【食べ物を題材にした短歌 20選】知っておきたい!!季語を含む有名短歌&素人短歌を紹介!

 

食べ物に関する短歌は今昔数多く存在します。

 

食べ物の短歌には、思わず食べたくなるようなリアルな情景を歌われたものが多くあります。

 

 

 

今回は、「食べ物」を題材にして歌った有名短歌やおすすめ短歌をご紹介します。

 

短歌職人
ぜひ短歌作りの参考にしてみてください!

 

食べ物を題材にした有名短歌【おすすめ10選】

 

【NO.1】長意吉麻呂

『 醤酢(ひしほす)に 蒜搗(ひるつ)きかてて 鯛願ふ 我にな見えそ 水葱(なぎ)の羹(あつもの)

意味:鯛を醤酢と蒜を搗いたものを食べたいが、水葱の羹は欲しくない。

短歌職人
鯛は食べたいけれど水葱の汁はいらないという欲望に忠実な歌です。当たり前ですが、昔の人にも好き嫌いはあるんだなと感慨深い気持ちになります。短歌と言えば美しい風流なイメージもありますが、こういった赤裸々な歌もユニークで良いですね。

 

【NO.2】光孝天皇

『 君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ 』

意味:あなたのために春の野に行って若菜を摘む私の袖に、雪が降りしきるのです。

短歌職人
瑞々しく優しく、美しい歌です。春先のまだ寒い時分に雪の降る中でも相手を思って若菜を摘みに行く献身が心にしみるようです。

 

【NO.3】大伴家持

『 石麻呂に 吾(われ)物申す 夏痩せに よしといふ物そ 鰻とり喫()せ 』

意味:瘦せすぎた友人が心配なので、夏に食べるとよいとされる鰻をおすすめする。

短歌職人
友人を思う気持ちがふんだんに表れた優しい歌です。鰻は夏の貴重なたんぱく源ですから、友人も鰻を食べて友情を再認識して、元気が出たのではないでしょうか。

 

【NO.4】有馬皇子

『 家にあれば 笥(け)に盛る飯を 草枕に 旅にしあれば 椎の葉に盛る 』

意味:家にいれば笥に盛る飯ですが、今は旅に出ているので椎の葉に盛ります。

短歌職人
シチュエーションによってご飯の魅力も変わることがよく伝わります。家で食べるいつものご飯も、お弁当につめてお外で食べると気持ちが違います。この歌のように、自然のものを使って食事をとるのも楽しそうです。

 

【NO.5】橘 曙覧

『 楽しみは まれに魚煮て 兒等(こら)皆が うましうましと いひて食ふ時 』

意味:まれに魚を煮て子供たちに出したときに、うまいうまいと言って食べているのが楽しい。

短歌職人
人がおいしいと言って食事をするのを眺めるのはこちらもついうれしくなってしまうものです。煮たお魚は、子供たちの大好物だったのでしょうか。たまにしか出ないことで喜びもひとしおです。

 

【NO.6】良寛

『 月よみの 光を待ちて 帰りませ 山路は栗の 毬(いが)の多きに 』

意味:山道は栗の毬がたくさんあるから、月が出るのを待ってから帰りなさい。

短歌職人
帰る客人にそっとかける一言のような、気遣いが感じられるほっこりとした歌です。まだここにいていいと言われているような、歓迎されていたんだなと知れる安心感があります。

 

【NO.7】斎藤茂吉

『 沈黙の われに見よとぞ 百房の 黒き葡萄(ぶどう)に 雨ふりそそぐ 』

意味:黒々とした百房の葡萄が、沈黙している私に見よとばかりに雨が降り注ぐ姿を見せている。

短歌職人
どこか冷え冷えとしたほの暗さを感じられる歌です。百房の葡萄をの色を黒と表現したことによって、作者の感じた閉塞感と悲しみが如実に感じられます。

 

【NO.8】正岡子規

『 籠に盛りて 柿おくりきぬ 古里の 高尾の楓 色づきにけん 』

意味:籠に盛った柿を送ってもらった。古里である高尾の楓も色づいたことだろう。

短歌職人
秋の気配がする風流な歌ですね。贈り物をいただくと、その地のことを思い出したり、故郷について思いを馳せたりして郷愁に浸って今度帰ってみようかな、という気になります。

 

【NO.9】俵万智

『 水蜜桃(すいみつとう)の 汁吸うごとく 愛されて 前世も我は 女と思う 』

意味:桃の汁を吸うように愛されて、私も前世は女であったと思う。

短歌職人
桃というモチーフがこれ以上ないくらいマッチする艶っぽい歌です。水蜜桃という言葉の響きが美しいです。

 

【NO.10】長塚節

『 しめやかに 雨過ぎしかば 市の灯は みながら涼し 枇杷(びわ)うずたかし 』

意味:夏の雨上がりに市場の灯は涼しげに感じられ、また枇杷がうず高く積まれている。

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夏の一部を切り取ったかのような瑞々しい短歌です。夏の雨は時に癒しをもたらしてくれます。そんな中、市場で枇杷を見つけてしまったら、ついつい買って食べたくなってしまいそうです。

 

食べ物を題材にした素人オリジナル短歌【おすすめ10選】

 

【NO.1】『 たくさんの 筍頂き おすそ分け おいしい惣菜 我が家に戻り 』

短歌職人
おすそ分けした筍がおいしい惣菜となって返ってきたというご近所同士のつながりを感じる歌です。いいことをするといいことが返ってきたという場面にワクワクに満ちた気持ちになります。

 

【NO.2】『 その昔 キウイは緑 しかなくて 食べると舌が ざらざらとした 』

短歌職人
ゴールドキウイがまだ存在しなかった頃の歌です。緑色のスタンダードなキウイは確かに酸味が強く、舌に違和感を覚えた方も多かったのではないでしょうか。でもそれがキウイならではのおいしさなのではないかと思います。

 

【NO.3】『 大切に すれば溶けてく まだこない 君に食べさせたかったアイス 』

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相手に渡すためのアイスが手の中で溶けていくという切ない短歌です。相手が来ない焦燥感と来ないのではないかという小さな絶望を溶けていくアイスが代弁してくれているようです。

 

【NO.4】『 たまねぎと 心通わす 台所 深く知るたび 涙流れる 』

短歌職人
台所でひとり、たまねぎを刻んで涙するというごく日常的な動作を文学的に表した歌です。切られた玉ねぎは汁を飛ばし、それが目に入った自分は涙を流す。一緒に泣いている気分になったのでしょうか。

 

【NO.5】『 今回は 見送ったのに 川下から 大きな桃が 遡上(そじょう)してくる 』

短歌職人
桃太郎の童話をユニークにアレンジした短歌です。流れに逆らっておばあさんに向かってくる大きな桃、想像するだけでおもしろいです。

 

【NO.6】『 あんず飴 浴衣の君が 差し出した 酸いも甘いも 瞬きの中 』

短歌職人
夏祭りの一瞬を切り取った、まさにあんず飴のような甘酸っぱい歌です。お祭りの日の情景が頭に浮かぶようです。この日のことは作者にとって忘れられない一瞬となりそうです。

 

【NO.7】『 夏の日の 檸檬(れもん)かじれば 涼しげに その香はじけて 君が頬にも 』

短歌職人
夏の日の暑さと檸檬の清涼感の対比が美しいです。齧るという少し無作法な動作が青春の一幕のように感じられます。

 

【NO.8】『 日も暮れて 蟋蟀(こおろぎ)の音を 聞き乍(なが)ら 鰤(ぶり)大根の 鍋を突っ突き 』

短歌職人
窓の外から聞こえてくるコオロギの声を聴きつつ鰤大根をたしなむ、季節を目いっぱい楽しんでいる素敵な歌です。寒い季節ならではの情景が幸せながらもどこか哀愁を感じさせられます。

 

【NO.9】『 二人して 座るベンチの 目の前を 石焼き芋の 屋台が通る 』

短歌職人
寒くなってきた公園のベンチで、石焼き芋の屋台が通りかかったら思わず買いに行ってしまいそうです。買った焼き芋は、二人で半分こするのでしょうか。微笑ましいです。

 

【NO.10】『 曖昧な 甘さに惑う 桜餅 葉を剥ぐ人差し指の悲喜 』

短歌職人
桜餅の葉っぱを上手に剥ぐのは難しいです。桜の曖昧な味がよく表現された春らしい歌です。

 

以上、食べ物を題材にしたおすすめ短歌でした!

 

食べ物をテーマに作られた歌は、家庭の暖かさを感じられるものが多いように感じます。

 

以外にも果物と雨を掛け合わせた歌が多く見受けられました。雨が果物の新鮮さを助長するのでしょうか。

 

短歌職人
是非、あなたも短歌作りにチャレンジしてみてください!