今回は、中学生向けの「春」を題材とした作品についてご紹介します。
長い冬が終わり、さまざまな生命が生まれる春という季節には、入学式や卒業式など、新しい出会いがたくさんありますよね。
今回は、短歌がまだ和歌と呼ばれていた古い時代の有名作品からオリジナルの短歌作品まで、ぜんぶで20首の短歌をご紹介していきます。
短歌に春らしさを出す!春の季語を知ろう
春の短歌を詠むために必要なことは、歌の中に【季語】を取り入れることです。
【季語】とは、春夏秋冬の感じを表すためにそれぞれの季節を表す語として定められた言葉のことです。春の季語には非常にたくさんのものがありますから、ここではその一例をご紹介します。
春の季語
【時候や行事に関する春の季語】
建国記念日・入学式・卒業式・入社式・春日祭・花祭り・春祭り・早春・初春・晩春・弥生・春の朝・春の宵・春の夜・暖か・麗らか・花時・八十八夜・夏近し など
【お天気や地理に関する春の季語】
春嵐・春光る・春一番・霞・陽炎・蜃気楼・春風・東風・春の月・春の海・山笑う・雪解け・残雪・流氷・潮干潟・春潮
【動物に関する春の季語】
仔馬・子猫・蛙(かわず)・虻・蚕・蝶・蜂・蜂の巣・桜貝・白魚・鰆・ワカサギ・雉・コマドリ・燕・ヒバリ・燕の巣 など
【生活に関する春の季語】
春眠・蜆汁(しじみじる)・春の夢・梅見・バレンタインデー・四月馬鹿・桃の節句・入学試験・春場所・花の宴・潮干狩り・ゴールデンウィーク・新社員・種蒔き・みどりの日 など
中学生向け!!春らしい有名短歌集【10選】
ここからは、春らしい有名な短歌をご紹介していきます。
【NO.1】光孝天皇(百人一首)
『 君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ 』
季語…春の野、若菜
現代語訳…あなたのために春の野原に出て、若菜を摘んだ。そんな私の衣の袖に、早春の雪が降り続いていた
【NO.2】二条后(藤原高子)(古今集)
『 雲のうちに 春はきにけり うぐひすの こほれる涙 今やとくらむ 』
季語…春、うぐひす
現代語訳…雪の降っている間に、春がやってきました。鶯がこぼした、凍った涙はもう溶けているでしょうか
【NO.3】山上憶良(万葉集)
『 春されば まづ咲くやどの 梅の花 ひとり見つつや 春日暮らさむ 』
季語…梅の花
現代語訳…春になるとまず咲く我が家の梅の花を、一人で鑑賞しながら春の日を過ごしていよう
【NO.4】山部赤人(万葉集)
『 あしひきの 山桜花 日並べて かく咲きたらば いと恋ひめやも 』
季語…山桜花
現代語訳…もしも桜の花が何日も咲いていたら、こんなに恋しいとは思わないでしょう。すぐに散ってしまうからこそ、こんなにも恋しいのです
【NO.5】在原業平(古今集・伊勢物語)
『 世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし 』
季語…桜、春
現代語訳…あなたのために春の野原に出て、若菜を摘んだ。そんな私の衣の袖に、早春の雪が降り続いていた
【NO.6】西行法師(出典不明)
『 願わくば 花の下にて 春死なむ その如月の 望月の頃 』
季語…花、春、如月
現代語訳…願いが叶うなら、桜の下で春に死にたい。草木の萌えいづる如月(2月)の満月の頃がいいものだ
【NO.7】北原白秋(桐の花)
『 いつしかに 春の名残と なりにけり 昆布干し場の たんぽぽの花 』
季語…春の名残
現代語訳…いつの間にか、今年の春も終わりになってしまった。その春を惜しむように、浜辺にある昆布干し場には、たんぽぽの花がたくさん咲いていることだ。
【NO.8】齋藤茂吉(あらたま)
『 春がすみ とほくながるる 西空に 入り日おほきく なりにけるかも 』
季語…春がすみ
現代語訳…空には春がすみが遠くまでかかっている。そのかすみが流れる西の空に沈んでゆく夕日が、あんなに大きくなっていることだ
【NO.9】土屋文明(出典不明)
『 雪とけし 泉の石に 遊びいでて 拝む蟹をも 食はむとぞする 』
季語…雪とけし
現代語訳…雪解けした泉の石の上に遊びに出てきていた蟹が、はさみを合わせて『どうか食べないでください』と拝むようにしているのに、そんな蟹のことでさえ、私は食べようとしているのだ
【NO.10】正岡子規(正岡子規歌集)
『 くれなゐの 二尺伸びたる 薔薇の芽の 針やはらかに 春雨のふる 』
季語…薔薇の芽
現代語訳…赤いバラの新芽が二尺ほどに伸びている。その柔らかな棘に、優しい春の雨がふりそそいでいることだ
中学生向け!!春らしい素人短歌【10選】
続いて、中学生の方が詠んだ春にまつわるオリジナル短歌[/marker]をご紹介していきます。
【NO.1】
『 春風や 蕾のリボン ときほぐし 届けておくれ 心に花を 』
季語…春風、蕾
【NO.2】
『 過ぎ去りて 思えばほんの 数十回 次の桜も 共に愛でたし 』
季語…桜
【NO.3】
『 紅白の 梅花咲いて 縁起よく 受験生たち もうすぐ桜 』
季語…梅花、桜
【NO.4】
『 燕来る 失うものも あったけれど ふたたびの春に 燕見つけた 』
季語…燕、春
【NO.5】
『 陽の下の 庭で鳴いてる 鶯と 白梅の花 春の訪れ 』
季語…鶯、白梅の花、春
【NO.6】
『 春の海 ブルーな日々も 手のひらに すくい上げれば 透明となる 』
季語…春の海
【NO.7】
『 小さくて 丸みを帯びた 桜貝 波打ち際で 目をこらす君 』
季語…桜貝
【NO.8】
『 春と冬 行きつ戻りつ する頃に 開花予想は 春への一歩 』
季語…春、開花予想
【NO.9】
『 目が赤く 泣いたわけでは ないけれど 春の予感よ 花粉の季節 』
季語…春、花粉
【NO.10】
『 君だけの 春一番に なりたくて まとうピンクの トレンチコート 』
季語…春一番
さいごに
今回は、春を題材にした有名短歌集とオリジナル短歌集についてご紹介しました。
長い冬が終わり、暖かな陽気に元気をもらうことの多い春は、さまざまな“始まりの季節”であると言えるでしょう。
春の風物詩である桜や幸せの象徴とされている燕など、春を表す季語は私たちの生活に古くから関係のあるものが多いですよね。