5月といえば子どもの日、端午の節句、こいのぼりですね。
外はすっかり暖かくなり若葉の様々なみどりの濃淡が美しい、初夏の気持ちのいい季節でもあります。
今回は、そんな爽やかな5月を詠ったおすすめの短歌(和歌)を20選ご紹介していきます。
5月の有名短歌(和歌)集【昔の短歌(和歌) 10選】
まずは昔の短歌(和歌)から有名なものを10選ご紹介いたします。
【NO.1】詠み人知らず
『 ほととぎす 鳴くや五月の あやめぐさ あやめも知らぬ 恋もするかな 』
意味:ほととぎすが鳴いている五月に咲いているのがあやめ草。そのあやめ草ではないけれどあやめ(物事の筋道)を見失うくらいの恋をしているのだなあ
【NO.2】大中臣能宣
『 昨日まで よそに思ひし あやめ草 けふわがやどの つまと見るかな 』
意味:昨日までは無縁だと思っていたあやめ草を、今日は私の軒先に見ているのだなあ
【NO.3】詠み人知らず
『 五月待つ 花橘の 香をかげば 昔の人の 袖の香ぞする 』
意味:五月を待って見頃になる花橘の香をかぐと昔の恋しいあの人の袖の香を思い出すよ
【NO.4】藤原定家
『 かげひたす 水さへ色ぞ 緑なる よもの梢の 同じ若葉に 』
意味:水に映る影さへ緑の色になるほど四方の梢が若葉でいっぱいだよ
【NO.5】俊恵
『 いかにせむ 山の青葉に なるままに 遠ざかりゆく 花の姿を 』
意味:どう止めればいいのか。山が青葉に覆われていくとともに記憶が遠ざかる花の面影を。
【NO.6】壬生忠岑
『 むかしべや 今も恋しき 時鳥(ほととぎす) ふるさとにしも 啼きて来つらむ 』
意味:昔のことが今でも恋しいのだろうか。ほととぎすはふるさとにも来て鳴いているよ
【NO.7】大伴家持
『 かきつばた 衣に摺りつけ 大夫(ますらお)の 着襲ひ猟する 月は来にけり 』
意味:かきつばたを摺りつけた衣を着たますらお達が猟(薬狩り)をする月がやってきたなあ
【NO.8】在原業平
『 から衣 着つつ慣れにし つましあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ 』
意味:着続けて馴染んだ唐衣のように親しんだ妻が京都にいることを、遠く離れてはるばる来てしまった旅に来て思っているよ
残り二つは2月らしく母の日に添えられそうな母を歌った和歌です。
(※ちなみに日本で初めて母の日のイベントが行われたのは明治末期ごろですので、この和歌が作られた時代にはまだありません。)
【NO.9】丈部真麻呂(はせべのままろ)
『 時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来(でこ)ずけむ 』
意味:季節ごとに花は咲くのにどうして母という名前の花は咲かないのだろうか
【NO.10】駿河国防人
『 真木柱(まけはしら) 褒めて造れる 殿のごと いませ母刀自(ははとじ) 面(おめ)変わりせず 』
意味:立派な柱を褒め称えながら造った御殿のように、お母様もいつまでも変わらずお過ごしください。変わらないお顔のままに
5月の有名短歌(和歌)集【現代短歌 10選】
次は明治以降の現代短歌から10選ご紹介いたします。
まずは端午の節句に関する歌からご紹介していきます。
【NO.1】葛原妙子
『 鯉のぼりの 大き眼球 せまりゐて 繁(しじ)に青葉と なるを怖るる 』
意味:鯉のぼりの大きな目玉が迫ってくるのが怖いので、青葉が繁ってその季節がくるのが怖いのです
【NO.2】田谷鋭
『 ビルのひま 来たりて わづか轟音の 静まるここに 鯉のぼり舞ふ 』
意味:都会のビルの隙間からわずかに轟音が静まったところに鯉のぼりが舞っているよ
【NO.3】藤島秀憲
『 新聞の 兜を父は 折らんとす 今度五十の 息子のために 』
意味:新聞を使って父は兜を折ろうとしている。今度50歳になる息子のために
子どもの日の次のイベントは母の日もありますので、次は母と子に関する短歌をご紹介します。
【NO.4】俵万智
『 バンザイの 姿勢で眠り いる吾子(あこ)よ そうだバンザイ 生まれてバンザイ 』
意味:バンザイをしている姿勢で眠っているわが子よ。そうだバンザイ、生まれてバンザイだよ
【NO.5】斎藤茂吉
『 ははそはの 母をおもへば 仮初(かりそめ)に 生れこしわれと 豈(あに)おもはめや 』
意味:母をおもへばたまたま私が生まれてきたとは決して思えないことです
次は5月の花であるバラから続けて花を詠んだものをご紹介いたします。
【NO.6】佐藤佐太郎
『 みづからの 光のごとき 明るさを ささげて咲けり くれなゐの薔薇 』
意味:みづから放つ光のような明るさを茎の上に掲げて咲いている紅の薔薇だよ
【NO.7】北原白秋
『 大きなる 紅ばらの花 ゆくりなく ぱっと真紅に ひらきけるかも 』
意味:大きな紅ばらの花がが思いがけずぱっと真っ赤に開いたことだなあ
【NO.8】与謝野晶子
『 くれなゐの 牡丹咲く日は 大空の 地に従へる ここちこそすれ 』
意味:くれない色の牡丹が咲いている日はその美しさに大空も大地に従っているような気持ちがします
【NO.9】袴田ひとみ
『 やはらかに みかんの花のにほひ来て 平らに拡がる 春ゆふつかた 』
意味:やわらかいみかんの花の香りが漂ってきて平らに拡がっていく春の夕方よ
【NO.10】与謝野晶子
『 かきつばた 扇つかへる 手のしろき 人に夕の 歌書かせまし 』
意味:かきつばたが咲いている側で扇を使っている手が白い人に、夕暮れの歌を書いてもらえたらなあ
以上、5月の有名短歌集でした!
5月のゴールデンウイーク、子どもの日以外にも昭和の日、憲法記念日、みどりの日などの祝日があります。
そして、2週目には母の日もありますので、短歌を詠む題材も見つけやすいでしょう。
自然を見渡しても咲く花は尽きませんし、初夏の気持ちのいい気候で田植えや八十八夜の茶摘みを詠うのもいいですね。