川は古代から生活に密着した存在で、海よりも身近な水源です。
現在でも人は日常的に川を眺め、時には流れに自分を投影して見つめることもあります。
今回は、そんな「川」の流れに思いを寄せて詠まれた短歌を20首紹介します。
四万十に墨絵の時間流れおり
沈黙の川、沈黙の橋
__ #俵万智#短歌 #tanka pic.twitter.com/omOHqKMUiM— 朝乃詩史 (@AsanoShifumi) October 20, 2015
青空を写して川の色は青
それを写した瞳も青色#短歌 #tanka pic.twitter.com/LhjnBPXAkT— 桜望子🌸さくらもちこ (@Ma2raMen) December 23, 2016
川を題材にした有名短歌【おすすめ10選】
【NO.1】但馬皇女
『 人言を 繁み言痛(こちた)み おのが世に いまだ渡らぬ 朝川渡る 』
【意味】人の噂が辛く、辛いからこそ、今まで渡ったこともない朝川を渡るのだ。
【NO.2】御春有助
『 あやなくて まだきなき名の 竜田川 渡らでやまむ 物ならなくに 』
【意味】根拠もなく恋の噂が広まってしまった。竜田川を渡らなかろうが、噂はなくなるものでもないだろう。
【NO.3】平貞文
『 白川の 知らずとも言はじ 底きよみ 流れて世世に すまむと思へば 』
【意味】白川を知らないとは言いませんよ、底まで清い白川が世の中に流れ続けると思うのだから。
【NO.4】藤原敏行
『 つれづれの ながめにまさる 涙川 袖のみぬれて あふよしもなし 』
【意味】あなたのことを考えていると涙が川となって流れて袖を濡らすが、あなたに会うすべはないのだ。
【NO.5】陽成院
『 筑波嶺の 峰より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる 』
【意味】筑波山の峰から流れるみなの川が深いように私の恋心も積もって深い淵のようになった。
【NO.6】北原白秋
『 白き犬 水に飛び入る うつくしさ 鳥鳴く鳥鳴く 春の川瀬に 』
【意味】白い犬が水に飛び込むその美しさよ。鳥が鳴いている春の川べりで。
【NO.7】斎藤茂吉
『 ながらへて あれば涙の いづるまで 最上の川の 春ををしまむ 』
【意味】生きながらえた私は涙が出るまで最上川の春の景色を堪能しよう。
【NO.8】佐佐木幸綱
『 川が流れて 俺が流れて 流されて 今日を区切りの 花束浮かす 』
【意味】川が流れるように俺が流れて流されて、今日を区切りとして花束を浮かべる。
【NO.9】萩原慎一郎
『 デモ隊の列途切れるな 途切れないことでやがては川になるのだ 』
【意味】デモ隊の列よ途切れるな、途切れないことでやがては川のようになるのだ。
【NO.10】俵万智
『 柔らかな 秋の陽射しに 奏でられ 川は流れゆくオルゴール 』
【意味】柔らかい秋の陽射しに奏でられたオルゴールのように川は流れていく。
川を題材にした一般短歌【おすすめ10選】
【NO.1】
『 清流の 水面に映る 深い森 聞こえる音は 川のせせらぎ 』
【NO.2】
『 川沿いは 辛き時とて あるだろに 川面映える 真白き木槿 』
【NO.3】
『 この街の 誰かが涙 した夜に 眺めた川を 朝日が照らす 』
【NO.4】
『 行くあても ないがゆっくり 歩いてる 人混みという 川に流され 』
【NO.5】
『 川のある 町に生まれて 波風が 立たないように 暮らしています 』
【NO.6】
『 台風が 過ぎた早朝の 静けさに 響くは川の 濁流の音 』
【NO.7】
『 天の川 はるか手前の 歩道橋 ヘッドライトの 河を見下ろす 』
【NO.8】
『 ささぶねは 楽しさだけを 乗せたまま 流れ見えなく なって夕暮れ 』
【NO.9】
『 明日から あなたのことを 忘れ去り 冬の川より 静かになるの 』
【NO.10】
『 土手走る ヘッドライトが 照らし出す 川沿いに生きる ひとびとのいのち 』
以上、川を題材にした短歌集でした!
川と聞いて皆さんが思い浮かべるのはどんな川でしょうか。
いつもの通りにある近所の小川、たまに通る橋から見下ろす大きな川、または写真や映像で見たことのある憧れの景色に流れる川かもしれません。
そんな「心にある川」をテーマにして短歌を作ってみるのも面白味があっておすすめです。