「ふるさと」という言葉は、時として人に懐かしさや温もりを感じさせます。
短歌にもふるさとについて詠まれたものは多くあり、離れた故郷への恋しさや、生まれた土地を自慢に思う気持ちなどが歌われています。
ふるさとの
山に向かひて
言ふことなし
ふるさとの山は
ありがたきかな
石川啄木
いいお天気✨✨
ふるさとの山🗻岩手山🗻 pic.twitter.com/wWwSl41MUT— tomo-tomo (@ouchitomo) January 25, 2015
今回は、「ふるさと」について詠んだ短歌をご紹介します。
故郷(ふるさと)について詠んだ有名短歌【10選】
【NO.1】大伴旅人
『 浅茅原 つばらつばらに 物思へば 古りにし里し 思ほゆるかも 』
意味:物思いにふけっていると、つくづく故郷の景色である浅茅(あさじ)の原が思い出されて懐かしいよ。
【NO.2】能因法師
『 思ふ人 ありとなけれど 故郷は しかすがにこそ 恋しかりけれ 』
意味:想い人がいるというわけではないけれど、やはり故郷は恋しいものだよ。
【NO.3】正岡子規
『 くれなゐの 梅ちるなべに 故郷に つくしつみにし 春し思ほゆ 』
意味:赤い梅の花が散ると、故郷でつくしを摘んで過ごした春を思い出すよ。
【NO.4】石川啄木
『 ふるさとの 山にむかいて 言うことなし ふるさとの山は ありがたきかな 』
意味:故郷の山に向かい合えば言葉は何もない。故郷の山はありがたいものだ。
【NO.5】寺山修司
『 ふるさとの 訛りなくせし 友といて モカ珈琲は かくまで苦し 』
意味:故郷の訛りがなくなった友と話している自分のモカ珈琲はこうまで苦い。
【NO.6】与謝野晶子
『 ふるさとの 潮の遠音の わが胸に ひびくをおぼゆ 初夏の雲 』
意味:故郷で聞いていた潮の遠鳴りが私の胸で響いているのだ、初夏の空に浮かぶ雲を見ていると。
【NO.7】斎藤茂吉
『 万国の 人来り見よ 雲はるる 蔵王の山の その全けきを 』
意味:世界の人よ山形に来て見ておくれ、雲が晴れた蔵王山のその全景を。
【NO.8】島木赤彦
『 信濃路に 帰り来たりて うれしけれ 黄に透りたる 漬菜の色は 』
意味:信州に帰って来て本当に嬉しい。黄色に澄んだ漬菜の色よ。
【NO.9】伊藤左千夫
『 九十九里の 波の遠鳴り 日のひかり 青葉の村を 一人来にけり 』
意味:九十九里浜の波の遠鳴りを聞きながら、日に照らされて青葉が光る村に一人で帰ってきたのだ。
故郷を離れていた伊藤佐千夫が晩年に帰郷した際の歌です。第四句までの帰路の様子の描写が鮮やかで、遠くから響いてくる波の音や、青々と茂る葉の輝きが読み手にも伝わってきます。失意の帰郷を詠んだもののため「一人来にけり」には寂しい余韻がありますが、懐かしい村に帰って来て左千夫はやはり嬉しかったのではないでしょうか。
【NO.10】俵万智
『 なんでもない会話なんでもない笑顔なんでもないからふるさとが好き 』
意味:何でもない会話、何でもない笑顔、何でもないからふるさとが好。
故郷(ふるさと)について詠んだ一般短歌【10選】
【NO.1】『 たおやかに 流るる水面 矢部川よ あつき心の 父母なれば 』
「矢部川」は作者の故郷の川なのでしょう。幼い頃から親しんだ川なのでしょうか。流れる川の流れに父母を重ねています。「あつき心」は「熱き心」とも「篤き心」とも読みとれます。
【NO.2】『 雨ばかり ざあざあと降る ふるさとで 生まれ育った わたしでいいの 』
【NO.3】『 夏の夜 葉音に都会の 風を聴き 想うは川の木 観るは故郷 』
【NO.4】『 何千と 通うたはずの 川沿いの 水の香りに ふるさとを知る 』
【NO.5】『 故郷の 追憶の中 懐かしい あの人の影 恋しく巡る 』
【NO.6】『 風走る わがふるさとの 麦秋に 水のおもての ような漣 』
【NO.7】『 ベランダで ブチ野良猫が エサねだる 僕のいた街 君のいた街 』
【NO.8】『 嫌われる セイタカアワダチソウでさえ 私を癒す 田舎の景色 』
【NO.9】『 旅に出て 恩義を受けた 場所全て かけがえのない 僕のふるさと… 』
【NO.10】『 どこからも 空が大きい ふるさとで 胸の時計は ゆっくり進む 』
以上、故郷(ふるさと)のおすすめ短歌でした!
皆さんにとって「ふるさと」とはどのようなものでしょうか。それを見て育った景色や、親しい人のことを思い浮かべる人もいるでしょう。
また、その土地ならではのお祭りや食べ物にふるさとを感じることもあるかもしれません。
皆さんもぜひ、自分にとってのふるさとを思い浮かべながら短歌を作ってみましょう。