【夏の終わりの短歌 20選】心に沁みる…!!おすすめ俳人名句&一般短歌ネタ例を紹介

 

夏の終わりを詠った短歌は、秋に向かう様子を様々な季節の言葉(季節・物・植物など)にのせて表現しており、心にしみる作品が数多くあります。

 

 

暑い夏が終わりを告げる気配を上手く感じ取らせてくれる、情緒あふれるものばかりです。

 

今回は、「夏の終わりの短歌」を20首ご紹介します。

 

短歌職人
有名なものから一般の方が作ったものまで幅広く紹介していきます。ぜ
ひ短歌作りの参考にしてください!

 

夏の終わりの有名短歌【おすすめ10選】

 

【NO.1】凡河内躬恒

『 夏と秋と 行きかふ空の 通い路は かたへ涼しき 風やふくらむ 』

意味:六月の最後の日に詠んだ歌夏と秋とがすれ違う空の道は、片方に涼しい風が吹いているだろう。

短歌職人
六月は旧暦では夏の最後の月でした。その月の最後の日に詠んだ歌です。秋の気配をすぐそこに感じます。空の風の通う道を思い浮かべるなんてとても風流です。

 

【NO.2】藤原良経

『 月かげに 涼みあかせる 夏の夜は ただひとゝきの 秋ぞありける 』

意味:月の光の下で涼みながら明けるのを待つ夏の夜は、その時間だけがまるで秋のようだ。

短歌職人
夏の月明かりはとても明るく、自分の影がおりるほどです。そんな月明りの下で涼んでいると、その涼やかさに秋の気配を感じているのでしょうか。夏も終りかけた夜の情景が浮かんでくるようです。

 

【NO.3】壬生忠岑

『 夏はつる 扇と秋の 白露と いづれかまづは 置かむとすらむ 』

意味:夏が終わり、もうじき秋になる。使わなくなった扇を床に置くことと、白露が草の上に置かれること。どちらが先になるのだろう。

短歌職人
夏の終わりを感じて、扇子を置くほうが早いのか、草の上に露がつくほうが早いのかどっちになるのかな。と考えているふとした瞬間を読んでいるのが可愛らしくも感じられます。季節の移り変わりを楽しんでいるような短歌です。

 

【NO.4】樋口一葉

『 葉がくれに 一花咲きし 朝がほの 垣根よりこそ 秋は立ちけれ 』

意味:生い茂る葉のなか、隠れるようにして朝顔が咲いている。その垣根の中に、秋を見つけた。

短歌職人
朝顔は秋の季語(夏の終わりから、初秋)です。お生い茂る葉はまだ夏らしいが、その垣根に咲いた朝顔に秋を見て、夏が終わる気配を感じたのでしょう。

 

【NO.5】土田耕平

『 残暑なほ 単衣の肌に 汗ばめど 磯の木蔭に 鳴く蝉もなし 』

意味:残暑がなおも続き、単衣も舌はまだ汗ばむほどに暑いのに磯の木蔭には、もう鳴いている蝉の姿は見えない。

短歌職人
蝉と言えば、夏。真夏には姦しく鳴いています。残暑が続き汗はだくだくでも蝉の声はもう聞こえない。やはり秋になってきているのだと、音を通して感じさせてくれる短歌です。

 

 

【NO.6】従二位家隆

『 風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける 』

意味:風がそよそよと吹いて楢(ナラ)の木の葉を揺らしている。この、ならの小川の夕暮れは、すっかり秋の気配となっているが六月祓(みなづきばらえ)のみそぎの行事だけが、夏であることの証なのだった。

短歌職人
六月祓(みなづきばらえ)は今の八月上旬ごろに当たる時期に行われていた行事です。秋の気配がしていても、行事は夏のものなので、まだ夏なのだなと気づかされているのでしょうか。

 

【NO.7】木下利玄

『 くろみもつ 葉ずゑに紅き花つくる 夾竹桃の夏のあはれよ 』

意味:黒い葉の先に紅い花を咲かせる夾竹桃(キョウチクトウ)は、まだ夏であることを思わせる。 夏にしか花を咲かせない夾竹桃を眺めながら、残暑を感じている。

短歌職人
夏にしか花を咲かせない夾竹桃。その花を見て、しみじみと夏の趣を感じている作者の心が伝わってきます。

 

【NO.8】俊恵

『 岩間もる 清水を宿にせきとめて ほかより夏を過ぐしつるかな 』

意味:岩から湧き出る清水を我が庵に流れるよう堰き止めて、世間の暑さとは別のような夏を過ごした。

短歌職人
岩からの湧水を自分の家に流れるように堰き止めて、簡易プールを作って遊んだのでしょうか。その思い出を詠んだ、とても面白い短歌です。

 

【NO.9】俵万智

『 思い出の一つのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ 』

意味:夏の終わりに、しまおうとした麦わら帽子、そのてっぺんに押されてくぼみが残っている。いびつになってしまってその球面のへこみを見ていると夏の思い出がよみがえる。

短歌職人

麦わら帽子のへこみを見て、思い出がよみがえる。いびつなへこみがなんだか、痛みのような思い出に感じます。楽しかった思い出ばかりではないのかもしれません。

 

【NO.10】小島ゆかり

『 あの夏と呼ぶべき夏が皆にあり候うごかして氷みづ飲む 』

意味:誰にしも「あの夏」と思い出して記憶に手繰り寄せられるような夏がある。言われてみると、ああ本当だなと思うのです。

短歌職人
氷水を飲んだ時、ふとああ、あの夏。と思い出す夏が皆さんにもありますよね。大人になるにつれ思い出に浸る瞬間が増えていくような気がしています。「あの夏」がどんなものでも、自分だけの宝石のような思い出です。

 

夏の終わりの一般短歌ネタ【おすすめ10選】

 

【NO.1】『 眠れずの 夜に見上ぐは こうこうと 夏の終わりの 月雲まだら 』

短歌職人
眠れない夜。眠れない理由はきっといろいろあるのでしょう。見上げた夜空の月はとても煌々と明るい。月雲がまだら、自分の心のまだらに何かが覆っているのでしょうか。

 

【NO.2】『 夕風が 夏の終わりを 知らせても 心の夏は 始まりもせず 』

短歌職人
季節は移ろい、夏の終わりになっているのに心が置いていけぼりになっている。そんな様子を感じます。時間と季節が自分を置いて過ぎ去っていく、少し物悲しい気持ちが伝わってきます。

 

【NO.3】『 さわやかな 朝の日差しを 浴びながら 夏の終わりを 感じてもいる 』

短歌職人
朝日はまだ夏のさわやかさがあるのに、夏が終わろうとしている。それを感じ取ってしまう何かを察したのでしょう。まだ夏が終わらないでほしいような、そんな気持ちの短歌です。

 

【NO.4】『 終わらない 夏の夢から 始まった 夏の終わりを また始めたい 』

短歌職人
夏の終わりを再び始めたい。何か心残りがあったのかもしれません。終わらない夏。名残おしいのが伝わってきます。

 

【NO.5】『 夕の空 むらさき系の グラデーション 安らかに見ゆ 夏の終わりに 』

短歌職人
夏も終わりだなと、夜の始まりの夕の空を見上げた。すると素敵なグラデーションが眼前に広がっていたのでしょう。夏の終わりを静かに感じている短歌です。

 

 

【NO.6】『 蟋蟀に 夏の終わりを 感じつつ 帰宅後すぐに 冷房をつける 』

短歌職人
夏の終わりを感じていても、まだ残暑厳しい。帰ったら「すぐに冷房をつける」の表現で、家の中に熱気がこもっていた様子が伝わってきます。

 

【NO.7】『 涼しげな 夜空に響く 風鈴の 夏の思い出 片付け忘れ 』

短歌職人
秋が来ようとしていても、まだ風鈴は片付けていない。それを見ながら夏の思い出もまだ、思い出にはできないのかもしれません。そんな気持ちを詠っているような気がします。

 

【NO.8】『 何事も なく過ぎていく 日常が 幸せなんだと 夏の終わりに 』

短歌職人
本当に何気ない瞬間、夏の終わりに幸せを感じた。とても素敵な短歌です。ストレートに気持ちが伝わってきます。

 

【NO.9】『 きみはよく 太陽似合う 少年で 木陰は夏の 終わりのにおい 』

短歌職人
夏の終わりのにおい。季節ごとに、においを記憶とともに覚えている。そのにおいを木陰で感じ、太陽の似合うきみを、きっと夏がくるたびに思い出すのかもしれません。

 

【NO.10】『 眠れない 夏の終わりの 夜重く 雨だれじゃかき 消せない耳鳴り 』

短歌職人
耳鳴りの表現が、何か悩ませるような出来事を想像させます。夏の終わりの重い雨でも消せない、そんな作者も感情が伝わってくるような短歌です。

 

以上、夏の終わりを歌った短歌集でした!

 

 

いかがだったでしょうか?

 

今回紹介した短歌は、夏への名残惜しさや、秋へ向かう待ち遠しい気持ちなどがフワッと心の中に現れるような素敵な短歌ばかりでした。

 

夏から秋に変化していくと日が短くなって、暑い夏が終わってしまう寂しさもあります。

 

このような気持ちは時代を問わず、短歌を詠みたくなってしまいますね。

 

短歌職人
みなさんもぜひ、自分の気持ちを短歌にしたためてみてください!