【2月の短歌(和歌)集 20選】おすすめ!!知っておきたい 2月らしい有名作品を紹介!

 

みなさんは2月といえば何を思い浮かべますか?

 

まだ寒い日が続くとはいえ季節の変わり目である「節分」があり、次の日の「立春」を境に暦上は春の季節になりますね。

 

雪が残っていても梅が咲きウグイスも鳴き始めて春の兆しが目に見えてきます。

 

ここではそのような2月らしさを詠んだ短歌(和歌)から昔と現代の作品からお勧めのものを10選ずつ、全20選をご紹介いたします。

 

短歌職人
ぜひ俳句作りの参考にしてみてください!

 

2月の有名短歌(和歌)集【昔の短歌(和歌) 10選】

 

まずは昔の短歌(和歌)から有名なものを10選ご紹介いたします。

 

【NO.1】菅原道真

『 東風(こち)吹かば にほひをこせよ 梅の花 あるじなしとて 春を忘るな 』

意味:春の東風が吹いたらその香りを私の元に送っておくれ、梅の花よ。主人である私がいなくなっても春に咲くことを忘れるなよ

短歌職人
京から大宰府に行く道真が詠んだとても有名な短歌で「東風」は節分あたりに吹く暖かい春の風のことです。このように大事に思われて詠まれた梅もまた主人を飛んで追いかけたという「飛梅」伝説にもなったほどです。下の句はのちに「大鏡」に編纂された際に「春な忘れそ」に改変されています。

 

【NO.2】二条為世

『 朝あけの 窓吹きいるる 春風に いづくともなき 梅が香ぞする 』

意味:朝に開けた窓から入ってくる春の風にのって、どこからともなく梅の香りがしているよ

短歌職人
昨日までは気づかなかった梅の香りが入ってきた朝は嬉しいですね。嗅覚で感じた梅の香りを切れ字の「ぞ」で強調しています。視覚以外の五感で感じたことを限られた文章で伝えられるのも短歌の面白さです。

 

【NO.3】紀貫之

『 袖ひぢて むすびし水の こほれるを 春立つ今日の 風やとくらむ 』

意味:袖を濡らしながら両手ですくっていた水が冬に凍っていたものを、立春の今日の風が吹きとかしているのだろうか

短歌職人
「むすびし」は両手ですくったという動詞です。袖「ひつ」は水につかるで夏を表し、「水のこほれる」は水が凍るで冬を表し、「春立つ」で春を表したという、三つの季節を同時に詠んだ珍しい短歌です。

 

【NO.4】紫式部

『 とぢたりし 上の薄氷(うすらひ) 解けながら さはたえねとや 山のした水 』

意味:閉ざされた水面の薄氷が溶けるように私たちの間柄もうち解けましたのに、山で流れが絶えるように仲が絶えても良いというのですか

短歌職人
この31文字に高度な隠喩を駆使しての表現力はさすが紫式部です。お相手はちょっとした喧嘩をしていた旦那様。薄氷が「溶ける」と自分たちの間柄が打ち「解ける」をかけ、その行く末を山の水の流れにたとえた素晴らしい歌です。

 

【NO.5】山部赤人

『 明日よりは 春菜(はるな)摘まむと 標めし野に 昨日も今日も 雪は降りつつ 』

意味:明日から春菜を摘もうと野に標をしておいたのに、昨日も今日も雪が降っています

短歌職人
もう春になるかな?という暖かい気温の次の日に雪が降ったりする三寒四温の時期ですならではのできごとですね。「春菜」はフキノトウ、せりなども含めて春に出てくる若菜のことです。「標」をつけたのは山部赤人が仕えていた朝廷行事のためだったのかもしれません。

 

【NO.6】藤原忠平

『 折りて見る かひもあるかな 梅の花 ふたたび春に 逢ふ心ちして 』

意味:折ってみた甲斐もあるなあ梅の花よ。もう一度めでたい春に逢える気がして

短歌職人
折った梅を見ながら、お兄さんの忠平さんと兄弟で一緒に大臣になって春に会えそうだという喜びを表した短歌です。自分の喜びと春が来る喜びをかけているのですね。

 

【NO.7】中務

『 知るらめや 霞の空を ながめつつ 花もにほはぬ 春をなげくと 』

意味:知っているのだろうか霞のかかった空を眺めながら、まだ花の匂いもない春を私が嘆いていることを

短歌職人
春になっても咲かない梅の花を自らの身の上に重ねて嘆いているという解釈もあります。「霞の空」は春特有の空ですが、「春」や「花」が読まれていても喜びや嬉しさを表現するものばかりではないのですね。

 

【NO.8】藤原高子

『 雪のうちに 春はきにけり 鶯の こほれる涙 いまや解くらん 』

意味:雪の降るうちに春が来たのですね。凍っていた鶯の涙は今は解けたでしょう

短歌職人
これは「東風(こち)氷を解く」というお題に沿って詠まれたものです。東風は春風のことで、上の句は雪が残って寒いものの吹く風が春を感じるという実際の体感を、下の句は想像を膨らませた「鶯の凍った涙」を詠んでいてとても印象深いものになっています。

 

【NO.9】惟明親王

『 鶯の 涙のつらら うちとけて ふるすながらや 春を知るらむ 』

意味:寒さでつららになったていた鶯の涙は立春になってとけ、古巣にいた鶯も春の到来を知ったことだろう

短歌職人
これは8.の藤原高子の歌から影響を受けたもので、ここでは鶯が寒さの辛さで涙を流してつららになったと詠っています。春の訪れを告げる鶯が寒さで涙を流しているなんて素敵な想像力ですよね。

 

【NO.10】紀友則

『 きみならで 誰にか見せん 梅の花 色をも香をも 知る人ぞ知る 』

意味:あなたでなく誰に見せようか。この梅の花の色や香りを理解できるのはあなただけなのだから

短歌職人
この方ならではの色気あふれる表現で、この歌に添えて折った梅の花を一緒に送ったそうです。あなたにしかこの梅の色と香りの美しさはわからない=あなたの美しさも私が一番知っていると言いたいのでしょう。恋の歌でもありますね。

 

2月の有名短歌(和歌)集【現代短歌 10選】

 

次は明治以降の現代短歌から10選ご紹介いたします。

 

【NO.1】正岡子規

『 紅梅の 咲く門とこそ 聞きて来し 根岸の里に 人尋ねわび 』

意味:紅梅が咲いている門の家だよと聞いてきたのだが、根岸の里にいる人を探し当てることができないよ

短歌職人
紅梅が咲いている家がないのか、咲いている家はあるけれど目的の人の家ではなかったのかはわかりませんが、「尋ねわび」は探し当てることができず落胆している様子です。

 

【NO.2】正岡子規

『 ともし火の もとに長ぶみ 書き居れば 鶯鳴きぬ 夜や明けぬらん 』

意味:灯の元で長い手紙を書いていると鶯が鳴いたよ。夜が明けてしまったのだなあ。

短歌職人
夜通し書いていたというのはかなりの長い手紙ですね。「ぬらん」はきっと〜ているだろうで、部屋は暗いけれども鶯の鳴き声を聞いて耳で夜明けを知った時に「あー、もう朝なのか」と思ったのでしょう。

 

【NO.3】与謝野晶子

『 春立ぬ 夢多き身は この日より 髪に薔薇の 油をぞ塗る 』

意味:春分の日から夢の多い私は髪に薔薇の油を塗ります

短歌職人
この方の短歌は妖艶で難解なものが多いのですが、これもまた「夢多き」女が「春」だからと、髪に美しいがトゲのある薔薇の油を塗るのよ、と宣言している色気たっぷりの彼女らしい短歌です。

 

【NO.4】島木赤彦

『 白梅の 花明るくて 古池に 搖るる光りの けはひこそすれ 』

意味:白梅の花は明るい色なので古池に映って揺れている光の様子がわかるよ

短歌職人
池の水面に白梅が映って揺れる様子がこんなにも美しい言葉で表現されるものなのですね。「白」「花」「光」で明るい印象で春の訪れが近いと感じさせてくれます。

 

【NO.5】北原白秋

『 猫柳 ものをおもへば 猫の毛を なづるここちに よき風も吹く 』

意味:猫柳を触りながら物思いにふけっていると、猫の毛を撫でているような心地がして良いことがありそうです

短歌職人
猫柳、というくらいですから触り心地は猫の毛に似ていますよね。「よき風」が本当にその時吹いてきた風ではなく、物思いにふけっていたことでいい思いつきを得たという意味にもとれます。

 

【NO.6】伊藤左千夫

『 あたたかき こころこもれる ふみもちて 人おもひおれば 鶯のなく 』

意味:心のこもった温かい手紙を持ってその方に思いを馳せていたら鶯が鳴いたよ。

短歌職人
「温かい」こころと鶯がなく季節である春の「暖かさ」、手紙をもらった喜びと春が来る嬉しさもかけて表現していますね。

 

【NO.7】玉井清弘

『 思いきり 枝はらわれし あわいより 伸びたる枝に 梅花一輪 』

意味:バッサリと切り払われた枝の間から伸びている枝に梅の花が一輪咲いているよ

短歌職人
梅は枝の剪定が大事な木です。その「思いきり」切りはらわれた枝の「あわい」=間からちょこんと咲いた一輪の花が春の訪れを真っ先に知らせてくれているかのように感じる短歌です。

 

【NO.8】河野裕子

『 てのひらに 載るほど遠景の 夫(つま)子らを 紅梅の木ごと 掬(すく)はむとせり 』

意味:手のひらに乗りそうなほど小さく遠くに見えている夫と子どもたちをそばの紅梅の木ごと掬おうとしてみたよ

短歌職人
遠くに見える家族を見てかわいらしい行動をなさるお母さんです。今時であればその遠景をトリック写真として撮っているかもしれませんね。感じたものを表現するのが写真か短歌か、人や時代で変わるところも面白いところです。

 

【NO.9】小原奈実

『 陽をあはく 負ふ猫柳 さし伸ぶる ふたたびは手袋をはづして 』

意味:陽の光を後ろから受けた猫柳がさし伸びています。もう一度手袋をはずして触れてみました

短歌職人
光を「浴びる」のではなく「負ふ」が猫柳のふわふわしんなりした姿にぴったりの表現です。「ふたたびは」で一度触って手袋をはめたのだけど、もう一度触ろうとしていることを説明しています。自分の感想がありませんが、情景がセピア色で想像できそうな短歌です。

 

【NO.10】俵万智

『 バレンタイン 君に会えない 一日を 斎(いつき)の宮の ごとく過ごせり 』

意味:バレンタインなのにあなたに会えない一日を斎の宮のように過ごしましたよ

短歌職人
現代では2月14日のバレンタインデーは恋人と過ごしたい日。なのに会えないという寂しさと我慢を「斎の宮」=神聖な祭事で飲食や行動を控えて心身を清める場所、で過ごすようにしていたのよ、とすねてオーバーに表現しているのが可愛らしいですね。

 

以上、2月の有名短歌集でした!

 

2月らしい言葉はここに出たように節分、立春、鶯、梅、春菜、猫柳、バレンタインなどいろいろありますが・・・

 

他にも寒さの中でも春の兆しが見え始めたと感じる表現が短歌に入っていれば、2月らしさはしっかり出すことができます。

 

短歌職人
なかなか自然を感じる機会がない方は、節分の豆まきや恵方巻き、バレンタインなど身近なイベントを題材にすると作りやすいですよ!ぜひ短歌作りにチャレンジしてみてください!!