9月はまだまだ残暑が厳しく気温の高い日がありますが、空を見上げると入道雲から薄く流れる秋の雲へと変化が見られ、少しずつ秋の気配を感じるようになります。
9月をテーマにした短歌にも行く夏を惜しむものや秋の訪れを主題にしたものが多くあります。
今回は、そんな「9月」をテーマに一般の方が詠んだ短歌を20首ご紹介します。
暑くて死にかけた去年9月の江ノ島 pic.twitter.com/S9BvAlxjTK
— ばふあろ_GORO (@tanka_ryo) May 1, 2015
9月(九月)の一般おすすめ短歌集【前半10首】
【NO.1】
『 よーいドン 2匹の蜻蛉(とんぼ)が 空を飛ぶ 秋空きらめく 長月の頃 』
「よーいドン」が秋の運動会を連想させ、2匹のトンボが同時に飛び立って行った様子を想像させます。高く晴れた秋の空の輝くような美しさと、スピードを競うようなトンボの生き生きとした姿が描かれた一首です。
【NO.2】
『 長月の 雨音聴いて 眠る夜 肌に感じる 夏のお仕舞い 』
真夏のスコールの様な雨と違って、秋の雨はしとしとと静かに降ることが多く、雨音を聞きながら眠るのも快く感じられるでしょう。むしむしとした湿気も感じられなくなり肌が涼しさを覚えて、夏が終わるのだと実感している歌です。「お仕舞い」という言葉は「おしまい」や「お終い」よりも、幕引きのような寂しさを感じます。
【NO.3】
『 名月は お呼びに答え お出まして 誰彼とはず あまねく照らす 』
【NO.4】
『 中秋の 名月は少し 欠けてても 名に違いなき 美しき月 』
【NO.5】
『 川べりの ススキの上で 留まる月 自然の造形 愛でる十五夜 』
【NO.6】
『 中秋の 名月過ぎた 十六夜月 夏の想いを 残し欠けゆく 』
【NO.7】
『 天高く コスモス畑に 風そよぐ そんな秋を 残暑の中待つ 』
【NO.8】
『 寒き雨 蝉の鳴き声 途絶えけり 残暑来ぬまま 秋深まれり 』
【NO.9】
『 秋桜 後ろ姿の 細い人 風に遊ばれ 右に左に 』
【NO.10】
『 ひとりごと 一人でいうのは 寂しいと 秋の桜へ そっとささやく 』
9月(九月)の一般おすすめ短歌集【後半10首】
【NO.11】
『 いわし雲に ツクツクボウシの 声聞いて 過ぎゆく夏と 秋を楽しむ 』
【NO.12】
『 ゆらゆらと 葉陰鞘豆 風に揺れ 残暑に思ふ 鞘割れの秋 』
鞘豆(さやまめ)はえんどう豆のことで、えんどう豆の中には秋に収穫できるものもあります。またえんどう豆は、豆を取り出す時にさやがパカッと気持ちよく割れます。まだ夏の暑さが残る中で作者は風に揺れる豆を見て、もう豆がさやを割られるのを待つばかりなのだと思い、秋であることを感じたのでしょう。
【NO.13】
『 お彼岸の 中日に開く 曼珠沙華 日は間に合えど 嵐近付き 』
【NO.14】
『 名も知らぬ 果実が道を 塞いでる 実りの秋の 台風一過 』
【NO.15】
『 動かない 手足も小さく 揺れ出して 敬老の日の フラダンス慰問 』
【NO.16】
『 金色の 稲穂が稔り 風に揺れ 明日は晴天 収穫の刻 』
9月は稲刈りの季節です。第三句までの描写からは、実った稲が埋める田んぼがどこまでも続き、風が吹いて金色の波のように見える豊作の風景が想像されます。いよいよ明日は収穫だ!と期待に胸踊る様子が伝わります。
【NO.17】
『 新米の 炊ける匂いを 堪能し 心ゆくまで 秋を味わう 』
9月半ばになると多くの地域で新米が出回り始めます。新米が炊けて、作者はお釜の蓋を開けた時の湯気の匂いも特別に感じられたのでしょう。新米への嬉しさと、秋は良いものだという感動が伝わる歌です。
【NO.18】
『 秋の夜の 流れ行く雲 切れ切れと サンマ雲と 名付けて歩こう 』
秋の雲をいわし雲とよく言いますが、それに引っかけてサンマ雲と呼ぶことにしたのでしょう。秋の夜を雲を見ながらゆっくり散歩をしていたのでしょうか。9月はサンマも美味しい時節なので、作者は横長に切れ切れと並ぶ秋の雲を見てサンマを思い出したのかもしれませんね。
【NO.19】
『 秋の日に 漂う香りに 誘われて そっと踏み入る 稲刈りの後 』
稲を刈ったばかりの田んぼは土と干し草のような匂いがします。稲の茎が短く残るだけの田んぼは、いつもよりも広々と見えることでしょう。そこにそっと入った作者は、稔りへの感謝を思ったのかもしれません。そしてしみじみと秋を感じたのではないでしょうか。
【NO.20】
『 栗ごはん 美味な季節が やってきた 歓喜に踊る 新米の秋 』
9月は栗もお米も美味しい季節です。その両方を味わえる栗ご飯は秋の味覚の代表格です。「歓喜に踊る」のは作者の心でもあり、お釜の中で炊かれている新米一粒一粒の様子であるとも思えます。
以上、9月について詠んだオススメ一般短歌集でした!
今回は「9月」をテーマに詠んだ一般短歌を20首紹介しました。
秋の始まりである9月には趣深い風物詩が多くあり、中でも「十五夜」や「お彼岸」は人気のテーマとなっています。また、秋の食べ物のことを短歌にするのも、自分なりの面白味のある歌が作りやすいので良いでしょう。
学生の皆さんは二学期が始まるので、夏休みが終わったことや新学期になった気持ちを詠み込んでも9月らしい短歌になります。