合の、内容の分かれ目のことを指します。
【例】島木赤彦
『 信濃路は いつ春にならん / 夕づく日 入りてしまらく 黄なる空の色 』
【意味】信濃はいつ春になるのだろう。夕日が沈んでしばらくは黄色味を帯びている空の色よ
⇨「いつ春にならん」と「夕づく日」の間に句の切れ目がある
「いつ春になるのだろう」は作者の心境を表した内容で、「夕日の沈んだ空の色」は景色についての内容です。このように、一つの短歌の途中で内容が変わったり、目線が切り替わったりしている箇所を句切れと呼んでいます。
句切れには、内容の分かれ目を表したり、歌のリズムを整えたり、言葉を強調したりする効果があります。
短歌の句切れの種類
句切れは、短歌のどこにあるかで呼び方が変わってきます。
先頭から「初句・第二句・第三句・第四句・結句(または第五句)」です。
初句切れ
「5。 7・5・7・7」のように初句の後に句切れがあるものは「初句切れ」と呼ばれています。
【例】北原白秋
『 草わかば / 色鉛筆の 赤き粉の ちるがいとしく 寝て削るなり 』
【意味】緑の若草よ。赤い色鉛筆を削った粉が若葉に落ちていくのがきれいで寝そべって削るのだ
二句切れ
二句切れは「5・7。 5・7・7」のように、第二句の後に句切れがあるものです。
【例】前川佐美雄
『 春の世に わが思ふなり / わかき日の からくれなゐや かなしかりける 』
【意味】春の夜に私は思うのだ。若かった日に見た唐紅の鮮やかさが切なく悲しいと
三句切れ
三句切れは「5・7・5。 7・7」のように、第三句の後に句切れがあるものです。
【例】伊藤左千夫
『 おりたちて 今朝の寒さを 驚きぬ / 露しとしとと 柿の落葉深く 』
【意味】朝に庭に下りてみて寒さに驚いた。落ちた柿の葉は厚く積もって、朝露にしっとりと濡れていた
四句切れ
四句切れは「5・7・5・7。 7」のように、第四句の後に句切れがあるものです。
【例】若山牧水
『 幾山河 越えさり行かば 寂しさの 終てなむ国ぞ / 今日も旅ゆく 』
【意味】いくつ山を越え河を越えて行けば寂しさの無い国に行けるのだろうか。今日も旅を続けて行く
句切れなし
結句まで内容が変わらずに、意味の分かれ目がないものは「句切れなし」と言います。
【例】石川啄木
『 不来方の お城の草に 寝ころびて 空に吸はれし 十五の心 』
【意味】不来方の城跡の原っぱに寝転んで空を見れば十五歳の心は吸い込まれてしまいそうだ。
複数の句切れのあるもの
句切れは一つの短歌の中に複数入ることもあります。
その場合は、例えば「5。7・5。7・7」のように内容が分かれていれば「初句・三句切れ」と呼んでいます。「5・7。 5。 7・7」の場合は「二句・三句切れ」です。
【例】与謝野晶子(初句・四句切れ)
『 鎌倉や / 御仏なれど 釈迦牟尼は 美男におわす / 夏木立かな 』
【意味】ああ鎌倉。お釈迦さまは御仏だけれども美男でいらっしゃるなあ。夏の木立の中で。
短歌の句切れの見分け方・見つけ方
短歌の句切れは歌の内容が分かれている箇所にあり、歌の意味に「。」が入るかどうかが見つける目安となります。
しかし、古語で書かれた和歌や短歌の意味を知るのは、古典の現代語訳が得意だという人でなければ少々難しいものです。
感動を表す語「けり/なり/かな/かも」を探す
これらは言葉の語尾に付いて「~だなあ」「~なことよ」と感動や詠嘆を表現し、一度文を区切る働きがあります。
【例】平兼盛
『 しのぶれど 色に出にけり / わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで 』
【意味】心に秘めていたのに表情に出てしまっていたのだなぁ。私の恋心は、物思いをしているのかと人に尋ねられるまでに
終助詞「な/よ/ぞ」を探す
終助詞は言葉の語尾に付いて文を終わらせる働きをします。和歌では特に「な、よ、ぞ」が多く使われます。
【例】清原元輔
『 契りきな / かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波こさじとは 』
【意味】約束したのに。涙で濡れた袖をしぼりながら、末の松山を波が越すことがないように心変わりはあり得ないと
終止形に注目する
活用語の基本の形である終止形は、その名の通り文を一旦終わらせます。
【例】在原業平
『 ちはやふる 神代もきかず / 竜田川 からくれなゐに 水くるるとは 』
【意味】不思議なことの起こったという神話の時代にも聞いたことがない。竜田川に紅葉で赤く染められた水が流れるとは
命令形に注目する
「~してくれ」という意味の命令形も文を終わらせる働きがあります。
【例】参議篁
『 わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ / 海人の釣り船 』
【意味】大海原を無数の島々を目指して漕ぎ出して行ったのだと都の人に伝えておくれ。漁師の釣り船よ
係り結びに注目する
「係り結び」は語句を強調したり疑問を表したりするもので、句切れの目安になります。
「ぞ、なむ、や、か、こそ」などの「係助詞」が目印で、「ぞ、なむ、や、か」の後の言葉は連体形に、「こそ」に続く言葉は已然形になるという法則があります。
【例】大江千里
『 月見れば 千々にものこそ 悲しけれ / わが身ひとつの 秋にはあらねど 』
【意味】月を見れば数々の思いが胸に押しよせてきて悲しいのだよ。私だけのための秋ではないのだけど
練習問題!有名短歌の句切れを見つけよう【全3問】
【第一問】(作者:斎藤茂吉)
『 あかあかと 一本の道 とほりたり たまきはる我が 命なりけり 』
【第二問】(作者:与謝野晶子)
『 海恋し 潮の遠鳴り かぞへては 乙女となりし 父母の家り 』
【第三問】(作者:藤原実方朝臣)
『 かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしもしらじな 燃ゆる思ひを 』
↓答えはこちら↓
【第一問の答え】三句切れ
「日に照らされて一本の道があかあかと真っ直ぐに通っている。それが我が命なのだ」という意味です。「たまきはる」は「命」に掛かる枕詞です。内容は一本の道が照らされている情景と、その道に対する作者の思いとに分かれます。
【第二問の答え】初句切れ
「ああ海が恋しい。潮の遠鳴りを数えるように聞きながら育った、父と母のいる家が」という意味です。初句で海を恋しく思う気持ちを、第二句以降では自分が育った家について表現しています。
【第三問の答え】四句切れ
第四句の「な」が終助詞で、詠嘆を表すのでここで一度文が切れます。「こんなにも想っているとあなたに打ち明けられないから恋心はさしも草が燃えるようになったが、あなたは知らないのだ。この私の燃える想いを」という意味です。
練習問題は下記ページでも紹介しているので、もっと問題を解きたい方はぜひ取り組んでみてください。