中学生のみなさん、秋らしい短歌を作ることに困っていませんか?
短歌は5・7・5・7・7の言葉で作る短い詩です。
そして短歌には俳句で使われる「季語」が必要ではないため、逆に秋らしい表現をするのが難しいのかもしれません。
ここではあえて秋らしさを出すために季語を使った短歌の作り方と、見本となるおすすめ短歌作品20選をご紹介いたします。
短歌に秋らしさを出す!秋の季語を知ろう
そもそも季語とは、「日本の四季である春・夏・秋・冬のうち特定の季節を表すために定められた言葉」のことを言います。
繰り返しになりますが、短歌には「季語」は必ずしも必要ではありません。
しかし、秋らしさを出すためにはこの「季語」を使うのが最も効果的とも言えます。
中学生が使いやすい秋の季語は下記のとおりです。
秋の季語【一覧】
【時候】
「秋」が入る時節など(秋の日、秋の朝、秋の昼、秋の暮など)秋分の日
【天体・地理】
秋の○○(空・雲・月・雨・星・山・嵐・川・田・海)いわし雲・月(三日月、名月、弓張り月)・稲妻・流星
【生活・行事】
案山子(かかし)・とろろ汁・稲刈り・干し柿・体育の日・運動会・体育祭・文化の日
【動物・植物】
枝豆・木の実・菊・かぼちゃ・唐辛子・生姜・オクラ・稲・芋・コスモス・葡萄・林檎・柚子・レモン・馬肥ゆる・渡り鳥・鮭・鰯(いわし)・秋刀魚(さんま)
秋らしい有名短歌集【10選】
それでは季語が使われている秋らしい有名な短歌を10選ご紹介します。
短歌は和歌の中の一つのジャンルですので、始めは和歌が収録されている百人一首3つを続けてどうぞ。
【NO.1】天智天皇
『 秋の田の かりほの庵の苫をあらみ 我が衣手は露に濡れつつ 』
季語:秋の田
意味:秋の田んぼで刈り取られた粗い目の苫(かや・すげ)で作られた庵にいると、露で着物が濡れてしまった
【NO.2】猿丸大夫
『 奥山に 紅葉ふみわけなく鹿の 声聞くときぞ秋は悲しき 』
季語:紅葉・秋
意味:奥深い山で落ちている紅葉を踏み分けながら鳴いている鹿の声を聞くと、秋の寂しさを一層感じた
【NO.3】大江千里
『 月見れば ちぢに物こそ悲しけれ わが身ひとつの秋にはあらねど 』
季語:月・秋
意味:秋の月を見ているとあれこれいろんなことが悲しく思われてくる。私一人だけに秋が来たわけではないけれど
【NO.4】与謝野晶子
『 秋の日は さびし切なし部屋の棚 あらゆる花をもて飾れども 』
季語:秋の日
意味:部屋の棚にあらゆる花を飾ってみても、秋の日はどうしても寂しくて切ない感じがする
【NO.5】若山牧水
『 雲されば もののかげなくうす赤き 夕日の山に秋風ぞ吹く 』
季語:秋風
意味:雲が去った後はものの影がなくなり、夕日が当たって薄赤く見える山に秋風が吹いている
【NO.6】藤原敏行
『 秋来ぬと 目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかねぬる 』
季語:秋
意味:秋が来たと目にははっきりとは見えないけれど、風の音にハッと秋の訪れを感じておどろいた
【NO.7】与謝野晶子
『 金色(こんじき)の ちいさき鳥のかたちして 銀杏散るなり夕日の丘に 』
季語:銀杏散る
意味:色づいた銀杏(いちょう)の葉がまるで金色の鳥のように夕日に照らされている
【NO.8】佐藤佐太郎
『 街灯の 光とどかぬ鋪道にて 落ち葉あかるく月照りにけり 』
季語:月
意味:街灯の光が届かない鋪道に散っている落ち葉を月があかるく照らしている
【NO.9】与謝野晶子
『 こすもすよ 強く立てよと云いに行く 女の子かな秋雨の中 』
季語:秋雨
意味:秋雨の中、コスモスに雨風に負けないで強く立っていてねと云いに行く女の子がいる
【NO.10】佐藤佐太郎
『 秋分の日の 電車にて床にさす 光とともに運ばれていく 』
季語:秋分の日
意味:秋分の日、電車の床に差している光とともに自分は運ばれていっている
こんな短歌もある!秋のオリジナル短歌集【10選】
次はみなさんと同じ中学生の方のオリジナル短歌をご紹介します。
【No.1】秋風に そろそろ山は模様替え 青から黄色くれないへ
季語:秋風
意味:秋風が吹いたらそろそろ山も紅葉が黄色やくれない色に変化していく
【No.2】日が暮れて 月ものぼりし学校に すれ違いけり憧れの君
季語:月
意味:日が暮れてしまって月も出てきた学校で憧れの君とすれ違った
【No.3】りんご剥き 見よう見まねで包丁と 格闘しては母ありがたし
季語:りんご
意味:りんごを初めて見よう見まねで剥いてみたけれど上手くいかず、いつも剥いてくれている母のありがたみを感じた
【No.4】秋の夜 ズボンのポケットに手入れて 無人駅にて電車待つ
季語:秋の夜
意味:秋の夜にズボンのポケットに手を入れながら無人駅で電車を待っていた
【No.5】宿題と うるさい母の大声に 秋の虫たち逃げて行くかな
季語:秋の虫
意味:宿題をしなさいとうるさく言う母の大声に庭で鳴いていた秋の虫たちも逃げていったようだ
【No.6】目の前を ゆったり過ぎるもみじ葉の 向こうに君がいればいいのに
季語:もみじ
意味:目の前をゆったり過ぎて行くもみじたちの向こうに想いを寄せている君がいたらいいのになあ
【No.7】秋晴れに テニスコートでラケットを のびのびと振る友のきらめき
季語:秋晴れ
意味:秋晴れの日にテニスコートでラケットをのびのびと振っている友がきらめいている
【No.8】秋の日に 父の背中についていく 山の頂目指し一歩ずつ
季語:秋の日
意味:秋の日に山の頂上まで一歩ずつ踏みしめながら父の後ろからついていった
【No.9】体育祭 終わった途端に紅葉より 受験色に染まる教室
季語:体育祭
意味:体育祭が終わったら紅葉の色が変わるよりも強く受験色に染まった雰囲気の教室
【No.10】寒暖を 繰り返すたび美しく 人のあり方紅葉のように
季語:紅葉
意味:寒暖を繰り返すたびに色が深まり紅葉のように美しい人のあり方でいたいものだ
以上、中学生向け秋のおすすめ短歌集でした!
万葉集や百人一首に載っているような古式ゆかしき言葉をつないだ短歌は難しいですが、現代語で作るのは意外とできそうですよね。