【源実朝の有名和歌20選】鎌倉幕府第3代将軍!!和歌の特徴や人物像•代表作などを徹底解説!

 

鎌倉幕府三代将軍の源実朝は武家の頭領ながら和歌が好きで、積極的に和歌作りを学び多くの歌を残しました。

 

彼の歌は京の公家からも高い評価を得て、国の公式な歌集である勅撰和歌集に何十首も選ばれています。

 

今回は、「源実朝」の和歌の中から有名なものを20首紹介していきます。

 

 

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和歌の意味や、実朝の人物像についても解説していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

 

源実朝の人物像や作風

(源実朝 出典:Wikipedia

 

源実朝(みなもと の さねとも)は鎌倉幕府を開いた源頼朝の次男で、鎌倉幕府の三代将軍です。

 

二代将軍だった兄の頼家が、幕府の中枢であった北条氏と対立して追放されたため、12歳で征夷大将軍となりました。父頼朝を尊敬し、配下である御家人からも信頼の篤い将軍だったと伝えられています。

 

朝廷からも重用され、武士では初めての右大臣にも任命されました。しかし26歳の折、頼家の子に暗殺されて短い生涯を終えました。

 

 

実朝は和歌が好きで、当時有名な歌人であった藤原定家から和歌の指導も受けていました。定家から「万葉集」を贈られると熱心に読み、和歌を勉強し続けたようです。実朝は多くの和歌を詠み、自分の歌集「金塊和歌集」の編纂も手がけました。

 

彼の和歌には京の貴族が好んだような雅な内容のものもあれば、「万葉集」にあるような自分の心を飾らずに表現したものもあります。

 

中には優れた感性で表現され、当時の歌人だけでなく正岡子規など後世の歌人からも絶賛されたような歌も見られます。

 

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また自然や動物、人に対する目線が柔らかで、少しの変化に気が付いたり感じ入ったりする歌が多いことから、優しく感受性が強い人柄であったことが想像されます。

 

源実朝の有名和歌・代表作【20選】

 

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ここからは、源実朝のおすすめ和歌を20首紹介していきます!

 

源実朝の有名和歌【1〜10首

 

【NO.1】

『 山はさけ 海はあせなむ 世なりとも 君にふた心 わがあらめやも 』

【意味】山が裂け、海の色が褪せるような世の中になったとしても、あなたに二心などあろうはずがない。

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当時の権力者で実朝の妻の血縁でもある後鳥羽上皇への忠誠を歌ったものです。第五句の「あらめやも」は反語で「二心があるだろうか、いやない」と忠義の心を強調しています。「山はさけ」という力強い歌い出しと忠誠心をテーマにするところに武将らしさが感じられます。

【NO.2】

『 古寺の くち木の梅も 春雨に そぼちて花も ほころびにけり 』

【意味】古寺の朽ちた梅の木が春の雨に濡れそぼって、梅の花もほころんでいる。

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「ほころぶ」にはつぼみが少し開く様子や、口を開いて笑う様子といった意味があります。実朝には暖かな春の雨を受けた梅の花が嬉しそうに見えたのかもしれません。

【NO.3】

『 今朝みれば 山もかすみて 久方の 天の原より 春は来にけり 』

【意味】今朝見ると山は春霞が立ってかすんでいて、遥か遠くの天上世界から春がやって来たのだなと思った。

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「天の原」は神様の住む天界やのことです。春が天上世界からやって来るとは、単に巡る季節への感慨だけではなく天人が人間世界に春を分けてくれたような場面が想像され、春にありがたさを感じているように思われます。

【NO.4】

『 風さわぐ をちの外山に 雲晴れて 桜にくもる 春の夜の月 』

【意味】遠くの外山に風が吹いて雲を晴らした。春の夜空は桜に曇って、そこには月が浮かぶ。

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風がざわざわと騒ぐような音を立てたので見ると、遠くの山の方では雲が晴れて月が出ていたのでしょう。風で雲は流れたけれど桜が花霞のようになって月の姿をかすませるという、匂い立つような春の夜を歌ったものです。

【NO.5】

『 昨日まで 花の散るをぞ 惜しみこし 夢かうつつか 夏も暮れにけり 』

【意味】つい昨日まで桜が散るのを惜しんでいたのに夢か現か既に夏が終わろうとしている。

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実朝は何かでふいに夏がもう終わるのだなと感じて、時が経つのは早いものだと感慨を覚えたのでしょう。「夢かうつつか」には少しの驚きと、季節が移ることへの寂しさも感じられます。

【NO.6】

『 秋ちかく なるしるしにや 玉だれの こすの間とほし 風のすずしき 』

【意味】秋が近いしるしなのだろう。すだれの隙間を通る風が涼しい。

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暑い夏の終わりに吹く風に涼しさを感じて秋を思う歌です。すだれの隙間を通ってきた風はわずかなものでしょうが、それでも冷えた空気の流れが快かったのでしょう。「涼しい…」という心地の良さが率直に表されています。

 

【NO.7】

『 夕されは 秋風涼し たなばたの 天の羽衣 たちや更ふらん 』

【意味】日が落ちると秋風が涼しい。七夕の天女が羽衣をまとって立つ頃だろう。

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旧暦では七夕は秋にあります。実朝は涼しい夜風に吹かれながら星が瞬き始めた空を見上げて、そろそろ織姫が出発する頃だろうかと想像したのではないでしょうか。

【NO.8】

『 萩の花 くれぐれまでも ありつるが 月出でて見るに なきがはかなさ 』

【意味】夕暮れまで咲いていた萩の花があったが、月が出たので見てみるともう散っていた儚さよ。

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月の光の中で花を愛でようと思っていたのでしょうか。しかし花は散ってしまって既に姿はありませんでした。花の命の短さに驚きを感じ、その儚さに感じ入っています。儚さ故に花に愛情を感じたのかもしれません。

【NO.9】

『 天の原 ふりさけみれば 月きよみ 秋の夜いたく 更けにけるかな 』

【意味】天を仰いで見れば月は清く澄んで、秋の夜は更けていくのだな。

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秋の月の美しさを歌っています。空を「天の原」と表現したのは、月を清らかで神聖なものだと感じたからかもしれません。実朝は美しい月を眺めながら秋の夜の情緒をしみじみと味わっていたのでしょう。

【NO.10】

『 秋はいぬ 風に木の葉は 散りはてて 山さびしかる 冬は来にけり 』

【意味】秋は去ってしまった。風で木の葉は散り果てて、山が寂しい冬が来たのだ。

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初句の「秋はいぬ」がストレートで、秋が終わった寂しさが直接伝わります。紅葉して色鮮やかだった葉が枯れて散ってしまった山は見ていても寂しい、山だって寂しく思っているだろうという気持ちが感じられます。

源実朝の有名和歌【11〜20首

【NO.11】

『 世の中は つねにもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱手かなしも 』

【意味】世の中はいつまでも変わらないでほしい。渚で海女の乗る小舟の漕ぎ手を見ても愛おしく感じるのだから。

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どうか平和な今の世のまま変わらないでいてくれという願いが込められています。日常を愛していることが伝わり、自分だけでなく海女のような平民の暮らしも変わることがないようにとの思いが伝わる歌です。

【NO.12】

『 時により 過ぐれば民の 嘆きなり 八大龍王 雨やめたまへ 』

【意味】時には過ぎたることが民の嘆きとなります。八大龍王よ、雨を降らすのをやめてください。

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大雨で民衆に被害が出た際の歌です。雨は恵みだけれど、降りすぎては民が嘆くことになると、雨の神である八大龍王にあてた歌で、将軍として民を思う心が表れています。

【NO.13】

『 来ぬひとを かならず待つと なけれども あかつきがたに なりやしぬらむ 』

【意味】来ない人を必ず待っているということでもないが、もう夜明けになってしまったようだ。

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恐らく来ない恋人を夜明けまで待っていたのでしょう。必ずしも待ち続けているというわけではないけれど、と言いつつ本心では来るまで待つつもりだったのではないでしょうか。

【NO.14】

『 大海の 磯もとどろに 寄する波 破れて砕けて 裂けて散るかも 』

【意味】大海の磯にとどろくように寄せる波、破れて砕けて裂けて散るようだ。

短歌職人
「破れて砕けて裂けて」と「て」の繰り返しによってリズムの良い歌となっており、繰り返し寄せる波をイメージさせます。荒々しい言葉を使って打ち寄せる波の迫力を表現した男性的で力強い歌です。

【NO.15】

『 ものいはぬ 四方のけだもの すらだにも あはれなるかな 親の子をおもふ 』

【意味】言葉を話さない獣ですら人の心を動かすよ、親の子を思う気持ちには。

短歌職人
動物の親が子を大切にする様子を見て、獣にだって親子の愛情はあるのだと思ったのでしょう。まして人間ならばなおさら親子の情は深いのだと強く思ったのかもしれません。

【NO.16】

『 月をのみ あはれと思ふを さ夜ふけて 深山がくれに 鹿ぞ鳴くなる 』

【意味】月にばかり趣があると思っていたが、夜がふけて深い山の中で鹿が鳴くのが聞こえてきた。

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月の美しさに感じ入りながら夜を過ごしていたのでしょう。そこに山の奥から鹿の鳴き声が聞こえて、静かな夜に沁み入るような鹿の声にハッと心動かされ、趣の深さに感動したことが伝わってきます。

【NO.17】

『 身につもる 罪やいかなる つみならん 今日降る雪と ともに消ななむ 』

【意味】この身に積もった罪とはどんな罪だろう。今日降る雪とともに消えてほしいものだ。

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ここで言う罪とは仏教の罪のことで、知らぬ間に背負ってしまった罪が雪のように消えてくれないかと願う歌です。二代将軍だった兄は追放後に暗殺されていますが、実朝は自分を業の深い人間だと思っていたのではないでしょうか。

【NO.18】

『 神といひ 仏といふも 世の中の 人の心の ほかのものかは 』

【意味】神と言い仏と言うけれど、神仏は世の中の人の心の中にいるにすぎないのだろうか。

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神や仏は人間を救ってくれるのだろうか、人が信じているだけなのではないか、という葛藤が込められています。しかし第五句の「ものかは」は反語になっており「いやそうではない、神や仏はいるのだ」という気持ちを強調します。

【NO.19】

『 君が代も 我が代も尽きじ 石川や 瀬見の小川の 絶えじとおもへば 』

【意味】あなたの治世も私の治世も終わることはないだろう。賀茂川の流れは絶えないのだから。

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「君」は後鳥羽上皇で、上皇の治める世の中を称えた歌です。「石川や瀬見の小川」は賀茂川を指し、賀茂川の流れが絶えることがないように永遠に続くことを表現しています。そして鎌倉幕府もまた続いていくことを願っていたのでしょう。

【NO.20】

『 出でいなば 主なき宿と なりぬとも 軒端の梅よ 春をわするな 』

【意味】私が出て行って主なき家になっても、軒下の梅よ、春を忘れることなく咲いておくれ。

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自分がいなくなってもお前は変わらずに咲くのだよ、と梅に語りかける歌です。また花を咲かせてお前も春を楽しむのだよ、といった愛情を感じます。実朝はこの歌を詠んだ後に暗殺されたと伝えられています。

 

以上、源実朝が詠んだ有名和歌20選でした!

 

 

 

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今回は、源実朝が詠んだ和歌を20首ご紹介しました。
源実朝は政治の実権を北条氏に握られ、政治よりも和歌を優先した無力な人物として評されることもありますが、彼の和歌には「人を思う優しさ」が感じられます。家臣や民衆を省みないわけでは決してなかったのではないでしょうか。 実朝の和歌は「金槐和歌集」の他、「新勅撰和歌集」でも読むことができます。
実朝の和歌や実朝自身に興味を持った人は目を通してみるのもおすすめです。