みなさんは3月といえば何を思い浮かべますか?
イベントではひなまつり、学校生活では終業、春休み、卒業式もありますね。
寒さも緩んで雪解けも進み、桜も開花し春の訪れを多く感じる時期でもあります。
今回は、そのような3月らしい有名短歌(和歌)集をご紹介します。
3月の有名短歌(和歌)集【昔の短歌(和歌) 10選】
まずは昔の短歌(和歌)から有名なものを10選ご紹介いたします。
【NO.1】小野小町
『 花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに 』
意味:桜の花の色は長雨で衰えてしまいました。私も同じようにぼんやりと物思いにふけっているうちに衰えてしまったようです
【NO.2】兼覧王女
『 萌え出づる 木の芽を見ても 音をぞなく かれにし枝の 春をしらねば 』
意味:萌え出ている木の芽を見ても私は声を出して泣いています。枯れてしまった枝が春を知ることができなかったことを思えば
【NO.3】志貴王子
『 石走る 垂水(たるみ)の上の さわらびの 萌えいづる春に なりにける 』
意味:岩の上を激しく流れる滝のほとりでさわらびが芽を出す春になったことだなぁ
【NO.4】藤原良経
『 ながむれば かすめる空の 浮雲と ひとつになりぬ 帰る雁がね 』
意味:空を眺めたら霞んだ空に浮かんだ雲とひとつになったように見える、北へ帰る雁が見えるよ
【NO.5】凡河内躬恒(おほしこうちのみつね)
『 春来れば 雁かへるなり 白雲の 道ゆきぶりに ことやつてまし 』
意味:春がくれば雁は北へ帰っていく。白雲の中を行く道中のついでに言伝をしたいのだがなあ
【NO.6】藤原定家
『 心にも あらぬわかれの 名残かは 消えてもをしき 春の雪かな 』
意味:本意ではない別れの名残でしょうか、消えてしまうのが惜しいと思う春の雪です。
【NO.7】藤原為家
『 佐保姫の 筆かとぞみる つくづくし 雪かきわくる 春のけしきは 』
意味:春の女神の佐保姫が使われる筆かと思ってみたらつくしでした。残雪をかき分けて頭を出していた春の景色ですよ
【NO.8】紀貫之
『 霞たち 木の芽も春の 雪降れば 花なき里も 花ぞ散りける 』
意味:春霞が立って木の芽が芽吹いて、春の雪が降ってくれば花がまだ咲いていない里にも花びらが散っているように見えるだろう
【NO.9】清原元輔
『 あかざらば 千代までかざせ 桃の花 花も変わらじ 春も絶えねば 』
意味:心いくまでいつまでも咲いておくれ桃の花よ。春が終わらなければ花も変わることはないだろう
【NO.10】伊勢
『 春霞 立つを見捨てて 行く雁は 花なき里に 住みやならへる 』
意味:春霞がたちいい季節になる地を捨てて北へ行ってしまう雁は、花がない里に住み慣れているのでしょうか
3月の有名短歌(和歌)集【現代短歌 10選】
次は明治以降の現代短歌から10選ご紹介いたします。
【NO.1】島木赤彦
『 春の雪 おほくたまれり 旅立たむ 心しづまり 炉にあたり居り 』
意味:春の雪が外にたくさん降り積もっているので、旅に出たい気持ちも静まって火にあたっているところです
【NO.2】与謝野鉄幹
『 五つとせ むつまじかりし 友のわかれ 城のひがしに 春の雪踏む 』
意味:5年の間親しく付き合ってきた友人と別れは、城の東に春の雪が積もっているのを踏みながらでした
【NO.3】斎藤茂吉
『 うつつにし もののおもひを 遂ぐるごと 春の彼岸に ふれる白雪 』
意味:現実のこの世にものの思いを遂げるかのように、春の彼岸に降る珍しい白雪ですよ
【NO.4】正岡子規
『 つくづくし 摘みて帰りぬ 煮てや食はん ひしほと酢とに ひでてや食はん 』
意味:つくしをたくさん摘んで帰った。煮て食おうか酢醤油に浸して食おうか
【NO.5】佐藤ヨリ子
『 川土手の 土筆を摘みて 来し幼な 抱けば甘き 日の匂いする 』
意味:川土手のつくしを摘んできた子どもを抱くと、甘くてほんわりとした日の匂いがするよ
【NO.6】春日いづみ
『 段飾りの 身分差を厭ひ 一列に 並ぶるは吾より 始まりしこと 』
意味:雛人形が身分によって段に飾られているのをいやがって横一列に並べて飾るようになったのは私が始めたことですよ
【NO.7】初井しづ枝
『 落ちてゐる 鼓を雛に 持たせては 長きしづけさに ゐる思ひせり 』
意味:落ちている鼓を雛人形に持たせたあと、長いあいだ静かだったことに思いを馳せています
【NO.8】小島ゆかり
『 われにふかき 睡魔は来たる 一人づつ 雛人形(ひな)を醒まして飾り終ふれば 』
意味:私に深い睡魔が襲ってきたよ。一人ずつ雛人形を箱から出して目を覚まさせながら飾り終わった頃に
【NO.9】永田紅
『 卒業を 見送り続け ついに我が こととなりゆく 陽は三月へ 』
意味:同朋たちの卒業を何度も見送り続けてきた自分がついに卒業することになった3月の日になりました
【NO.10】俵万智
『 さんがつの さんさんさびしき 陽をあつめ 卒業してゆく 生徒の背中 』
意味:三月の燦々と降り注ぐ陽の光と寂しい気持ちを背中に受けながら卒業していく生徒の背中を見送るよ
以上、3月の有名短歌集でした!
昔も現代も時代によって表現は違えど、同じ題材を詠んだ3月らしい短歌がありましたね。
短歌は詠む人の感情や経験によって内容が大きく変わるのも面白いところです。