【紫陽花おすすめ短歌集 20選】季節感を感じる!!有名短歌&一般短歌を紹介!

 

新緑が過ぎ梅雨前線がやってくる頃紫陽花の季節が訪れます。

 

曇り空の下で鮮やかに咲く紫陽花は人の心を惹き、雨に濡れて咲く姿には情緒があって、短歌でも多くの歌人が題材にしてきました。

 

今回は、そんな「紫陽花(あじさい)」を題材にして詠まれた短歌を20首紹介します。

 

 

短歌職人
有名なものから一般の方が作ったものまで幅広く紹介していきますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

 

紫陽花を題材にした有名短歌【おすすめ10選】

 

短歌職人
まずは古代から近代までの有名歌人が詠んだ紫陽花の和歌・短歌を10首ご紹介します。

 

【NO.1】橘諸兄

『 あぢさいの 八重咲くごとく 八つ代にを いませ我が背子 見つつ偲はむ 』

【意味】八重咲きの紫陽花のようにあなたに繁栄がありますように。紫陽花を見る度にあなたを思い出すことにします。

短歌職人
「八重咲く」は多くの花が重なって咲いている様子を言います。球状に咲く紫陽花は華やかでボリュームがあるため、作者はそこから繁栄を連想したのかもしれません。

 

【NO.2】大伴家持

『 言問はぬ 木すら紫陽花 諸弟(もろと)らが 練りのむらとに あざむかえけり 』

【意味】ものを言わなくても紫陽花は色が変わる。まして口の達者な諸弟の言葉にはすっかり騙されてしまったよ。

短歌職人
口上手な人に騙されてしまったという歌です。「ものを言わない紫陽花ですら」と比較に使われているところが面白く、作者は土の質で色が変わる紫陽花に不実な印象を持っていた様子です。

 

【NO.3】穂積皇子

『 茜さす 昼はこちたし あじさゐの 花のよひらに 逢ひみてしがな 』

【意味】昼間は仰々しい紫陽花の四片の花びらが宵になって美しく見える頃に逢いたいものだ。

短歌職人
「よひら」が紫陽花の「四片(よひら)」の装飾花と「宵(よひ)」の掛詞となっています。花の大きい紫陽花は、はかない美しさを趣とする古代ではあまり好まれていなかったようです。薄暗い中で鑑賞するくらいの方が丁度いい花という認識だったのでしょう。

 

【NO.4】若山牧水

『 紫陽花の その水いろの かなしみの 滴るゆふべ 蜩(かなかな)のなく 』

【意味】紫陽花のその水色が悲しみに滴る夕べにカナカナが鳴く。

短歌職人
雨に濡れて咲く紫陽花は近代では哀愁を感じさせるものとして歌人から好まれました。この歌でも、濡れる紫陽花が花の色を溶かしたような水色の涙を落とす姿を思わせます。カナカナゼミの声が更にもの悲しさを募らせています。

 

【NO.5】与謝野晶子

『 紫陽花も 花櫛したる 頭をば うち傾けて なげく夕ぐれ 』

【意味】紫陽花も花ぐしをしている頭を傾けて嘆く夕暮れ。

短歌職人
紫陽花は何が悲しくてうつむいていたのでしょう。花ぐしをしていることからこの紫陽花は女性のイメージで、作者の心境を投影したものかもしれません。作者もまた夕暮れの中で寂しさや悲しさを感じていたのではないでしょうか。

 

【NO.6】石川啄木

『 昨日より色のかはれる紫陽花の瓶をへだてて二人かたらず 』

【意味】昨日とは色が変わった紫陽花の瓶を隔てて二人は語らず。

短歌職人
二人が押し黙ったまま時だけが過ぎていく情景が想像されます。二人の間にはテーブルなどがあり紫陽花を活けた瓶が置かれているのでしょう。色あせて元気のなくなったであろう紫陽花が沈黙の重さと憂鬱さを強調しているように感じます。

 

【NO.7】釈迢空

『 紫陽花の まだとゝのはぬうてなに、花の紫は色立ちにけり 』

【意味】紫陽花のまだ整わぬガクに、花の紫が色めきたっているな。

短歌職人
「うてな」とは花のガクのことです。紫陽花の花のように見える部分はガクが発達した装飾花ですが、この歌は花の形になりかけのガクが色づいていることを詠んだものです。「色立ち」という表現が開くのを待ちきれずに花が色づく様子や、咲こうとする紫陽花の命を感じさせます。

 

【NO.8】寺山修司

『 森駈けて きてほてりたる わが頬を うずめんとするに 紫陽花くらし 』

【意味】森の中を駆けてきて火照った頬をうずめようとした紫陽花の暗さ。

短歌職人
森を駆ける様子や火照った頬に若さや生命力が感じられ、紫陽花の暗さとは対比になっています。紫陽花の冷たい温度を思わせ、密集する紫陽花の花の中には暗い空間があることを想像させます。

 

【NO.9】五味保義

『 光なき 玻璃窓一めんに あぢさゐの 青のうつろふ 夕ぐれを居り 』

【意味】光のない玻璃窓一面に紫陽花の青色が見える夕暮れに居る。

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「玻璃」はガラスのことです。薄暗い夕暮れの中で窓一面に広がる紫陽花の青色が強調されています。作者は花の鮮やかな青を眩しく感じながら窓を見つめていたのではないでしょうか。

 

【NO.10】高野公彦

『 観る人の まなざし青み あぢさゐの まへうしろなき うすあゐの球 』

【意味】見る人の眼差しが青みがかる紫陽花の前も後ろもない薄い藍の玉。

短歌職人
紫陽花を見つめる瞳に花の青色が映り、そのまま瞳の色や眼差しまで青く変えてしまったという内容です。それ程に美しい青色だったのでしょう。前も後ろもない球状の紫陽花は色だけでなく形の美しさをも思わせます。

 

紫陽花を題材にした一般短歌【おすすめ10選】

 

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ここからは一般の方が詠んだ紫陽花の短歌を20首紹介していきます。

 

【NO.1】

『 日に褪せず 雨に色増す 紫陽花の 鮮やかたるや 言葉尽くせず 』

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暑い日の陽射しにも色あせることなく雨が降るごとに鮮やかさを増す紫陽花の美しさを詠んだものです。いきいきとした紫陽花が咲き誇る様子を思わせます。

 

【NO.2】

『 紫陽花は まだ色という 色持たず あじさい寺に 静謐(せいひつ)は満つ 』

短歌職人
「あじさい寺」と呼ばれる寺は全国各地にあり、紫陽花の花を見る人でにぎわいます。この歌ではまだ花が咲く前の寺の静けさが詠まれていて、間もなく花の色で満ち人で満ちるだろうことを思わせ、今のおごそかな静けさが強調されています。

 

【NO.3】

『 紫陽花に 青を盗られた 梅雨の空 涙に濡れる コンクリの森 』

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梅雨の曇天は紫陽花に青色を奪われていたからなのですね。地上では青い紫陽花が美しさを誇るように咲いているのでしょう。対して「コンクリの森」が無機質な灰色を思わせて空の悲しみを強く感じさせます。

 

【NO.4】

『 立ち枯れの 紫陽花仰ぎ 雨蛙 季節を幾つ 超えてゆけるか 』

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雨が終わり、雨蛙が立ち枯れた紫陽花を残念そうに見上げて佇む様子が想像されます。紫陽花は枯れてしまっても蛙はこの後も生きていけよと、応援するような作者の目線を思わせます。

 

【NO.5】

『 紫陽花と 雨に呪術を かけられて 道行く人が 動けずにいる 』

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「呪術をかけられて」という表現がとても面白いです。雨に濡れる紫陽花に見とれてか立ち止まってしまった人の様子を詠んだもので、紫陽花の魅力が巧みに表現されています。

 

【NO.6】

『 紫陽花が 過ぎれば夏も 過ぎていき 衣更えする 街のマネキン 』

短歌職人
紫陽花の姿に作者は季節を思い、花が終われば夏も終わるのだと感じているのでしょう。「街を見ればほら、マネキンの服も変わっている」と夏が過ぎていくのを実感している歌です。

 

【NO.7】

『 母の手で 水切りされる 紫陽花の 冴え冴えと青い 青い魂 』

短歌職人
「水切り」はバケツなどに入れた水の中で茎を切ることで、花を元気にして長持ちさせる効果があります。作者は新しい断面から水を吸う紫陽花に生命力を感じ、青い花をより青く感じたのではないでしょうか。反復法によって青さが際立ち、深く印象に残ります。

 

【NO.8】

『 紫陽花の ように手をかえ 品をかえ 色をかえても あなたは来ない 』

短歌職人
花の色を変える紫陽花には「七変化」という別名があります。作者は「あなた」の気を引くために自分を何通りにも変化させたのでしょう。実らない恋心が切なく、いじらしく感じられる歌です。

 

【NO.9】

『 お前だけ 生き生きしてるな 紫陽花よ 世界はこんなに びしゃびしゃなのに 』

短歌職人
雨が降り何もかもが「びしゃびしゃ」に濡れています。作者も雨に打たれ、おそらくは心も打ちひしがれているのではないでしょうか。口語の語りかけからは紫陽花への羨ましさと「何でお前だけ楽しそうなんだ」というような嫉妬が感じられます。

 

【NO.10】

『 梅雨明けて 紫陽花の色 薄くなり その青、空に 帰る七月 』

短歌職人
読点の使い方が上手く、「その青、空に」と一呼吸置くことで「青空に」と読み間違えないようにの配慮と、「青色があの、あの空を目指して上って行くのだ」というような物語性を感じさせます。青色を取り戻した七月の空の美しさと眩しさが想像されます。

 

以上、紫陽花(アジサイ)を題材にした短歌集でした!

 

 

皆さんは何色の紫陽花が好きでしょうか。

 

植木では青や紫、ピンクが多いですが、花屋さんではオレンジや黄色の紫陽花なども見ることができます。

 

また、紫陽花は色によって花言葉も違ってくるので、花の色と関連させて短歌に詠みこむのも一興です。

 

短歌職人
皆さんも紫陽花を見てきれいだなと感動したり紫陽花から何かを連想したりすることがあったら、その気持ちをぜひ短歌で表現してみてください。