新緑が過ぎ梅雨前線がやってくる頃紫陽花の季節が訪れます。
曇り空の下で鮮やかに咲く紫陽花は人の心を惹き、雨に濡れて咲く姿には情緒があって、短歌でも多くの歌人が題材にしてきました。
今回は、そんな「紫陽花(あじさい)」を題材にして詠まれた短歌を20首紹介します。
紫陽花はでんでん虫と仲良しだ ひとり言う子のクレヨン動く
短歌:鳥海 昭子#tanka #誕生日の花と短歌#ラジオ深夜便 pic.twitter.com/snGBcujuhb
— chain オリーブ (@Eniee31327) June 14, 2014
雨あがり濡れているのにひからびて暗夜に首をこする紫陽花#tanka pic.twitter.com/FBWRzbdWvF
— 佐原 (@sasimosirajina_) June 13, 2016
紫陽花を題材にした有名短歌【おすすめ10選】
【NO.1】橘諸兄
『 あぢさいの 八重咲くごとく 八つ代にを いませ我が背子 見つつ偲はむ 』
【意味】八重咲きの紫陽花のようにあなたに繁栄がありますように。紫陽花を見る度にあなたを思い出すことにします。
【NO.2】大伴家持
『 言問はぬ 木すら紫陽花 諸弟(もろと)らが 練りのむらとに あざむかえけり 』
【意味】ものを言わなくても紫陽花は色が変わる。まして口の達者な諸弟の言葉にはすっかり騙されてしまったよ。
【NO.3】穂積皇子
『 茜さす 昼はこちたし あじさゐの 花のよひらに 逢ひみてしがな 』
【意味】昼間は仰々しい紫陽花の四片の花びらが宵になって美しく見える頃に逢いたいものだ。
【NO.4】若山牧水
『 紫陽花の その水いろの かなしみの 滴るゆふべ 蜩(かなかな)のなく 』
【意味】紫陽花のその水色が悲しみに滴る夕べにカナカナが鳴く。
【NO.5】与謝野晶子
『 紫陽花も 花櫛したる 頭をば うち傾けて なげく夕ぐれ 』
【意味】紫陽花も花ぐしをしている頭を傾けて嘆く夕暮れ。
【NO.6】石川啄木
『 昨日より色のかはれる紫陽花の瓶をへだてて二人かたらず 』
【意味】昨日とは色が変わった紫陽花の瓶を隔てて二人は語らず。
【NO.7】釈迢空
『 紫陽花の まだとゝのはぬうてなに、花の紫は色立ちにけり 』
【意味】紫陽花のまだ整わぬガクに、花の紫が色めきたっているな。
【NO.8】寺山修司
『 森駈けて きてほてりたる わが頬を うずめんとするに 紫陽花くらし 』
【意味】森の中を駆けてきて火照った頬をうずめようとした紫陽花の暗さ。
【NO.9】五味保義
『 光なき 玻璃窓一めんに あぢさゐの 青のうつろふ 夕ぐれを居り 』
【意味】光のない玻璃窓一面に紫陽花の青色が見える夕暮れに居る。
【NO.10】高野公彦
『 観る人の まなざし青み あぢさゐの まへうしろなき うすあゐの球 』
【意味】見る人の眼差しが青みがかる紫陽花の前も後ろもない薄い藍の玉。
紫陽花を題材にした一般短歌【おすすめ10選】
【NO.1】
『 日に褪せず 雨に色増す 紫陽花の 鮮やかたるや 言葉尽くせず 』
【NO.2】
『 紫陽花は まだ色という 色持たず あじさい寺に 静謐(せいひつ)は満つ 』
【NO.3】
『 紫陽花に 青を盗られた 梅雨の空 涙に濡れる コンクリの森 』
【NO.4】
『 立ち枯れの 紫陽花仰ぎ 雨蛙 季節を幾つ 超えてゆけるか 』
【NO.5】
『 紫陽花と 雨に呪術を かけられて 道行く人が 動けずにいる 』
【NO.6】
『 紫陽花が 過ぎれば夏も 過ぎていき 衣更えする 街のマネキン 』
【NO.7】
『 母の手で 水切りされる 紫陽花の 冴え冴えと青い 青い魂 』
【NO.8】
『 紫陽花の ように手をかえ 品をかえ 色をかえても あなたは来ない 』
【NO.9】
『 お前だけ 生き生きしてるな 紫陽花よ 世界はこんなに びしゃびしゃなのに 』
【NO.10】
『 梅雨明けて 紫陽花の色 薄くなり その青、空に 帰る七月 』
以上、紫陽花(アジサイ)を題材にした短歌集でした!
皆さんは何色の紫陽花が好きでしょうか。
植木では青や紫、ピンクが多いですが、花屋さんではオレンジや黄色の紫陽花なども見ることができます。
また、紫陽花は色によって花言葉も違ってくるので、花の色と関連させて短歌に詠みこむのも一興です。