【1月の短歌(和歌)集 20選】おすすめ!!知っておきたい1月らしい有名作品を紹介!

 

みなさんは1月といえば何を思い浮かべますか?

 

新年・元旦・どんど・つらら・お餅・雪など・・・様々思い浮かぶと思います。

 

1月らしい短歌を詠むには、1月ならではの行事や自然、例えばお正月や新年の希望や雪などが入っているとわかりやすいですね。

 

今回は、主にお正月や新年を詠んだ1月の有名な短歌(和歌)を昔のものと現代のものそれぞれ10選ずつ、全20選をご紹介いたします。

 

短歌職人
ぜひ参考にしてみてください。

 

1月の有名短歌(和歌)集【昔の短歌(和歌) 10選】

 

まずは昔の短歌(和歌)から有名なものを10選ご紹介いたします。

 

【NO.1】詠み人知らず

『 あたらしき 年にはあれども 鶯(うぐいす)の なくねさへには かはらざりけり 』

意味:新しい年ではあるけれど、鶯の鳴き声までもは変わらないのだなあ

短歌職人
人間は正月を境に祝い事に染まる日が続きますが、いつもと変わらない鶯の「なくね(音)」=鳴き声を聞いてこれを詠んだということは、少し浮かれ続けている人間を自嘲気味に表したのかもしれません。

 

【NO.2】大伴家持

『 降る雪を 腰になづみて 参ゐて来し 験(しるし)もあるか 年の初めに 』

意味:降った雪を腰まで埋まりながらやってきた甲斐があることでしょう。年の初めに。

短歌職人
腰に「なづむ」までに積もった大雪の中の移動は大変ですが、それでも来て良かったと思う「験」とは、そう、新年の宴です。当時は夕方から明け方まで歌を詠みあいながら飲んでいたそうですよ。

 

【NO.3】大伴家持

『 あしひきの 山の木末の ほよ取りて かざしつらくは 千年(ちとせ)寿くとぞ 』

意味:山の木の梢のやどり木をとってかんざしにしたのは千年(の世)を祝ってのことです

短歌職人
「ほよ」=やどり木のことで、神秘的な力がこもっているとされていました。家持はその木を祝いの席で黙って頭にかざしてこの短歌を詠い、お硬い新年の席を盛り上げたのでしょう。

 

【NO.4】大伴家持

『 正月(むつき)立つ 春の初めに かくしつつ 相し笑みてば 時じけめやも 』

意味:正月の春の初めにこのように共に笑い合うのは楽しいひと時ですね。

短歌職人
家持の歌が続きますが、これも新年の宴の席で詠まれた短歌です。新年を笑い合いながら過ごせるといい一年になりそうな気がしますよね。「時じ」でそのようなタイミングではない、「けめやも」がそれを否定なので二重否定で「そんな時じゃないわけじゃない」=今の時にぴったりだね、となっています。

 

【NO.5】道祖王

『 あたらしき 年の初めに 思ふどち い群れて居れば 嬉しくもあるか 』

意味:新しい年の初めに気のあう仲間と集まっていられるのは嬉しいものですね。

短歌職人
これも仲間との新年の宴、新年会の短歌です。「思ふどち」=気の合う友達と集まってワイワイ騒ぐが楽しいのは今も昔も変わりませんね。

 

【NO.6】葛井連諸会

『 新しき 年の初めに 豊(とよ)の年 しるすとならし 雪の降れるは 』

意味:新しい年の初めに雪が降っているのは豊かな年となる前兆を示しているようです。

短歌職人
雪が降るのは吉兆と言われていたので、新年の大雪は豊作の前兆とされたようです。新年はこのようにみんなが嬉しくなることを詠んで気分を盛り上げたいものです。

 

さて、ここから先はお正月以外の短歌です。

 

【NO.7】紀貫之

『 雪降れば 冬ごもりせる 草も木も 春にしられぬ 花ぞ咲きける 』

意味:雪が降ると冬ごもりしている草も木も、春には見たことも無いような花を咲かせるのだなあ

短歌職人
雪を白い花と見立てているのが紀貫之らしい感性です。雪も積もり方にはよりますが美しさでいうと花のようにも見えますよね。「雪」を1月の季語として選んでいます。

 

【NO.8】伊勢

『 あしひきの 山ゐにふれる白雪は すれる衣の 心地こそすれ 』

意味:湧き水の井戸に降っている白い雪は摺り染めの服のような感じがします

短歌職人
「すれる衣」とは白布に草木染めで模様などを摺った衣です。「あしひきの」は「山」にかかる枕詞。白い雪を見て何を想像するかは本当に人それぞれで面白いですね。

 

【NO.9】藤原興風

『 浦ちかく ふりくる雪は 白波の 末の松山 こすかとぞ見る 』

意味:浦=入江の近くまで降ってくる雪が、末の松山を越えるような白波に見えるよ

短歌職人
山を浪が超えるかもしれないという「ありえない」オーバーな表現はこの短歌以外にもよく使われていました。「末の松山」という地名は実際に宮城県にありますが、一般的な海岸沿いにある「松の山の先端」としても使われています。

 

【NO.10】崇徳院

『 つららゐて みがけるかげの 見ゆるかな まことにいまや 玉川の水 』

意味:氷が張って磨いたような光が見えます。本当に今の様子が玉川の水なのでしょう

短歌職人
「つららゐ」=氷が張る、で川の水が凍って「みがけるかげ」は光なので月か太陽の光が当たってキラキラと美しい光景だったのですね。「玉」は宝石のことなので磨いたような、と意味を掛け合わせています。それにしても川が凍るほどの気温はどのくらいなのか、想像するだけで身震いしそうな情景です。

 

1月の有名短歌(和歌)集【現代短歌 10選】

 

次は明治以降の現代短歌から10選ご紹介いたします。

 

【NO.1】樋口一葉

『 あらたまの 年の若水 くむ今朝は そぞろにものの 嬉しかりけり 』

意味:今日は元旦。今朝は若水を汲んでいます。なんとなくですが心うれしいものです。

短歌職人
若水とは元旦の朝に初めて汲む水のことです。昨日と同じような朝、水ですが、新しい年の初め元旦というだけで気持ちもあらたまったようでなんとなく嬉しくなるものですね。

 

【NO.2】与謝野晶子

『 水盤に わが頬をうつす 若水を また新しき 涙かと見る 』

意味:若水の水面が私の頬をうつしている。また新しい涙が出ているのかとみています。

短歌職人
これも「若水」を使った短歌ですね。自分でまた泣いていると自嘲気味に水面を見ながらも「新しき」新年とかけた嬉しさも感じます。

 

【NO.3】斎藤茂吉

『 あたらしき 年のはじめは 楽しかり わがたましひを 養ひゆかむ 』

意味:新しい年のはじめは楽しいものです。私の魂(心)を養いましょう。

短歌職人
下の句で自分の所信を語っています。正月を楽しく過ごして疲れた心を養って元気になりましょう!と自分自身を奮い立たせているようです。現代人にも通じますね。

 

【NO.4】斎藤茂吉

『 白き餅(もちひ) われは呑み込む 愛染も 私ならずと 今しおもはむ 』

意味:白い餅を私が呑み込むように食べている今しがたは、煩悩(執着心)は私にはないのですよ

短歌職人
茂吉は餅が好物だったようで、呑むように食べていたのでしょうか。危険ですからちゃんと噛んで欲しいところです。下の句の解釈が難しいのですが、愛染は煩悩のことで、「今しおも」はたった今、という意味です。

 

【NO.5】正岡子規

『 暁の 外の雪見んと 人をして 窓のガラスの 露拭はしむ 』

意味:明け方に外の雪を見ようと思い、他の人に窓ガラスのつゆを拭いてもらったよ

短歌職人
子規が病気で寝たきりの状態で詠んだものでしょう。情景を自分の視点で人にやってもらったことも「人をして」とそのまま表現しているのが子規らしいですね。

 

【NO.6】正岡子規

『 枕べの 寒さばかりに あら玉の 年ほぎ縄を 掛けてほぐかも 』

意味:枕のそばにある寒暖計に新年のしめ飾りを掛けてお祝いをしたよ

短歌職人
子規は枕元に「寒さばかり」=寒暖計を置き、そこにしめ縄や橙を飾ったようです。「年ほぎ縄」はしめ縄、「ほぐ」は祝うことです。寝たきりでも季節を楽しみその自分の行動を歌に残すのが生きがいだったのでしょう。

 

【NO.7】島木赤彦

『 見ゆる限り 山の連なりの 雪白し 初日の光 さしそめにけり 』

意味:見渡す限りに連なっている山々に被っている白い雪を初日の光が染めていったよ

短歌職人
雄大な自然と雪山の美しさと初日の光の神々しさが、「山」「白」「光」という言葉でつながって、おもわず手を合わせたくなるような情景を目に浮かばせる短歌です。

 

【NO.8】長塚節

『 若水を 汲みつつ をれば標はへし ふたもと松に 日影のぼりぬ 』

意味:若水を汲んでいると木の梢が美しく見える二本の松に日がのぼってきたよ

短歌職人
元旦の朝一番に水を汲むという清々しい仕事の時に、美しい枝っぷりで縁起のいい松に朝日が当たっているのを見たら、誰しも手を止めてしばらく眺めたくなりますね。

 

【NO.9】北原白秋

『 ゐずまひに 眼先(まさき)貴(あて)なる杯や とよりと屠蘇の 注(つ)がれたるかに 』

意味:座っている自分の目の前にある貴い杯にゆっくりと屠蘇が注がれていますよ

短歌職人
「屠蘇」とは正月に飲む縁起物の祝い酒のことで、邪気を払うと言われています。それが「貴なる」杯に「とよりと」と注がれている様子がうまく表現され、正月をみんなで祝っている場面が目に浮かびますね。

 

【NO.10】馬場あき子

『 大ぶりの 椀にたつぷり 雑煮して 謹賀新年 ひとり正月 』

意味:大きなお椀にたっぷりと雑煮を入れて、謹賀新年のお祝いをひとりで迎えている正月です

短歌職人
いろんな事情でお正月を一人で過ごす方も多いと思いますが、そんなぼっちのお正月を寂しがるのではなく、「たっぷり」と雑煮を入れて昔のお正月を思い出したり、そのゆったりとした時間を楽しんでいる気持ちが伝わってきます。

 

以上、1月の有名短歌集でした!

 

1月はやはり新年、正月のめでたさを詠んだものが多いですね。

 

みなさんもそれぞれ家族や友達と過ごして新しい年を祝っていることでしょう。

 

短歌職人
年越しイベントや旅行で楽しんだことを詠むのもいいのですね!また、1月らしさを出すために新年、元旦、どんど、つらら、雪などの言葉を入れて、ぜひ自分ならではのオリジナル短歌作りにチャレンジしてみてください!