大切な家族や恋人、友人の幸せを願う気持ちは時代や国を越えて共通する思いです。
「無事でいてほしい」「病気やケガなどをしてほしくない」「辛い思いをせずに心が満たされていてほしい」と願うのは、人の自然な優しさや思いやりで、多くの短歌・和歌にもその心が詠み込まれてきました。
今回は、「幸せ」を願って詠まれた有名短歌・和歌を20首紹介します。
幸せにならなきゃだめだ誰一人残すことなく省くことなく(加藤千恵) pic.twitter.com/PmBbG0nB2x
— 田川ミメイ (@TagMimei) October 19, 2014
幸せを願って詠まれた有名短歌(和歌)集【前半10選】
まずは、明治から現代までの有名歌人が作った幸せを願う短歌を10首紹介します。
【NO.1】与謝野晶子
『 自らが 幸い君が さいはひの つゆも変わらぬ ものにてあれかし 』
【意味】私の幸せが君の幸せと少しも変わらないものでありますように。
【NO.2】石川啄木
『 さめてねて 詩にはぐくまれん 幸の君 小さきゑがほぞ 永劫に高かれ。 』
【意味】目覚めて寝て詩に育まれる幸せな君、小さな笑顔よ永遠に高くあれ。
【NO.3】島木赤彦
『 願くは 只やすらかに 眠りませ ゆきけん魂に 幸ありぬべく 』
【意味】願わくは、ただ安らかにお眠りなさい。逝こうとする魂が幸せであるように。
【NO.4】窪田空穂
『 顧みて 寂しかりけむ 前の日を 驚く日あれ 友よ女君よ 』
【意味】振り返って、寂しかった日のことを驚く日がありますように、友よ女性よ。
【NO.5】窪田空穂
『 子を持ちて 親の心を 知る人と 親を覚ゆる 人に幸あれ 』
【意味】子を持って親の心を知る人と、親を思い出す人よ幸せになれ。
【NO.6】太田水穂
『 君が身に 幸おほかれと 尾張田の 熱田の神を をろがみまつる 』
【意味】君の身の上に多くの幸せがあるようにと尾張田の熱田の神を拝む。
大切な人の無事や幸せを願って神社を参拝する気持ちは今も昔も変わりがありません。作者も「君」が自分のことよりも大切で、熱田神宮の神様に願ったのでしょう。
【NO.7】河野裕子
『 一日に 何度も笑ふ 笑ひ声と 笑ひ顔を 君に残すため 』
【意味】一日に何度も笑う。笑い声と笑顔を君に残すために。
【NO.8】加藤千恵
『 幸せに ならなきゃだめだ 誰一人 残すことなく 省くことなく 』
【意味】幸せにならなきゃだめだ。誰一人残すことなく、省くことなく。
【NO.9】永井祐
『 1千万円 あったらみんな 友達に くばるその僕の ぼろぼろのカーディガン 』
【意味】1千万円あったら全部友達に配る、その僕のぼろぼろのカーディガン。
【NO.10】天崎武
『 大好きな人に幸あれ 今すぐに幸あれ 日常的に幸あれ 』
【意味】大好きな人が幸せであるように、今すぐに、毎日幸せであるように。
幸せを願って詠まれた有名短歌(和歌)集【後半10選】
次に、飛鳥時代から南北朝時代の有名歌人が詠んだ幸せを願う和歌を10首紹介します。
【NO.11】柿本人麻呂
『 春されば まづさきくさの 幸くあらば 後にも逢はむな 恋ひそ吾妹(わぎも) 』
【意味】春になればまず咲く三枝のようにあなたが幸せならばまた会えるだろう、恋焦がれないでおくれ、あなたよ。
【NO.12】柿本人麻呂
『 志貴島の やまとのくには 事魂の さきはふくにぞ まさきくありこそ 』
【意味】日本の国は言霊が幸せを呼ぶ国だから、幸せでいてください。
【NO.13】丈部稲麻呂
『 父母が 頭かき撫で 幸くあれて いひし言葉ぜ 忘れかねつる 』
【意味】父と母が頭をかきなでながら「幸せでいてね」と言った言葉が忘れられない。
【NO.14】光孝院
『 かくしつつ とにもかくにも ながらへて 君が八千代に あふよしもがな 』
【意味】このように、とにもかくにも生きながらえて、あなたの長寿の祝いの席でまた会いたいものだ。
【NO.15】大中臣能宣
『 君がため けふ切る竹の 杖なれば またも尽きせぬ よゝぞこもれる 』
【意味】あなたのために今日切った竹の杖なので、まだまだ尽きない世が込められています。
【NO.16】詠み人知らず
『 わが齢 君が八千代に とりそへて とどめおきてば 思ひ出にせよ 』
【意味】わたしの寿命をあなたの長寿に足して、長生きしたら私を思い出してください。
【NO.17】藤原有家
『 百とせのちかづく坂につき初めて今行末もかゝれとぞ思ふ 』
【意味】百歳の近付く坂に杖をつき始めたあなたの行く末も今日のように幸せであるようにと思う。
【NO.18】紀貫之
『 春くれば 宿にまず咲く 梅の花 君が千歳の かざしとぞ見る 』
【意味】春がくれば家の庭に真っ先に咲く梅の花は、あなたの長寿を祝うかんざしと思って見る。
この歌も長寿を祝う席で披露されたものです。春一番に花を咲かせる梅は縁起が良くめでたい花で、長寿を迎えて素晴らしいあなたにこそふさわしい花だとして、更なる繁栄を願った歌です。
【NO.19】花園天皇
『 今更に わが私を 祈らめや 世にあれば世を 思ふばかりぞ 』
【意味】今更我が身のことで祈ることがあろうか。世にあれば世を思うだけだよ。
【NO.20】後醍醐天皇
『 世をさまり 民やすかれと 祈るこそ 我が身につきぬ 思ひなりけれ 』
【意味】世の中が平和で民が心穏やかであれという祈りこそが、私の精一杯の思いなのだ。
作者は南北朝時代の天皇で、内乱の中に身を置いた天皇だからこその祈りが歌に込められています。国の民を慈しむ心や、無事と幸せを心から願っていることが感じられます。
以上、幸せを願って詠まれた有名短歌/和歌集でした!
「幸せを願う」とは、相手にとって良いことがあるように、悪いことが起こらないようにと思いやる気持ちでもあります。
皆さんも身近な人や、大好きで憧れている人に嬉しいことがあったらいいなと思うことがあるのではないでしょうか。誰かの幸せを願う気持ちを言葉にしてみましょう。