日本の象徴ともいえる「富士山」。
世界遺産(文化遺産)に登録され、近年では富士山を見に来る外国人観光客も増えていますね。
有名歌人たちはそんな富士山をどのように見ていたのでしょうか?
今回は、富士山を詠んだ短歌(有名短歌&オリジナル短歌)をご紹介します。
富士山を詠んだ短歌【有名短歌10選】
まずは、昔の短歌から有名なものを10つご紹介します。
【NO.1】山部赤人
『 田子の浦に うちいでて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪はふりつつ 』
意味;田子の浦の眺めの良い所に進み出て、遥か彼方を見渡すと、真っ白い富士山の頂上に今もなお雪は降り続いていることだよ。
【NO.2】慈円
『 天の原 富士のけぶりの 春の色の 霞になびく あけぼのの空 』
意味;大空に立ち昇る富士の煙が春の色である。浅緑の霞となってなびいている曙の空。
【NO.3】源頼朝
『 道すがら 富士のけぶりもわかざりき 晴るる間もなき 空のけしきに 』
意味;旅の途中、せっかく楽しみにしていた富士山の煙もはっきり見ることができなかった。晴れ間もない天候だったのは非常に残念だ。
【NO.4】紀貫之
『 しるしなき けぶりを雲に まがへつつ 夜を経て富士の 山と燃えなむ 』
意味;わたしはききめのない恋の想いの煙を立ち昇らせ、雲にまぎれさせながら、幾夜も富士山のように燃え続けるのあろう。
【NO.5】清原深養父
『 けぶり立つ 思ひならねど 人しれず わびては富士の ねをのみぞ泣く 』
意味;煙の立ち昇る思いの火ではないが、相手に知られないままわびしくなって富士の嶺ではないが、身を伏し、ただ声をあげて泣くよ。
【NO.6】藤原家隆
『 富士の嶺の 煙もなほぞ 立ちのぼる うへなきものは おもひなりけり 』
意味;富士山の煙も、嶺よりも高く立ちのぼる。そのように、この上なく高く燃えるものはわたしの恋の想いの火なのだ。
【NO.7】慈円
『 世の中を 心たかくも いとふかな 富士のけぶりを 身の思ひにて 』
意味;私は身の程も弁えず、この世の中を不遜にも気位高く厭離(えんり)しようとしている。空高く立ち昇る富士の煙に、自身の思いを託して。
【NO.8】西行法師
『 風になびく 富士の煙の 空に消えて 行方もしらぬ わが思かな 』
意味;風に吹かれてなびく富士の噴煙が空に消えて、その行方も分からない。その煙と同じように、私の思いもどこに行こうとするのか、行方も分からない。
【NO.9】在原業平(業平成臣)
『 時知らぬ 山は富士の嶺 いつとてか 鹿の子まだらに 雪の降るらむ 』
意味;季節を知らない山は富士の山だ。五月末だというのに、富士の嶺には鹿の子のまだら模様のように、まだ雪が残っている。
【NO.10】源実朝
『 見わたせば 雲居はるかに 雪白し 富士の高嶺の あけぼのの空 』
意味;見渡すと、雲の向こうに雪が白く見える。富士山の頂上が見える、曙の空だなあ。
富士山を詠んだ短歌【素人オリジナル短歌10選】
次に、素人オリジナル短歌をご紹介します。
有名人に負けず劣らずの作品がズラリ…!ぜひ短歌作りの参考にしてみてください。
【NO.1】『 ここからは 富士が見えなくて さびしいと わたしがいるのに 妻がつぶやく 』
【NO.2】『 富士山は 背中を押して くれました 職なきときも 離職のときも 』
【NO.3】『 人間は ちっぽけなものだと 五合目で 言うな父さん 富士山顔で 』
【NO.4】『 参考書 開くその手は そのままに 車窓の富士に 誓う合格 』
【NO.5】『 江戸川に 富士を見にゆく 何もかも リセットしてしまいたくなるとき 』
【NO.6】『 山のなか 小さくなってく 友の背と 大きくなった 蝉の鳴き声 』
【NO.7】『 念願の あの頂に 立つために 富士を横目に 今日も漕ぎ抜く 』
【NO.8】『 富士山の 晴れたる夜は 山小屋の 明り点々 空へと続く 』
【NO.9】『 大きいな とても大きい 大きいぜ こんな器に 私はなりたい 』
【NO.10】『 教室の 窓の向こうに 見える富士 履修の日々が 離愁に変わる 』
以上、富士山を詠んだ短歌20選でした!
富士山は、いつの時代も私たち日本人にとっての心のふるさとであり、日本文化の歴史そのものといえます。