【寒いねと話しかければ寒いねと答える人のいるあたたかさ】徹底解説!!意味や表現技法・句切れなど

 

万葉の時代より親しまれてきた日本の伝統文学のひとつである「短歌」。

 

短歌と聞くと高尚で難解なイメージをもたれるかもしれませんが、決してそうではありません。

 

しかし、現代歌人の作品には、従来の短歌の概念を覆すカジュアルな表現で、世代を問わず楽しめる歌も多くあります。

 

その中から今回は、俵万智の寒いねと話しかければ寒いねと答える人のいるあたたかさという歌をご紹介します。

 

 

本記事では、寒いねと話しかければ寒いねと答える人のいるあたたかさ」の意味や表現技法・句切れ・作者について徹底解説し、鑑賞していきます。

 

「寒いねと話しかければ寒いねと答える人のいるあたたかさ」の詳細を解説!

 

「寒いね」と 話しかければ 「寒いね」と 答える人の いるあたたかさ

(読み方:さむいねと はなしかければ さむいねと こたえるひとの いるあたたかさ)

 

作者と出典

この歌の作者は「俵万智(たわら まち)」で、現在も歌人やエッセイストとして活躍しています。若い女性の心情をみずみずしく歌い上げ、与謝野晶子以来の天才歌人とも称されています。

 

俵万智の作品は教科書でも取り上げられているので、一度は耳にしたことがある方も多いでしょう。

 

この歌の出典は「サラダ記念日」。

 

サラダ記念日は1987年に発行された俵万智さんの第一歌集です。

 

 

現代語訳と意味(解釈)

この歌の解釈は・・・

 

「身も心も冷え切るような厳しい寒さの中で、「寒いね」と話しかければ「寒いね」と、そのまま返事をしてくれる人が身近にいる。それだけであたたかくなるように感じる」

 

となります。

 

この歌には、古い時代の和歌や短歌に使われていた「文語」ではなく、現在の話し言葉である「口語」で詠まれています。そのため現代語訳の必要はありませんので、そのままの意味で解釈しましょう。

 

文法と語の解説

特にありません

 

「寒いねと話しかければ寒いねと答える人のいるあたたかさ」の句切れと表現技法

句切れ

この歌の句切れはありませんので、句切れなしとなります。

 

最初から最後まで、するすると流れるように詠むことができます。現代短歌では切れ字を使うことが少ないため、句切れなしの歌が多いのが特徴です。

 

体言止め

体言止めとは、文末を助詞や助動詞ではなく、体言(名詞・代名詞)で結ぶ表現方法です。文を断ち切ることで言葉が強調され、「余韻・余情を持たせる」「リズム感をつける」効果があります。

 

この歌も「あたたかさ」という名詞で終わることで感動の余韻を残し、リズム感を整えています。

 

対比

対比とは二つ以上のものを並べ合わせ、それらの共通点や相違点を比べる表現技法です。それぞれの特性を強調し、インパクトを強める効果があります。

 

この歌では「寒い」と「あたたかさ」を対比し、「あたたかさ」をより強調しています。「寒い」は実際に身体で感じる冬の寒さですが、「あたたかさ」は温度としての「温かさ」ではなく、心の「あたたかさ」を意味しています。

 

「寒いね」と共感されることで、よりいっそう寒さを確信するのではなく、寒さというマイナス同士をかけあわせることで、「あたたかさ」というプラスの雰囲気が立ち上る仕組みになっています。

 

まるで不思議な化学反応のように、身体的な寒さが心のあたたかさへと変わる過程がのびやかに表現されています。

 

反復

反復とは、一首の中で同じ語または類似の語句を繰り返す表現です。言葉のリズムを整え、言葉を繰り返すことで感動を強める効果があります。

 

この歌でも「寒い」「寒いね」と繰り返されており、いかに寒い日であったかを伝えています。

 

句またがり

短歌は「五・七・五・七・七」の三十一文字に収めるのが基本の形です。しかし中には、音の句切れと意味の上での句切れが異なる場合もあります。これを「句またがり」と呼びます。

 

この歌も意味としての句切れを意識して詠むと・・・

 

「寒いね」と / 話しかければ / 「寒いね」と / 答える人の / いるあたたかさ

 

となります。

 

短歌の韻律を用いながらも、文節的なズレにより独特のリズムが生まれ、音楽性を醸し出す効果があります。俵万智の作品には45句に句またがりを用いたものが多く、彼女の歌の特徴ともいえます。

 

「寒いねと話しかければ寒いねと答える人のいるあたたかさ」が詠まれた背景

 

この歌が収録されている『サラダ記念日』は、1987年に発行されるやいなや280万部のベストセラーとなりました。当時としても異例の売れ行きで、30年以上経った今でも店頭に並べられている歌集です。

 

それまでの短歌のイメージといえば、「文学的な知識を必要とする」「老人が楽しむ趣味」など敬遠される傾向がありました。

 

ところが俵万智が詠む斬新な手法と親しみやすい表現で若い世代までも魅了し、社会現象まで巻き起こしたのでした。まさに現代俳句の先駆者ともいえる存在です。

 

この歌も、一首の中に「 」を2度も用いた口語表現や、何気ない日常のワンシーンを描いた情景に、多くの読者から高い共感を得ました。

 

しかし平易な表現で詠いあげる中でも、限られた字句の中で言外に感情を表し、深い感動を伝えるための語句選びにはずば抜けたものがあります。

 

これらの巧みな表現技法は、高等学校での国語教師の経験が活かされているのではないでしょうか。

 

 

「寒いねと話しかければ寒いねと答える人のいるあたたかさ」の鑑賞

 

何気ない会話のやりとりですが、自然と頭の中に絵が浮かぶような表現です。日常の中で、作者だからこそ気付けた小さな感動の瞬間が描かれています。

 

人間同士のつながりの大切さ、身近にいる人への愛情をさらりと会話形式で詠いあげた歌です。

 

自分の呼びかけに、そばでそのまま返事をしてくれる人がいることに「あたたかい」と詠っていますが、共感だけで言うのなら「寒いね」ではなく、「楽しいね」「美味しいね」でも良かったかもしれません。

 

しかし、寒い日だからこそ、心が温まったというのがポイントであり、最後の「あたたかさ」をより引き立たせるものとなっています。

 

この歌が持つほのぼのとした雰囲気に、作者の幸せがじんわりと伝わってきます。

 

作者「俵万智」を簡単にご紹介!

 

俵万智(1962年~)は、大阪府門真市出身の歌人です。早稲田大学に入学後、「心の花」を主宰している佐佐木幸綱に師事し、短歌を始めました。

 

1985年に大学を卒業すると、高等学校の国語教師として働きながら作歌活動を続けます。1986年には『八月の朝』で第32回角川短歌賞を受賞し、新しい感性と斬新な表現で当時の歌壇を騒がせる存在となります。

 

彼女の作品は、従来の短歌とは違い口語調で軽やかに詠んだものが多く、若い世代の人々に短歌を親しませるきっかけとなりました。恋愛や青春といった共感性のあるものから、バブル景気の豊かな消費社会をユーモアたっぷりに詠んだものなど、口語短歌の裾野を一気に広げていきます。

 

ベストセラーとなった第一歌集『サラダ記念日』をはじめ、不倫をテーマに危うい恋を詠んだ『チョコレート革命』、新たな生命を育てる喜びに満ちた『プーさんの鼻』など、多数の歌集を発行しています。

 

現在も精力的に活動しており、短歌やエッセイなどコンスタントに発表しています。

 

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