星の瞬きには月とは違った魅力があります。
多くの歌人が夜空できらめく星の光に心を動かされ、星を詠み込んだ短歌や和歌を作ってきました。
今回は、星降る夜に読みたくなるような有名短歌・和歌を20首紹介していきます。
月ならぬ 星の光も さやけきは
秋てふ空は なべて すむらん
風雅和歌集 西園寺前内大臣女 pic.twitter.com/UkYjvHBAC8
— 英 (@hana238723) October 26, 2015
星/夜空に関する有名短歌(和歌)集【前半10選】
【NO.1】建礼門院右京大夫
『 月をこそ 眺めなれしか 星の夜の 深きあはれを こよひ知りぬる 』
【意味】月ばかり眺め慣れていたけれど、星の夜にも深い趣があるのだと今夜知った。
【NO.2】藤原良経
『 くもりなき 星の光を あふきても あやまたぬ身を 猶そうたかふ 』
【意味】曇りのない星の光を仰ぎ見ても、過ちのない自分を尚も疑ってしまう。
【NO.3】藤原家隆
『 明けわたる 雲間の星の ひかりまで 山の端さむし 峰の白雪 』
【意味】明けてゆく雲の間の星の光まで山の端で寒そうにしている、その峰の白雪よ。
【NO.4】藤原長能
『 袖ひちて 我が手にむすぶ 水のおもに 天つ星合の 空を見るかな 』
【意味】袖を濡らして手ですくった水に、天の星が出逢う空が映るのを見る。
【NO.5】能因法師
『 秋の夜を 長きものとは 星あひの かげ見ぬ人の いふにぞありける 』
【意味】秋の夜を長いと言うのは、星合を想像しない人の言うことなのだ。
【NO.6】壬生忠岑
『 日暮るれば 山のは出づる 夕づつの 星とは見れど はるけきやなぞ 』
【意味】日が暮れて山の端から見えてくる宵の明星のように、欲しいと思って見てもあなたが遥かに遠いのは何故だろう。
「夕づつの星」は宵の明星、金星のことです。金星は日暮れから夜半にかけてしばらく見えて、やがて消えてしまいますが、作者はそんな金星を眺めながら恋しい人のことを考えていたのでしょう。「星」と「欲し」を掛詞にして手の届かない人を星にたとえた切ない歌です。
【NO.7】永福門院
『 くらき夜の 山松風は さわげども 梢の空に 星ぞのどけき 』
【意味】暗い夜の山の松に吹く風は音を立てているが、その梢から見える空の星は穏やかなものだ。
【NO.8】藤原為子
『 星おほみ はれたる空は 色こくて 吹くとしもなき 風ぞ涼しき 』
【意味】星が多く出ている晴れた夜空は色が濃くて、弱い風が涼しい。
【NO.9】不祥
『 月ならぬ 星の光も さやけきは 秋てふ空や なへてすむらん 』
【意味】月だけではなく星の光もまた清くて、秋の夜空を澄んだものにしているのだろう。
【NO.10】下河辺長流
『 あまつ星 おちて石とも ならぬ間や しばし河辺の 蛍なるらむ 』
【意味】天の星は、落ちて石になるまでの少しの間は河辺の蛍になるのだろう。
星/夜空に関する有名短歌(和歌)集【後半10選】
【NO.11】正岡子規
『 たらちねの 母がなりたる 母星の 子を思う光 吾を照らせり 』
【意味】母は星になって、その母星の子を思う光が私を照らしている。
【NO.12】正岡子規
『 天地に 月人男 照り透り 星の少女の かくれて見えず 』
【意味】天に地に月の光が照っているから、星の光は隠れてしまって見えない。
【NO.13】与謝野晶子
『 冬の空 針もて彫りし 絵のように 星きらめきて 風の声する 』
【意味】冬の空に、針で彫った絵のように星がきらめいていて、風が声を上げるように吹いていく。
【NO.14】与謝野晶子
『 流れ星 うつくしかりき 君とわれ くつは虫啼く 原にかかりぬ 』
【意味】流れ星が美しかった。君と私、靴は虫の鳴く原に踏み込んでいた。
【NO.15】斎藤茂吉
『 むかう空に ながれて落つる 星のあり 悲しめる身の 命のこぼれ 』
【意味】向こうの空に流れて落ちる星がある。悲しむこの身の命がこぼれるように。
【NO.16】若山牧水
『 東明(しののめ)の 星のかがやき 仰ぎつつ けふは楽しと 勇みけるかも 』
【意味】明け方の東の空の星の輝きを仰ぎ見ながら、今日は楽しいと勇んでいくのだ。
【NO.17】梅内未華子
『 地下鉄の 前方後方 指す指に 白き流星を ともす駅員 』
【意味】地下鉄で前方後方を指す指先に白い流星を灯す駅員。
【NO.18】佐竹彌生
『 満天の 夜空の星を ひとつくぎり くらき鳥籠に 星を飼うなり 』
【意味】満天の夜空の星を一ヵ所区切って、暗い鳥籠に星を飼うのだ。
【NO.19】穂村弘
『 春のプール 夏のプール 秋のプール 冬のプールに星が降るなり 』
【意味】春のプール、夏のプール、秋のプール、冬のプールに星が降る。
【NO.20】大滝和子
『 白鳥座(シグナス)の 位置もかすかに 移りたり 君への手紙 かきおえ仰げば 』
【意味】君への手紙を書き終えて夜空を見上げれば白鳥座の位置もかすかに変わっていた。
以上、星降る夜に読みたくなるような有名短歌/和歌集でした!
皆さんは星を見上げた時にどんなことを思いますか?
七夕や星座の伝説などを想像してロマンチックな気持ちになる人もいるでしょう。
また流れ星に願いをかけたり、天体としての遥かな星々に思いを馳せたりする人もいるのではないでしょうか。