みなさんは桜の有名な短歌をご存知でしょうか?
桜は日本の代表的な花の一つであり、「桜前線」としてニュースにもなるほど全国で開花を待ちわびる唯一の花です。
桜を愛でる心は万葉の時代から短歌(和歌)として詠まれてきました。
「見わたせば、春日の野辺に 霞立ち 咲きにほへるは桜花かも」詠み人知らず
見わたせば、春日の野に霞が立ち、咲き染めているのは桜の花か。
桜を詠った和歌はたくさんある。花とかかれていても桜をさすものが多い。
いよいよ、桜の時季。 pic.twitter.com/KAmBgl8IvS— 咲良 (@sakuranotabi) March 24, 2015
今回は桜について詠まれたおすすめの短歌を時代を分けて全30選をご紹介します。
桜の有名短歌(和歌)集【現代短歌 15選】
そもそも和歌と短歌は何が違うの?と思いますよね。
どちらも「5・7・5・7・7」の31語数で詠まれる、基本的に同じ形式の詩です。
和歌はおおよそのくくりで「万葉集」「古今和歌集」「新古今和歌集」までで、明治時代からは正岡子規が新風を起こして様相が変わったので明治時代以降が「現代短歌」と呼ばれています。
まずは俳諧や短歌に新しい風を吹かせた正岡子規の短歌からご紹介しましょう。
【NO.1】正岡子規
『 から山の 風すさふなり 古さとの 墨田の櫻 今か散るらん 』
意味:乾いた山から風が吹きすさんでいる。ふるさとの隅田の桜も今にも散ろうとしているのでしょう。
【NO.2】正岡子規
『 いたつきに 三年こもりて 死にもせず 又命ありて 見る桜かな 』
意味:病気をして三年間もこもっていたが死ぬこともなくまた命つないで見ることができた桜よ。
【NO.3】与謝野晶子
『 清水へ 祇園をよぎる 桜月夜 今宵逢ふ人 みなうつくしき 』
意味:清水へ行こうと祗園をよぎって行く桜の咲いている月夜、今夜は会う人あう人がみんな美しく見えますよ。
【NO.4】佐藤佐太郎
『 夕光(ゆふかげ)の なかにまぶしく 花みちて しだれ桜 輝きを垂る 』
意味:夕日の光をあびてまぶしく光って見えるしだれ桜が輝いた枝を垂らしています。
【NO.5】宮沢賢治
『 ひるもなほ 星みるひとの 目にも似る さびしきつかれ 早春のたび 』
意味:昼でもなお星を見る人の目にも似ている、早春のたびでは寂しい疲れが出るのです。
【NO.6】北原白秋
『 いやはてに 鬱金(うこん)ざくらの かなしみの ちりそめぬれば 五月はきたる 』
意味:薄黄色の桜が最後なのだろう。かなしくも散り始めてしまうと5月がくるのだなぁ。
【NO.7】上田三四(うえだみよじ)
『 ちる花は かずかぎりなし ことごとく 光をひきて 谷にゆくかも 』
意味:散っていく花びらは数えられないほどたくさんで、その一つ一つが光と共に谷に落ちていきます。
【NO.8】佐々木幸綱
『 満開の 桜ずずんと 四股を踏み われは古代の 王として立つ 』
意味:満開の桜の大木がずずんと四股を踏んで、私は古代の王として立っていると言っているようだ
【NO.9】岡本かの子
『 桜ばな いのち一(いっ)ぱいに 咲くからに 生命(いのち)をかけて わが眺めたり 』
意味:桜の花が命の力一杯に咲いているから、私も全身全霊をかけて眺めている。
【NO.10】馬場あき子
『 桜咲くころ 感情は 静かならず 亡き人亡き犬亡き小鳥たち 』
意味:桜を眺めていると心がざわめく。別れた人、犬、小鳥たちを思い出して。
【NO.11】馬場あき子
『 さくら花 幾春かけて 老いゆかん 身に水流の 音ひびくなり 』
意味:桜の花はいくつの春を経て老いていくのでしょうか。からだの中に水が通っていく音もひびいていきます。
【NO.12】岡野弘彦
『 ほれぼれと 桜吹雪の 中をゆく さみしき修羅の 一人となりて 』
意味:深く心を惹かれて桜吹雪の中を行くよ。寂しい修羅の心を持った一人となって。
【NO.13】笹井宏之
『 葉桜を 愛でゆく母が ほんのりと 少女を生きる ひとときがある 』
意味:葉桜を愛でている母は、ほんのりと少女に戻って過ごすひとときがあるのです。
【NO.14】長谷川櫂
『 人々の 嘆きみちみつる みちのくを 心してゆけ 桜前線 』
意味:(震災で)人々の嘆きが周りに満ち満ちている陸奥を、心に止めて進むんだよ桜前線よ。
【NO.15】俵万智
『 さくらさくらさくら 咲き始め咲き終わり 何もなかったような公園 』
意味:桜が咲いた桜が散ったとその時々の思いがあるのに、今は何事もなかったように静まり返る公園があるだけ。
桜の有名短歌(和歌)集【昔の短歌 15選】
【NO.1】在原業平(ありわらのなりひら)
『 世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし 』
意味:世の中に桜というものがなかったならば、春になっても桜の花の咲く楽しみ散る悲しさなど心騒がすこともなく、のどかな気持ちでいられるでしょう。
【NO.2】不明
『 散ればこそ いとど桜は めでたけれ 浮き世になにか 久しかるべき 』
意味:桜は散るからこそ素晴らしいのです。この憂いの多い世の中でいつまでも変わらずにいられるものはありません。
【NO.3】壬生忠岑(みぶのただみね)
『 春日野の 雪間をわけて おひいでくる 草のはつかに 見えし君かも 』
意味:春日野の雪の間をわずかに分けて出てくる草のように、わずかに見えた君の姿だよ。
【NO.4】紀貫之(きのつらゆき)
『 山桜 霞の間より ほのかにも 見てし人こそ 恋しかりけれ 』
意味:山桜が霞の間からわずかに見えた時のようにほのかに見えたあなたのことを恋しく思っています。
【NO.5】伊勢大輔(いせのたいふ)
『 いにしへの 奈良の都の 八重桜 今日九重に にほひぬるかな 』
意味:遠い昔に奈良の都で咲いていた八重桜が今日はこの宮中(九重)でひときわ美しく咲いています。
【NO.6】西行法師
『 花見にと 群れつつ人の 来るのみぞ あたら桜の とがにはありける 』
意味:花見に大勢の人が来て騒がしくなることが桜の罪だとも言える。
【NO.7】西行法師
『 願わくば 花の下にて 春死なむ その如月の 望月の頃 』
意味:願うことならば(旧暦で)2月15日の満月の頃に満開の桜の下で死にたいものだ
【NO.8】山部赤人(やまべのあかひと)
『 あしひきの 山桜花 日並べて かく咲きたらば いと恋ひめやも 』
意味:もしも山の桜が何日も咲いていたならば、こんなに恋しいとは思わなかったでしょう。
【NO.9】大江匡房(おおえのまさふさ)
『 高砂の 尾の上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ 』
意味:遠くの山の峰の桜が咲きましたよ。人里に近い山の霞よ立たないでおくれ
【NO.10】小野小町
『 花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに 』
意味:花(桜)の色は長雨が降って色あせてしまいました。私が世の中のあれこれをむなしくぼんやりと思いふけっているうちに。
【NO.11】柿本人麻呂(かきのもとひとまろ)
『 桜花 咲きかも散ると 見るまでに 誰れかもここに 見えて散り行く 』
意味:桜の花が咲いてすぐに散ってしまうように、ここに集って散っていく人々は誰なのでしょうか。
【NO.12】紀貫之
『 桜花 咲きにけらしな あしびきの 山のかひより 見ゆる白雲 』
意味:桜の花が咲いたようです。山の間から白雲が見えています。
【NO.13】紀友則
『 み吉野の 山辺にさける 桜花 雪かとのみぞ あやまたれける 』
意味:吉野山の山辺に咲いている桜の花を、雪かと見違ってしまったよ。
【NO.14】紀友則
『 ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ 』
意味:日の光がこんなにものどかな春の日に、どうして桜の花だけは落ち着くこともなく散っていってしまうのでしょう。
【NO.15】良寛(りょうかん)
『 いざ子ども 山べにゆかむ 桜見に 明日ともいはば 散りもこそせめ 』
意味:さあ子どもたちよ、山のあたりに桜を見に行こう。明日行くなんて言っていたら散ってしまうよ。
以上、桜の有名短歌(和歌)集でした!
桜、とはっきり区別せず「花」と書いているものでも桜の花を指していたり、破調のものなど様々でしたね。
和歌と呼ばれている昔のものと現代短歌では、使う言葉やシチュエーションがかなり違うのも面白いところです。
桜はみなさんの生活の中でも卒業式や入学式、春休みに新生活の始まりに合わせたように日本中で咲く花です。