夏と言えば、花火大会や夏祭り、お盆の帰省やキャンプなど、さまざまなイベントがたくさんありますよね。
忘れられない思い出ができる季節ですから、短歌を作るにはピッタリかもしれません。
しかし、「短歌を作るってなんだか難しそう…」と思う方も多くいらっしゃるかと思います。
ただ、コツさえつかめば、あなたも簡単に短歌を作ることができます。
今回は、誰でも簡単にできる夏らしい短歌の作り方をご紹介していきます。
目次
そもそも短歌って何?基本的なルールを知ろう!
短歌とは、和歌の形式のひとつで5・7・5・7・7の31音からなる短い詩のことを言います。
第1句から第3句(5・7・5)までを上(かみ)の句、第4句から第5句を下(しも)の句と言います。
【例】夜明けて(5) 気づく休みの(7) 短さを(5) 嘆く間に(7) 終わる休みぞ(7)
(※ちなみに、言葉の数え方ですが、「ちゃ」や「って」などに使われている小さい文字「ゃ」「っ」などは、それだけでは1音に換算しません。この場合、「ちゃ」で1音、「って」で1音と数えていきます)
短歌は、恋心や景色を言葉で表現したりして作者の心情を描いたり、抒情的な作品が多いことが特徴です。
また、短歌の数え方は、俳句のように一句、二句…と数えるのではなく、一首、二首…と数えていきます。
また、和歌と短歌の違いですが、和歌とは中国の“漢詩”に対して、“やまとうた”という意味を持っていて、これは日本固有の詩歌の総称です。ですので、短歌も、和歌の中の一種であると言えます。
短歌と言う言葉が一般的になったのは、明治時代から。それまでは、短歌は“和歌”と呼ばれていました。
夏の短歌の作り方を紹介!
(1)まずは夏の季語を選ぼう!
短歌を作るにあたって、まずは夏の【季語】を選びましょう。
【季語】とは、俳句や短歌などで、春夏秋冬の季節の感じを表すために、その季節を示す言葉として定められた言葉のことです。
俳句には必ず季語を入れなければならないというルールがあるのですが、短歌には必ずしも季語を入れる必要はありません。
ですが、季節の短歌を作る上では、その季節を表現する【季語】は欠かせないものです。
ここでは、夏の季語についてご紹介します。なるべく現代の生活から想像しやすいものを選んでみました。
冬の季語
- 【時候】暑き日・暑し・涼し・夏の暁・夏の夕・夏の夜・夏の宵・短夜・晩夏・青嵐・風薫る・雷・くだり・雲の峰・夏の雨・夏の霧・夏の雲・夏の空・夏の日・にじ・南風・夕立ち など
- 【地理】赤潮・泉・清水・滝・夏野・夏の海・滝・夏野・夏の海・夏の川・夏の山・夏富士・雹(ひょう)・氷河 など
- 【生活】アイスクリーム・アイスコーヒー・簾(すだれ)・汗・汗疹(あせも)・甘酒・網戸・アロハシャツ・烏賊釣り・団扇・打ち水・扇・蚊帳・蚊遣火・蚊取り線香・金魚すくい・草笛・葛饅頭・サイダー・砂糖水・扇風機・水中眼鏡・半ズボン・ハンモック・冷酒・ビール・昼寝・風鈴・水遊び・水鉄砲・浴衣・夜店・ラムネ など
- 【動植物】青蛙・石鯛・亀の子・雀の子・カワハギ・蟹・金魚・山女・雷鳥・シロアリ・なめくじ・カタツムリ・青葉・パセリ・パパイヤ・ペチュニア・臼の実・青みどろ・水草の花 など
(2)「場面」や「気持ち」を切り取り、伝えたいものを決めよう
次は、短歌に詠んでみたい「場面」や「気持ち」を想像してみましょう。
短歌の作るとき、「場面」や「気持ち」をいきなり想像することは、最初のうちは難しいかもしれません。
そのため、先ほど選んだ「季語」をもとに「場面」や「気持ち」を想像してみましょう。
【例】季語「夏休み」の場合
自分の夏休みの経験を思い出してみるといいかもしれませんね。
例えば、「家族と海水浴に行った」「恋人と夏祭りに行った」「友達と花火大会に行った」など。
書いてみたい「場面」が決まったら、次はその時に感じた「気持ち」を書きだしてみましょう。
例えば、【夏祭り】という場面では、「たくさんの夜店にわくわくした」「浴衣を着られてうれしかった」「好きな人とデートしてドキドキした…」など、出来るだけ具体的に書きだせるとよいでしょう。
(3)五・七・五・七・七の形にあてはめて読もう
短歌のルールとして、31音で構成しなければならないという決まりがあります。
ですので、先ほど書き出した「場面」や「気持ち」の状態を、すべて短歌として詠むことはできません。5・7・5・7・7の字数に入るように、言葉を選んで表現してみましょう。
この時に注意したいポイントが、「自分の感情の直接的な表現を使わない」ということです。
例えば、「楽しい」「悲しい」という感情をそのまま短歌に詠んでしまうと、読んだ人の想像が膨らまず、心に残らない作品となってしまいます。
どのように表現すれば、「楽しい」という言葉を直接使わないで、自分の気持ちを読む人に伝えられるか考えてみるとよいでしょう。
例
- 楽しい・・・心踊る/うきうきする/明るい気分になる/元気になる/気分がよい
- 悲しい・・・切ない/心痛む/物悲しい/やるせない/やりきれない
(4)読んでみて違和感があれば、言葉を変えてみよう
短歌と言うと、「即興で作るものなのかな?」とイメージされがちですが、本来は何度も書き直し、推鼓しながら完成を目指すものです。
作りっぱなしにするのはなく、後から見直したり、何日か経ってから言葉を変えてみることも大切です。
例えば、「夏祭り」という言葉でも、「夏祭りに」という表現と、「夏祭りの」という表現では、言葉の意味や伝えたい言葉も変わってきますよね。
また、伝えたいワードは決まったけど、読んでみたら「5文字や7文字にぴったり収まらない…」「何となく違和感がある…」という時もあります。
そういう時は、言葉を変えてみましょう。
多少言い回しを変えるだけでしっくりくることもあります。似たような言葉を思い浮かべ、ニュアンスを調整すればより完成度が高くなるでしょう。
例
- 考える ⇔ 思いつく
- しかし ⇔ それなのに
- 試みる ⇔ チャレンジ
- 嬉しい ⇔ 喜ばしい
- すごい ⇔ 素晴らしい
- 悲しい ⇔ 物寂しい
(5)表現技法(切れ字や比喩)を活用してみよう
短歌には、さまざまな表現技法があり、短歌を作る際に手助けをしてくれます。一般的な表現技法をご紹介しますので、ぜひ活用してください。
表現技法の例
- 枕詞(まくらことば)…特定の語の前につけて調子を整える言葉。
ふつう5音からなり、万葉集の頃から用いられています。
例:【たらちねの】母 、【ひさかたの】天・雨・光、【あらたまの】年・月・日、【あをによし】奈良
- 掛詞(かけことば)…古文において、1つの言葉に2つの意味を持たせるもの。
例:花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世に【ふる】 【眺め】せしまに (小野小町)
【ふる】は、「降る」と「経(ふ)る」が掛けられており、【眺め】は、「眺め」と「長雨」がかけられています。
- 破格(はかく)…31音を破り、印象を強める表現技法のことです。音が多いものを「字余り」、少ないものを「字足らず」と言います。
- 倒置法(とうちほう)…語順を逆にして、意味を強める表現技法のことです。
例:「朝が来た」→「来た、朝が」
本来の語順を入れ替えることでインパクトが生まれます。
- 比喩法(ひゆほう)…ある言葉を、他のものに例える表現技法のことです。
「~のように」など直接的に例えることを【直喩法】、直接的な方法を使わない技法を【隠喩法】といい、人間ではないものを人間のように例えることを【擬人法】と言います。
- 反復法(はんぷくほう)…同じ語句を繰り返して、感動を強める表現技法のことです。
- 体言止め(たいげんどめ)…最後の句(絶句)を名詞・代名詞で止め、短歌が終わったあとに余韻を残します。
- 切れ字(きれじ)…短歌や俳句などで、意味の切れるところに置く言葉のことです。句点「。」を置く位置に入れる言葉、と思うとわかりやすいでしょう。また、切れ字を用いる時には、「かな」「や」「けり」という3つの言葉が使われています。
「かな」は感動や詠嘆を表し、末尾に使われることが多いです。
「や」は詠嘆や呼びかけを表し、上の句に使われることが多いです。
「けり」は断言するような強い調子を表し、末尾に使われることが多いです。
例:白鳥は かなしからずや/空の青 海のあをにも 染まずただよふ(若山牧水)
この歌では、/を入れた部分が句切れになっており、そのことから『二句切れ』だと言えます。
現代語訳では「白鳥は悲しくないのだろうか。空の青い色にも海の青い色にも染まらずに、ひとり漂っている」と、句切れのところに「。」が入るのがわかりますね。
参考になる!!おすすめ素人短歌を紹介!
ここからは、素人の方々が作った夏の短歌についてご紹介したいと思います。
【NO.1】
『 夏祭り 豪雨の中を お迎えに 来てくれた君が 王子に見えて 』
季語:夏祭り
短歌の中には直接は書かれていませんが、「王子に見える」という表現から、「君」という人物は、作者の恋人、または好きな人、ということがわかりますね。
夏祭りの場面を詠んだ歌ではありませんが、「豪雨」というところからも、夕立が多い夏の天気を表しており、短歌の中にうまく夏らしさを出しています。
【NO.2】
『 空でなく 川に映った 花火見る 見下ろす空は ひとり占めだね 』
季語:花火
花火大会と言えば、大きな川の河川敷で行われることが多いと思います。
他の人が、花火が打ち上げられている夜空を見上げている中、作者だけは川の水面に映った花火を見下ろしている、という一首です。
おおぜいの人が顔を上げている中、作者ひとりだけがうつむいて、水面に映る花火を独り占めしている、という光景が目に浮かびます。とてもロマンチックな一首です。
【NO.3】
『 孫と行く 海水浴で 波かぶり ひさかたぶりに 潮水あじわう 』
季語:海水浴
おじいさんと孫の微笑ましい姿を描いた一首ですね。
作者は自分の子どもたちが大きくなってしまってからは、ずいぶん長い間海水浴に行っていなかったのでしょう。
【NO.4】
『 つむじ風 青天井に ふきすさぶ 麦わら帽子の リボンをつれて 』
季語:麦わら帽子
青天井とは、青空のこと。つむじ風が巻き起こり、麦わら帽子が飛ばされてしまった場面を詠んだ歌かと思います。
真っ青な空にくるくると舞い上がる麦わら帽子、そのリボンが風にはためいていて、まるで、つむじ風に連れていかれたように見えたのでしょう。
大きな空と小さな麦わら帽子の対比がとても美しく、夏らしいさわやかな一首だと言えるでしょう。
【NO.5】
『 甥っ子の 夏の思い出 かき氷 泳いだ海より 大きく描く 』
季語:かき氷
「大きく描く」という言葉から、夏休みの思い出を絵に描いているのでしょう。たいていの人は、大きな海を大きく描くものですが、作者の甥っ子は、それよりももっと大きなかき氷を描いたのですね。
おいしいかき氷を食べたということが、どれほどの思い出になったのかが伝わってきます。思わずクスッと笑ってしまいそうになる一首です。
さいごに
さいごに、短歌を作る上でのポイントをまとめてみましたので、再度ご確認下さい。
- 短歌は、5・7・5・7・7の31音で作られている
- 季節に合った季語を選ぶことで、夏らしさを表現することができる
- 場面や気持ちを切り取り、伝えたいものを決める
- 必ず、後から推鼓する
- 切れ字や比喩法などの表現技法を活用する
いかがでしたでしょうか?本記事では、季語を活用した夏の短歌の作り方についてご紹介しました。たくさんの季語はもちろん、短歌ならではの表現技法やルールをうまく利用して、面白い一句や心に残る一句を作っていただければ幸いです。