12月と言えば、寒さも厳しくなり本格的な冬を迎えるころですが、私たちの生活の中では1年を締めくくる月でもあります。
今回は、そんな12月を詠ったおすすめ短歌(昔の短歌(和歌)&現代短歌)をご紹介します。
12月の短歌(和歌)集【昔の短歌 10選】
まずは、大昔の和歌から江戸時代までに詠まれた短歌をご紹介いたします!
【NO.1】藤原定家
『 水鳥の うきねよ何の ちぎりにて こほりとしもと 結びおきけむ 』
意味:水鳥よ、この寒さのの中でどんな契りを交わしたから、氷と霜に包まれているのか。
【NO.2】紫式部
『 水鳥を 水のうへとや よそに見む 我も浮きたる 世を過ぐしつつ 』
意味:水に浮かびながら、のうのうと過ごしている水鳥を横目に見ている。実は私も水鳥のように、ふわふわしながらこの世を生きているというのに。
【NO.3】鴨長明
『 月影の かたぶく磯に ゐる鴨は 片羽に残る 霜かとやみる 』
意味:月影が沈んでいく磯にいた鴨の羽になにかがついていたが、あれはきっと霜だろうな。
【NO.4】式氏内親王
『 群れて立つ 空も雪気に 冴え暮れて 氷の閨に 鴛鴦ぞ鳴くなる 』
意味:澄み切っている冬の空だ。氷でつくられた寝屋で、鴛鴦が鳴いている。
【NO.5】西行法師
『 月を待つ 高嶺の雲は 晴れにけり 心あるべき 初時雨かな 』
意味:月の出を心待ちにしていると、高嶺に掛かっていた雲が晴れ渡って時雨も止んだ。なんと人の情を解する初時雨であることよ。
【NO.6】清原深養父
『 冬ながら 空より花の 散りくるは 雲のあなたは 春にやあるらむ 』
意味:まだ冬だというのに、空から花が散ってくるのは、雲の向こうは春なのだろうか。
【NO.7】藤原清輔
『 初雪に われはあとを つけじとて まづ朝たたむ 人を待つかな 』
意味:初雪が降った地面に足跡を付けないように、私はじっとだれかが通るのを待って居よう。
【NO.8】源俊頼
『 都には 忘られにける 身なれども 寒さばかりは 訪ね来にけり 』
意味:故郷に忘れられてしまった私の元には、冬の寒さだけがやってくるのだ。
【NO.9】藤原定家
『 このごろは 霜雪だにも 落ち散らぬ 冬のみ山の ひるのさびしさ 』
意味:この頃は、霜雪でさえも降らない。緑もなくなってしまった山はなんとも寂しい風景だ。
【NO.10】柿本人麻呂
『 淡海の海 夕波千鳥 汝が鳴けば 情もしのに 古思ほゆ 』
意味:近江の海の夕方に立つ波の上を飛んでいる千鳥たちよ。君たちが鳴くと、私の心は昔のことを思い出してしまうんだよ。
12月の短歌集【現代短歌 10選】
続いて、明治時代から現代にかけて詠まれた短歌(現代短歌)をご紹介いたします!
【NO.1】若山牧水
『 大きなる 月にしあるかな 冬凪の 空の低きに さし昇りたる 』
意味:大きい月である。冬凪を感じながら砂嘴に登って月を眺めるよ。
【NO.2】樋口一葉
『 くれてゆく 年の道さへ みゆるかと おもふてばかりに てる月夜かな 』
意味:暮れていく年への道のりを照らすかのように、月夜は輝いている。
【NO.3】正岡子規
『 冬枯の 花なき園に とぶ蝶の けふの命に 嵐ふくなり 』
意味:冬の寒さで枯れてしまった花園に、蝶が飛んでいる。小さい命に容赦もない、冬の嵐に吹き付けられながら。
【NO.4】与謝野晶子
『 冬の空 針もて彫りし 絵のやうに 星きらめきて 風の声する 』
意味:冬の空は、まるで彫った絵かのようにとてもきれいな星空で、風のささやく声もする。
【NO.5】伊藤左千夫
『 わがめづる 庭の小松に このあした 初雪ふれり 芝の小松に 』
意味:私が手をかけているこの庭の小松に、今朝初雪が降りました。
【NO.6】島木赤彦
『 冬の日は 短けれども 椿の下 白き布団の ふくらめるかも 』
意味:冬の日はあっという間に過ぎてしまうが、その間にも椿はつぼみをふくらませているんだな。
【NO.7】北原白秋
『 巓(いただき)の 裏行く低き 冬の雲 榛名の湖は 山のうへの湖 』
意味:山の頂に届かないほど低い、冬の雲がかかっている。そんな場所に、榛名湖はある。
【NO.8】斎藤茂吉
『 湯たんぽを 机の下に 置きながら けふの午前を しづかに籠る 』
意味:湯たんぽを机の下に置いて、こんな寒い日の午前中は家でゆっくり過ごそう。
【NO.9】大野信夫
『 クリスマス・ツリーを飾る 灯の窓を 旅人のごとく 見てとほるなり 』
意味:クリスマスツリーを飾っている家を横目に見ながら、私は旅人かのようにただ通り過ぎるんだ。
【NO.10】俵万智
『 「寒いね」と話しかければ「寒いね」と 応える人のいる あたたかさ 』
以上、12月の有名短歌集でした!
同じ12月でも、時代が変われば感じることも違ってくるということが歌に表れていましたね。
特に現代短歌では、「クリスマス」などといった、カタカナのいわゆる「横文字」も取り入れられたりと、時代の流れを短歌から感じ取ることができます。