【桜の有名短歌 30選】知っておきたい!!おすすめ短歌(現代&和歌)作品集を紹介!

 

みなさんは桜の有名な短歌をご存知でしょうか?

 

桜は日本の代表的な花の一つであり、「桜前線」としてニュースにもなるほど全国で開花を待ちわびる唯一の花です。

 

桜を愛でる心は万葉の時代から短歌(和歌)として詠まれてきました。

 

 

今回は桜について詠まれたおすすめの短歌を時代を分けて全30選をご紹介します。

 

短歌職人
詠み人の感性や表現が昔と今でどのように違ってくるのか、なども参考にしてみてくださいね。

 

桜の有名短歌(和歌)集【現代短歌 15選】

 

そもそも和歌と短歌は何が違うの?と思いますよね。

 

どちらも「5・7・5・7・7」の31語数で詠まれる、基本的に同じ形式の詩です。

 

和歌はおおよそのくくりで「万葉集」「古今和歌集」「新古今和歌集」までで、明治時代からは正岡子規が新風を起こして様相が変わったので明治時代以降が「現代短歌」と呼ばれています。

 

まずは俳諧や短歌に新しい風を吹かせた正岡子規の短歌からご紹介しましょう。

 

【NO.1】正岡子規

『 から山の 風すさふなり 古さとの 墨田の櫻 今か散るらん 』

意味:乾いた山から風が吹きすさんでいる。ふるさとの隅田の桜も今にも散ろうとしているのでしょう。

短歌職人
これは子規が日清戦争に記者として従軍した時、好きだった隅田の桜を思い出して詠んでいます。

 

【NO.2】正岡子規

『 いたつきに 三年こもりて 死にもせず 又命ありて 見る桜かな 』

意味:病気をして三年間もこもっていたが死ぬこともなくまた命つないで見ることができた桜よ。

短歌職人
「いたつきに 」=苦労・病気で。子規は患っていた結核の治療をしながら活動をしていたので病気のネタも多いのですが、これも華やかな桜の花を寝たきりの自分が「死にもせず見られた」と自虐的で切ない短歌です。

 

【NO.3】与謝野晶子

『 清水へ 祇園をよぎる 桜月夜 今宵逢ふ人 みなうつくしき 』

意味:清水へ行こうと祗園をよぎって行く桜の咲いている月夜、今夜は会う人あう人がみんな美しく見えますよ。

短歌職人
清水と祇園とくれば京都の華やかな繁華街ですので、それは美しい人が多かろうというものです。

 

【NO.4】佐藤佐太郎

『 夕光(ゆふかげ)の なかにまぶしく 花みちて しだれ桜 輝きを垂る 』

意味:夕日の光をあびてまぶしく光って見えるしだれ桜が輝いた枝を垂らしています。

短歌職人
印象派の絵画のような眩しいけれど夕陽の優しい光が見えてきます。枝とは一言も書いていないのに「垂る」だけでしだれ桜の枝が輝いていることがわかりますね。

 

【NO.5】宮沢賢治

『 ひるもなほ 星みるひとの 目にも似る さびしきつかれ 早春のたび 』

意味:昼でもなお星を見る人の目にも似ている、早春のたびでは寂しい疲れが出るのです。

短歌職人
昼でも星を見ることができる人はほとんどいませんよね。そこにあるけれど人の目には見えないものを見ようとしても寂しく疲れるだけだよ。早春のたびでそれを経験するよ、というのですが、何を目的に早春のたびをするのかは想像するしかありません。

 

【NO.6】北原白秋

『 いやはてに 鬱金(うこん)ざくらの かなしみの ちりそめぬれば 五月はきたる 』

意味:薄黄色の桜が最後なのだろう。かなしくも散り始めてしまうと5月がくるのだなぁ。

短歌職人
「いやはてに」=最後。桜の中でも最も遅く咲き、珍しい薄黄色の花を咲かせる鬱金桜を惜しんでいるのですが、みなさん見たことありますか?

 

【NO.7】上田三四(うえだみよじ)

『 ちる花は かずかぎりなし ことごとく 光をひきて 谷にゆくかも 』

意味:散っていく花びらは数えられないほどたくさんで、その一つ一つが光と共に谷に落ちていきます。

短歌職人
光を受けて、ではなく「ひきて」にすることで流れ星のように見えています。「かも」は詠嘆、感動の気持ちです。

 

【NO.8】佐々木幸綱

『 満開の 桜ずずんと 四股を踏み われは古代の 王として立つ 』

意味:満開の桜の大木がずずんと四股を踏んで、私は古代の王として立っていると言っているようだ

短歌職人
「ずずんと」という擬態語が面白いですね。詠み人の家の近くの公園に桜の大木があるそうです。巨大な力士のように迫力のある桜、ぜひ見てみたいものです。

 

【NO.9】岡本かの子

『 桜ばな いのち一(いっ)ぱいに 咲くからに 生命(いのち)をかけて わが眺めたり 』

意味:桜の花が命の力一杯に咲いているから、私も全身全霊をかけて眺めている。

短歌職人
「いのち」を平仮名と漢字で変えて繰り返して強調しています。桜を全身全霊で眺めるなんて、と思われそうですが、小さくも一所懸命に咲いている花を見ているとこのような気持ちになったのでしょう。あの岡本太郎さんのお母様らしい詩ですね。

 

【NO.10】馬場あき子

『 桜咲くころ 感情は 静かならず 亡き人亡き犬亡き小鳥たち 』

意味:桜を眺めていると心がざわめく。別れた人、犬、小鳥たちを思い出して。

短歌職人
7・5・6・8・7となっていますが、これは破調というもので省略するとおかしいもの、リズム感に変化をもたせたい時などに使われます。「亡き」を繰り返して感情が沸き起こる悲しさがわかりやすく伝わってきますね。

 

【NO.11】馬場あき子

『 さくら花 幾春かけて 老いゆかん 身に水流の 音ひびくなり 』

意味:桜の花はいくつの春を経て老いていくのでしょうか。からだの中に水が通っていく音もひびいていきます。

短歌職人
桜の花は毎年同じように見えても少しずつ老いていっているはずで、それを自身の老いの心配に掛け合わせているのですが、ちっとも深刻な悩みには感じられません。体はみずみずしいから老いはまだ先のことだわ、という感じでしょうか。

 

【NO.12】岡野弘彦

『 ほれぼれと 桜吹雪の 中をゆく さみしき修羅の 一人となりて 』

意味:深く心を惹かれて桜吹雪の中を行くよ。寂しい修羅の心を持った一人となって。

短歌職人
岡野さんは戦争体験をされた方なので、まさに修羅場の戦場をくぐり抜けてきた心が、無垢な桜の吹雪の中を歩いていく背中を詠んだのかもしれません。「ほれぼれと」という語感がいいですね。

 

【NO.13】笹井宏之

『 葉桜を 愛でゆく母が ほんのりと 少女を生きる ひとときがある 』

意味:葉桜を愛でている母は、ほんのりと少女に戻って過ごすひとときがあるのです。

短歌職人
なんとも家族の温かい視点。息子が母に少女性を見出すことは珍しいことですが、桜の花ではなく葉を愛するお母さんのことを可愛らしいなと思いながら見ているのが伝わってきますね。

 

【NO.14】長谷川櫂

『 人々の 嘆きみちみつる みちのくを 心してゆけ 桜前線 』

意味:(震災で)人々の嘆きが周りに満ち満ちている陸奥を、心に止めて進むんだよ桜前線よ。

短歌職人
東日本大震災の後に作られたものです。大災害があっても木が生き残っていれば毎年花は咲きます。その桜の花を見て心励まされる方々のことも見守りながら、桜が咲いて欲しいという願いの込められた歌ですね。

 

【NO.15】俵万智

『 さくらさくらさくら 咲き始め咲き終わり 何もなかったような公園 』

意味:桜が咲いた桜が散ったとその時々の思いがあるのに、今は何事もなかったように静まり返る公園があるだけ。

短歌職人
これは「さくら」を3回も連呼している上に、9・10・14で全く定型に当てはまらないと思いきや不思議、合計の文字数は31字でぴったりなのです。現代短歌はこのような自由な形のものも増えてきています。

 

桜の有名短歌(和歌)集【昔の短歌 15選】

 

【NO.1】在原業平(ありわらのなりひら)

『 世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし 』

意味:世の中に桜というものがなかったならば、春になっても桜の花の咲く楽しみ散る悲しさなど心騒がすこともなく、のどかな気持ちでいられるでしょう。

短歌職人
のどかな気持ちでならなくていいので、春はワクワクしながら桜の開花を待ちたいですよね。

 

【NO.2】不明

『 散ればこそ いとど桜は めでたけれ 浮き世になにか 久しかるべき 』

意味:桜は散るからこそ素晴らしいのです。この憂いの多い世の中でいつまでも変わらずにいられるものはありません。

短歌職人
実はこれ、1.の返歌として詠まれた短歌で伊勢物語に出てきます。桜がなかったら心はのどかだ→散るのを惜しんでのどかでないからこそ、桜っていいよねーという気持ちを返しています。

 

【NO.3】壬生忠岑(みぶのただみね)

『 春日野の 雪間をわけて おひいでくる 草のはつかに 見えし君かも 』

意味:春日野の雪の間をわずかに分けて出てくる草のように、わずかに見えた君の姿だよ。

短歌職人
春日神社で「はつかに」=わずかに見えた女性のことを歌ったものです。でも地に生えている草をたとえに男性にうたわれても女性は嬉しくないですよね。

 

【NO.4】紀貫之(きのつらゆき)

『 山桜 霞の間より ほのかにも 見てし人こそ 恋しかりけれ 』

意味:山桜が霞の間からわずかに見えた時のようにほのかに見えたあなたのことを恋しく思っています。

短歌職人
花摘みに来て偶然出会った女性をうたったものです。実は 3.の春日野の〜を模倣して作られているのですが、「草」という下目線ではなく「山桜」と上を向いて高嶺の花のように詠んでいるところがさすが紀貫之さん!女心がわかっていらっしゃいます。

 

【NO.5】伊勢大輔(いせのたいふ)

『 いにしへの 奈良の都の 八重桜 今日九重に にほひぬるかな 』

意味:遠い昔に奈良の都で咲いていた八重桜が今日はこの宮中(九重)でひときわ美しく咲いています。

短歌職人
「九重」=昔、中国で王宮を九重の門で囲ったことから宮中のことをこう呼びます。そして名前が「大輔」という漢字ですが女性なんです。八重桜の今を眺めて昔に想いを馳せるという女性らしい感性で詠んでいますよね。

 

【NO.6】西行法師

『 花見にと 群れつつ人の 来るのみぞ あたら桜の とがにはありける 』

意味:花見に大勢の人が来て騒がしくなることが桜の罪だとも言える。

短歌職人
西行の庵室は桜で有名な吉野に住んでいましたので満開の時は大勢の花見客がやってきたのでしょう。「ああ静かに花を愛でたいのに」という本音が出たのかもしれません。

 

【NO.7】西行法師

『 願わくば 花の下にて 春死なむ その如月の 望月の頃 』

意味:願うことならば(旧暦で)2月15日の満月の頃に満開の桜の下で死にたいものだ

短歌職人
「花」=桜の花。桜の歌人と呼ばれるほど桜が好きだった西行が死ぬ時と場所を願った歌ですが、人々がいちばん驚いたのはほぼこの歌の通りに2月16日に亡くなったことでした。ちなみに2月15日は釈迦の入滅の日です。あっぱれ西行さん。

 

【NO.8】山部赤人(やまべのあかひと)

『 あしひきの 山桜花 日並べて かく咲きたらば いと恋ひめやも 』

意味:もしも山の桜が何日も咲いていたならば、こんなに恋しいとは思わなかったでしょう。

短歌職人
確かに美しいものは儚いからこそ、より愛しく恋しくなるのかもしれません。「あしひきの」→「山」がセットになります。

 

【NO.9】大江匡房(おおえのまさふさ)

『 高砂の 尾の上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ 』

意味:遠くの山の峰の桜が咲きましたよ。人里に近い山の霞よ立たないでおくれ

短歌職人
言葉が少し難しいですね。「高砂」=砂が高く盛り上がった場所の「尾」=峰のこと、「外山」=人里に近い山のことです。奥の山の桜が見えなくなってしまうからその前で霞まないでね、というお願いの歌でした。

 

【NO.10】小野小町

『 花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに 』

意味:花(桜)の色は長雨が降って色あせてしまいました。私が世の中のあれこれをむなしくぼんやりと思いふけっているうちに。

短歌職人
これは有名な歌ですが、言葉のかけ遊びであることをご存知だったでしょうか。「ふる」=経るの連体形「ふる」と雨が「ふる」、「ながめ」」=「眺め」と「長雨」です。小町さんの語彙(ごい)力に感服。

 

【NO.11】柿本人麻呂(かきのもとひとまろ)

『 桜花 咲きかも散ると 見るまでに 誰れかもここに 見えて散り行く 』

意味:桜の花が咲いてすぐに散ってしまうように、ここに集って散っていく人々は誰なのでしょうか。

短歌職人
旅先で詠んだ歌のようです。自分はじっと桜の近くにいて、集まっては去り、集まっては去りする人々を眺めていたのでしょうね。

 

【NO.12】紀貫之

『 桜花 咲きにけらしな あしびきの 山のかひより 見ゆる白雲 』

意味:桜の花が咲いたようです。山の間から白雲が見えています。

短歌職人
桜の花を白雲に見立てたのでしょうか、実際に白雲が見えたのでしょうか。山の「かひ」=間から本当に見えたものを想像してみると面白いですね。

 

【NO.13】紀友則

『 み吉野の 山辺にさける 桜花 雪かとのみぞ あやまたれける 』

意味:吉野山の山辺に咲いている桜の花を、雪かと見違ってしまったよ。

短歌職人
12.の貫之の歌の次に詠まれたもので、こちらは桜を雲ではなく雪と見間違えたのですね。「み」=深で奥深い吉野は雪も多いところなので雪にしたのでしょう。明らかに違うとわかっている表現として「のみぞ」を使って強調したようです。

 

【NO.14】紀友則

『 ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ 』

意味:日の光がこんなにものどかな春の日に、どうして桜の花だけは落ち着くこともなく散っていってしまうのでしょう。

短歌職人
百人一首で有名な歌ですね。これも「花」は桜のこと、「のどけき」=のどかだ、です。「光の」と区切って読まないようにしてくださいね。

 

【NO.15】良寛(りょうかん)

『 いざ子ども 山べにゆかむ 桜見に 明日ともいはば 散りもこそせめ 』

意味:さあ子どもたちよ、山のあたりに桜を見に行こう。明日行くなんて言っていたら散ってしまうよ。

短歌職人
良寛さんのように子どもが好きな人から元気よく、子どもたち、花見に行くぞ!なんて言われたら「行く行く!」と言いますよね。なんとも楽しげな短歌です。

 

 

以上、桜の有名短歌(和歌)集でした!

 

桜、とはっきり区別せず「花」と書いているものでも桜の花を指していたり、破調のものなど様々でしたね。

 

和歌と呼ばれている昔のものと現代短歌では、使う言葉やシチュエーションがかなり違うのも面白いところです。

 

桜はみなさんの生活の中でも卒業式や入学式、春休みに新生活の始まりに合わせたように日本中で咲く花です。

 

短歌職人
さあ、桜にどんな場面のどんな気持ちを重ねて詠みますか?ぜひチャレンジしてみてください!