皆さんは短歌を作ろうとして、「小さい文字は1文字として数えるのかな?」「伸ばし棒の(-)は使っても良いのかな?」と疑問に思ったことはありませんか?
どうでもいいんだけど、俳句とか短歌って、拗音促音は一字に数えるんだろうか……。
— 米丸 (@emarionty) July 2, 2015
今回は短歌における「ゃ・ゅ・ょ・っ・-」の使い方やルールを分かりやすく解説していきます。
目次
拗音「ゃ・ゅ・ょ」の使い方&ルール
「チョコ」や「じゃがいも」に使われるような小さい文字の「ゃ・ゅ・ょ」は「拗音(ようおん)」と呼ばれています。
短歌では拗音は【1音として数えない】のがルールです。
【例】鈴木晴香
『 自転車の後ろに乗ってこの街の右側だけを知っていた夏 』
⇨「自転車」は「じ・て・ん・しゃ」と4音になる
※他にも「ヴァイオリン」の「ァ」や、「スウェーデン」の「ェ」なども拗音と同じように前の文字とセットで1音という使い方をします。
よく、短歌は「5・7・5・7・7」の31文字と言われます。しかし、これは厳密には文字の数ではなく【音の数】なのです。
短歌は元は声に出して読むものでした。「5・7・5・7・7」と言葉の音の数が決まっているのは、声に出した時にリズムが良いためです。
「チョコ」は文字数は3文字ですが、声に出す時は普通「チ・ヨ・コ」とは言いませんね。「チョ・コ」と口を2回動かして、2回発音します。ですから「チョコ」は2音の言葉となります。「じゃ・が・い・も」は4音です。
拗音は直前の文字とセットで1音として扱われます。
促音「っ」の使い方&ルール
「マッチ」や「せっけん」に使われる小さい文字の「っ」を「促音(そくおん)」と言います。
短歌では促音は【1音として数える】のがルールです。
【例】工藤吉生
『 人生を やってることには なってるが あまりそういう 感じではない 』
⇨「やってる」が「や・っ・て・る」で4音となる
⇨「なってる」が「な・っ・て・る」で4音となる
「マッチ」は「マ・ッ・チ」と区切られ3音の言葉となります。小さい「ッ」は声に出ていないけどどうして?と疑問に思う人もいるかもしれません。それは、火を点ける「マッチ」は、例えば「町」と混同しないために「マ」と「チ」の間はワンテンポ開けて発音するからです。このワンテンポが1音としてカウントされています。
同じように「せっけん」は「せ・っ・け・ん」と区切られる4音の言葉となります。
長音・伸ばし棒「-」の使い方&ルール
「ノート」や「マネージャー」などで使われる「-」は「長音」または「伸ばし棒」と呼ばれます。
短歌では長音(伸ばし棒)は【1音として数える】のがルールです。
【例】木下龍也
『 カードキー忘れて水を買いに出て僕は世界に閉じ込められる 』
⇨「カードキー」が「カ・ア・ド・キ・イ」と発音するため5音となる
長音は直前の音の母音が伸びていることを表します。例えば、「ノート」は「ノ・オ・ト」と発音するため3音の言葉です。「マネージャー」は「マ・ネ・エ・ジャ・ア」で5音の言葉となります。
長音はカタカナで表記される外来語に多く使われます。また現代語では、静けさを表す「しーん」や、金属を叩く音の「カーン」などのように擬態語や擬音語にも用いられます。
そのほか「!・?」「英語やアルファベット」など
(1)記号やアルファベットの使用は自由!
「!」や「?」、英語やアルファベット、そのほかの記号を短歌に使っていけないということはありません。
表現のために使用するのは自由です。実際に、話し言葉で書かれた現代短歌には記号や英語を使ったものも多くあります。
【例】谷川電話
『 「お客様おひとりですか?」「ひとりですこの先ずっとそうかもしれない」 』
【例】吉川宏志
『 NO WARとさけぶ人々過ぎゆけりそれさえアメリカを模倣して 』
(2)記号の数え方
音数のルールですが、記号を使う際は音数にカウントはされません。
【例】谷川電話
『 「お客様おひとりですか?」「ひとりですこの先ずっとそうかもしれない」 』
⇨かぎかっこが2回と記号の「?」が使われていますが、読まないため音数には含まれない。
「どうして?」と言う時に、「どうしてクエスチョン」とは言わないからです。「なるほど!」も「なるほどビックリ」とは読みませんね。
「カギカッコなるほど」などとも言わないので、かぎかっこ(「」)も音数には含まれません。
(3)英語やアルファベットの数え方
音数のルールですが、英語やアルファベットを使う場合は音数として数えます。
【例】吉川宏志
『 NO WARとさけぶ人々過ぎゆけりそれさえアメリカを模倣して 』
⇨「NO WAR」は「ノ・オ・ウォ・オ」と発音するため4音。
英語もアルファベットも声に出して読めるからです。例えば「pencil」は「ペ・ン・シ・ル」と読むので4音です。「AとB」は「エーとビー」と読み、「エ・エ・と・ビ・イ」という5音になります。
(4)そのほか
他には、文章の切れ目に使う句点「。」や読点「、」を短歌に使っても問題はありません。
使う際は、記号は読み上げないため音数には含まれないことを覚えておきましょう。
また「♡」や「♪」などの記号を短歌に用いるのも、現代短歌では表現の自由として容認されています。ただし、かなりカジュアルな印象の短歌になりますので、学校などの改まった場で発表する短歌には使わない方が無難と言えます。
注意点として、短歌では基本的に記号は読みませんが、作り手が読ませたいと考えて使ったものは読みます。この場合は音数として数えられます。
拗音・促音・長音を使った有名短歌【5選】
【NO.1】石川啄木
『 かの旅の汽車の車掌が ゆくりなくも 我が中学の友なりしかな 』
【意味】旅行で乗った汽車の車掌が思いがけずに中学の級友だったのだ
【NO.2】杉崎恒夫
『 バゲットの長いふくろに描かれしエッフェル塔を真っ直ぐに抱く 』
【意味】バゲットの長い袋に描かれたエッフェル塔の絵をまっすぐに抱く
【NO.3】伊波真人
『 空の下キーホルダーの人形がとれたチェーンが揺れつづけている 』
【意味】空の下で人形のとれたキーホルダーのチェーンが揺れ続けている
【NO.4】石川啄木
『 呼吸(いき)すれば、胸の中にて鳴る音あり。凩(こがらし)よりもさびしきその音! 』
【意味】呼吸するたび胸の中で音がしている。その音は凩よりも寂しいのだ
【NO.5】荻原裕幸
『 世界の縁にゐる退屈を思ふなら「耳栓」を取れ!▼▼▼▼▼BOMB! 』
【意味】世界の縁に居ることを退屈と思うなら耳栓を取れ!BOMB!
さいごに
今回は、短歌の「ゃ•ゅ•ょ•っ•-」の使い方&ルールなどについて解説しました。
短歌は古典のイメージが強く、音の数も決まっていることもあり難しいイメージがあるかもしれません。
しかし、短歌は古代から日本人と共にあり、共に変化をしてきました。音の数え方にルールはありますが、表現方法は自由度が高く、それほど堅苦しいものではありません。